2012年4月25日水曜日
トランスジェンダー女性が政治をめざす(タイ)
ヨランダさんが政治の道へ(タイの話題)
その美しさでタイ全土を魅了したトランスジェンダー女性が地方議会選挙に立候補したことが大きな話題となっている。トランスジェンダー女性が政治の分野に進出するのは別に珍しいことではなく、世界的にもその例は少なくありません。
タイではとくに地方政治は男の世界という既成概念があり、それをトランスジェンダー女性が打ち破ろうとするのは勇気のいることで、やはりニュースバリューがあります。また当人が数年前の美人コンテストの優勝者でもあり、トランスジェンダーの地位向上に社会活動をしている頭のよい女性であることも話題性を高めているようです。4月25日版のタイの英字新聞「ザ・ネーション」の記事をご紹介します。
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“私のこれまでの経験と能力を生かしてナン県の将来にお役にたてることには自身があります“とヨランダ
さん(30歳)が抱負を語ったのは昨日のことです。(注:ナン県はタイ北部のラオスに国境を接する県)
地方議会の議員選挙にトランスジェンダーが出馬するのは初めてのこと。ヨランダさんは政治の世界ではニューフェイスですが、2000人の会員を擁するタイ・トランス女性協会の会長として名を知られる存在。すでに長年にわたりトランス女性の権利を擁護する運動に関わってきている。
宝石の事業やサテライトテレビ放送にも関わると同時に、博士号取得をめざして勉強中の身でもある。昨年には報道団体からタイ社会でもっとも影響力のある女性のひとりとして選ばれた。
“トランスジェンダーやホモセクシュアルの人たちからは支持を集められると信じています”と彼女は語る。16歳の時に性転換手術を受けた彼女は、肉体的には女性であるが、タイでは現行法にもとづき公的文書では依然として“ミスター”扱いされる。
エンターテインメント業界にもヨランダさんのナン県議会選出馬を歓迎する動きもある。Mプラス財団のポントーン・チャラーム氏は、ヨランダさんの県議会選挙出馬は、“長い間この国の政治を牛耳ってきた政治の世界に多様性をもたらすいい機会になる”と述べている。
ヨランダさんは母親がベンスアンタン地方の区長を努めていた関係もあり、北部の地方議会選では当選の可能性は高いとみている。対抗馬として選挙にでるのは男性二人。立候補受け付けは月曜日から今週の金曜日まで。
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<コメント>
まずヨランダさんの写真を見てください。美しい女性ですね!こんな輝くような女性にはめったにお目にかかれません。
彼女のトランスジェンダー女性活動をサポートしているPAIのプリチャー先生とも親交があり、先月バンコクで先生とお会いしたときのこんな発言が頭に残っています。
「タイではトランスジェンダーと分かると、十代早々からからホルモン治療を始め、SRSが受けられる年齢(現在では18歳)になるとすぐ手術を受ける。この利点は、骨格や皮膚・筋肉、声の男性化が定着する大人の年齢になる前に、ホルモン治療とSRSによって女性化が定着するので、女性として社会に同化しやすい。」
法的規制のしばりがある日本人には、また早くからトランスジェンダーを自覚していた当事者にとっては、はがゆいのが日本の現状です。タイの問題はSRS後も法的な性別変更が許されていないことです。
タイ社会ではすべてがおおらか、いい加減、自分勝手、と思える社会環境があります。しかし、その裏には自分の判断でなにをやってもいいが、“自己責任”であることを忘れるな、という不文律があるような気がします。
日本では何か起これば他人のせいにする甘えの構造がはびこり、結果的に規制の多い窮屈な社会になっています。タイ社会のいい加減さにうんざりしながらも、その居心地の良さに魅かれる日本人が多いのも事実です。
関係ないような話になりましたが、これもSRSの現状の両極を表しているというのが日頃からの私の感想です。
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2012年2月29日水曜日
妖艶なモデルは男性だった!
男と女の境界をスイスイと行き来するスーパーモデル
キャットウォークの注目を一身にあつめるモデルはなんと男だった。女性ファッション、男性モードであろうと、どちらのジェンダーにもなれる不思議な魅力のモデル、アンドレジ・ペジクにいま世界の注目が集まっています。
マレーシアの英字紙 "The Star"(2月16日版)に取り上げられた特集記事です。(記事はAP通信Bonny Ghoshより)
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スーパーモデル誕生
ある冬の寒い日の午後、マンハッタンのカフェで、長い脚をくみ優雅に腰をおろしているのはアンドレジ・ペジク。青い眼のファッションモデルはアールグレイ紅茶を飲みながら窓の外を眺めている、近くのテーブルに座る男たちの視線が彼女にくぎつけになっているのも知らないかのように。
黒皮のジャケットを着た男が歩道の窓際に近づき、ガラス窓に顔をつけキスをする。ペジクはくすくす笑いながら、”べつに悪い気はしないわ”、と無邪気である。
彼女に視線をむける男たちも、この美しいブロンド女が実際は男であることは恐らく気がついてないだろう。
ニューヨークで始まったファッションウィークでは、ペジクはもっとも注目を集めるモデルであると同時に、賛否両論の的になる存在なのである。彼は会場のキャットウォークを男としても女としても闊歩できるただ一人のトップクラスのモデルなのだ。
その両性具有を思わせる美形は、たえず限界にいどむファッション業界のトレンドセッターに押しあげたのである。
ドイツのファッション雑誌のカバーに彼を起用したスタイリストのカイリー・アンダーソンによると、”彼はだれもがその一切れでも欲しがるような美しい存在なんです。”
彼の顔を見ると、どんなに自分の美貌にうぬぼれている女性でも嫉妬にかられるだろう。高いほほ骨、しみひとつない肌、肉感的で形のよい唇。ただ話すときだけ,わずかにふくらんだのど仏が男性の証をしめすのみである。
ペジクは女になろうとしているわけではないが、トランスジェンダーに属する人の多くはすでに彼を同じ仲間とみなしている。ペジクは自らのセクシュアリティを説明したり、正当化する必要を感じることなく、両性を自然に内包してしている、ちょっとした英雄的存在とみられているのだ。
昨年のこと、ゲイ・レズビアン雑誌「OUT」は、今年の”スタイルメーカー”と名づけ、表紙をがざる写真にはヴェールをかぶり髪には花をあしらったブライダル衣裳のペジクを起用した。
昨年だけでも14誌の表紙をかざったペジクだが、フランスのデザイナー、ゴルティエはジェンダーを凌駕するペジクの容姿に惚れこみ、メンズ&ウィメンズショーのインスピレーションを得て、実際にペジク自身が両方のモデルとして登場したほどだった。ゴルティエのメンズショーでは、”ジェームズ・ブロンド”としてピストルをもち黒いジャケットの胸をはだけるダンディーな姿を披露したのだった。
一方のウィメンズショーではその強力なコントラストとして、ゴルティエの逸品作であるブライダルドレスに身をまとったペジクを披露したのである。
フランスの写真家セバスチャン・ミックは、ペジクは意識的に努力することなく女性になれる才能がある、スーパーモデルだけがもつカメラの前の自然なポーズのとり方、その動きのしなやかさは真似しようとしてできるものではない、と絶賛している。
ペジクの生い立ち
だが、この20歳の若者のここに至る人生はなまやさしいものではなかった。東欧の民族紛争の地ボズニアに生まれ、子供時代の大半をセルビアの難民キャンプで過ごしたペジクは、家族ともども逃げるようにオーストラリアに移住した。まだ10代でマクドナルドで働いているときにタレントスカウトに発見されたのが幸運となった。
幼少の頃から世間の目で見る女の子の特質を示し、車のおもちゃよりバービードールを好んだ。ティーンエイジャーとしては女の子たちと遊ぶのを好み、ドラッグストから化粧品を盗んで捕まったこともある。ペジクの言うには、友人たちや家族からもありのままの自分で受け入れられていたので、違和感はなく居心地がよかった。
身長183センチの長身痩躯、服は女サイズで2か4。靴のサイズがもっとも難点で、実際には女サイズでは11であるが、ウィメンズショーで歩くために無理してサイズ10に足を合わせている。
この一年間は気ちがいじみたメディアの注目を集め、メディア評論家はペジクは露出過剰になるリスクをはらんでいると警告する。他人には真似できない特有のルックスもあるため、ペジクがこの業界で今後もスターの座を維持するのはむずかしくなるかもしれない。
彼の人気度が高まるにつれ、デザイナーたちは彼の個性がデザインした衣裳の影を薄めてしまうのではないかと危惧し、ペジクの起用をためらうのではないかとの見方もあるからである。
ペジク自身はこのファッションビジネスの移り気の速さは百も承知である。この仕事のために
オーストラリアでの大学入学を遅らせた経緯もあるので、もしファッションの仕事に見切りをつけるときが来れば、大学に入り経済学か法律を勉強したいと考えている。
どんな話題でもオープンに話しに乗ってくるペジクであるが、自身のセクシュアリティ指向については口が堅い。恋愛の相手としては男がいいか女がいいかと聞くと、はにかんだ表情で”愛には境界線はないのよ”とだけ答えた。

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<感想>
生まれながら両性に通じるような容姿で成長した人もけっこういるものです。アンドレージ・ペジクはその好例といえるでしょう。
このモデルはトランスセクシュアルであっても、当面は性転換手術などには興味は示さないのではないかと思います。恵まれたルックスと才能を発揮して、男と女の間を自由に行き来できる自由を謳歌して欲しいですね。セクシュアリティについては自分が一番よく知っているはずなので、時が熟せばふさわしい行動を取ることでしょう。
男と女の境界など内面の世界ではあってなきようなもの。トランスセクシュアルならその内面の境界はすでに融解しているはず。内面と肉体との違いは手術でなんとか乗り越えられる。アンドレジ・ペジクの場合は、おそらく当面は男と女と境界を行ったりきたりで脚光をあびる生活を送り、また楽しみ、時期がきたらさっさと別の世界に飛び込んでいける、という才能をもっている人なのでしょう。
やはり、世の中美形に生まれるのは恵まれた存在です。その美形は一生続くものではないとの自覚があればよし。美形でないものは、なにか打ち込める対象をもち、それに集中して楽しめる境地になれば、人目を気にせずとも自らが満足できる生き方があるはずです。
なにはともあれ、アンドレジ・ペジクは衝撃的な印象です。まさに、Man, he's beautiful!

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2011年12月30日金曜日
セックスレスの時代?
男も女もお互いに興味なし!?
2011年は重苦しい空気がよどんだ1年でした。今回はちょっと息抜きにごく普通の男と女の話題をとりあげましょうか。
最近立て続けに日本の男と女がお互いに興味を失い、人口減少に拍車がかかっているという記事を見かけました。GIDとは直接の関係ない話ですが、男が女に興味を失い、女も男なしでも生きていける社会になりつつあるというのは、これは大問題です。
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『セックス負債は日本の損失だ』
(11月29日CNNネット版)より
経済学者の観点から見れば、日本の過去20年の病を直す応援の声は常に「日本よ、金を使え、消費せよ」だった。人口学者の観点からは、その叫びは「日本よ、産めよ、増やせよ」である。
先週発表された調査結果には、ますます顕著になってきた後者の問題が浮き彫りにされている。人口及び社会保障問題研究所の調査結果によれば、1億3千万人の高齢化するこの国において独身男性の数がまたまた記録を更新したという。
18歳から34歳の独身男性の数は、先回2005年の調査にくらべ9.2%も上昇している。独身男性の約61%がガールフレンドを持たず、また成人女性の半数が夫またはボーイフレンドを持たないという。さらに悪いのは、ガールフレンドもボーイフレンドも、妻も夫も持たない男と女のなんと45%もが、相手を探すことにも興味がないということだ。
しかも、30台後半の独身の男と女の4人に一人は、セックスした経験もないとか。
ここで注目すべきは、調査対象になった独身男性も女性も、それぞれ86%と89%という高率で将来的には結婚したいという願望はもっていることだ。その障害は何かというと、経済的な問題であって、調査対象の独身男女の40%以上が結婚しない最大の理由は、お金のやりくりが出来ないという経済上の不安があるからと答えている。
しかし、経済的な理由というのは本当だろうか。この調査では未婚の若い女性の90%が、独身でいる方がよいと答えているのだ。
これは今年の春に行われた日本家族計画協会の調査結果にも符合する。それによると、16歳から19歳の男性の36%がセックスには無関心かさけたがる傾向があり、2008年の調査にくらべると19%も増えているのだ。一方、調査対象となった10代の女性の59%がセックスに興味がないと答え、これは2年間で12%も増加している。
これらの統計上の数字は、よく話題になる“草食系の男子”の増殖という現象とも一致する。この用語は2006年に作家の深沢まき氏が造ったもので、「日本ではセックスは肉体の関係と同意義であり、最近の若い男性は肉体的関係には興味をもたないので、“草食を好む男の子”と呼ぶことにしたのがきっかけ」とCNNに語っている。
この現象は世界でも出生率が最低レベルの国に数えられる日本が、人口構成上の問題をかかえていることを意味する。日本の出生率は1.34であり、安定した労働力を維持するために必要な2.1を下回っている。人口の5分の1が65歳以上であることを考えると、将来の人口増はますます重要になってくる。
3年前に日本最大の経済団体である経団連は参加企業の1600社に対して、低下する出生率に歯止めをかけるため妻帯者がもっと家庭で自由時間を過ごせる配慮をするように要請したことがある。
しかし、この最近の調査結果からみると、残念なことに、日本のカップルは与えられた宿題をまじめにやっていないようだ。
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<インドネシア・バリ島で見たトイレの標識>

『セックス回数調査でインドネシアがトップ』
(The Nation 11月25日版)
アジア10カ国の性的にアクティブな男女を対象にして行われたセックス回数調査ではインドネシアの男性がトップの座を占めた。
これはバイアグラなどの勃起不全(ED)を改善する薬品メーカーである、アメリカのファイザー社が最近行った“アジアの理想的セックス調査”によるもので、インドネシアの男性が平均月に9.8回の性行為を行っていることが判明した。2位につけたのはフィリピンの男性で、月平均で9.4回であった。またインド男性は月平均8.8回で、タイの男性はというと、月平均7.7回だった。
この調査では1,685人の男性と1,624人の女性が対象とされ、国別では中国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、そしてタイである。回答者のすべてが31歳から74歳まで、過去12ヶ月以内に性交経験がある人たちである。
女性の対象者はインドの女性が月平均8.7回でトップを占め、次が月平均6.8回であったインドネシアとマレーシアが続いた。この調査ではタイ人女性は月平均5.7回でしかなかった。
クアラルンプールのモナッシュ大学泌尿器外科医のジョージ・リー助教授によると、この調査によりほとんどのアジア人にとっては性的満足感の達成には勃起の硬さが重要な要素をしめていることがわかったとのこと。例えば、マレーシア人男性の90%がこの勃起の重要性を指摘している。
満足感については回答者のわずか三分の一が性交時の持続時間を重要視しているにすぎなかった。
タイの有名な性に関する研究家であり産婦人科医でもあるパンサック医師は、270万人ものタイ男性が勃起障害をもっていると推定されると述べている。ただ、治療を求めて医師を訪ねる人は27,000人にすぎないとか。
<注>この調査では日本は調査対象にも選ばれなかったみたいですが、その理由はわかりますね・・・・。ファイザー社のバイアグラもあまり売れていないのでしょう、勃起の助けも求めない日本では。
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<年末の独り言>
『ジェンダーとセックス』
ジェンダー意識がはっきりしていないと、肉体的行為をともなうセックスにつながらない。日本の若い世代がセックスを求めなくなったということは、ジェンダー意識も希薄になっているということか。最近のファッションや行動様式をみていても、ジェンダーレス化がセックスレス化につながっているのではないかと思う。なんともわびしい時代になったものだと嘆くしかない。
彼女のいない男性の半数ちかくが交際も望んでいないという。女性に肉体的に接するまでにはいろいろめんどうな手順を踏まなければならない。いきなり触ればセクハラになり、想いを告白しても断られることもありえる。その自分がぶざまに見えるのは今どきの過保護になれた若者には耐えられないのだろう。それなら、独りでいたほうが気楽である、セックスなしでも生けていける・・・ということになるのだろうか。
ジェンダー意識がしっかりした人間なら、異性を求めるのはごく自然である。べつに相手が同性でもかまわない。要するに自分のジェンダー意識に素直にしたがった行動であればよい。それにふさわしい性行動が健全なセックスであり、社会的にも容認されるべきだと私は思う。
ジェンダーよ、しっかりせい。セックスよがんばれ!
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2011年12月22日木曜日
第三のジェンダー、やっと離陸へ
レディーボーイ搭乗機、離陸準備完了
今年の1月の投稿でとりあげたタイのPCエア航空がやっと離陸することになりました。以下は12月16日付けのバンコクポスト紙の記事です。(1月26日投稿:「第三の性」エアホステス離陸準備中)及び1月28日の「その続報」参照)
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第三のジェンダーのキャビンアテンダントを配置する世界初めてのエアラインといわれる、個人所有でタイ国籍のPCエア航空が、当初の予定より9ヶ月遅れながら離陸準備が整いました。
PCエアのフライトアテンダントとして採用された4人のレディーボーイたちは(写真参照)、昨日のデモフライトで報道関係者にそのサービスぶりを披露しました。この航空会社はまずチャーター便として営業運航を開始し、来年の6月以降から正規の航空会社として定期便運行を開始する予定です。

PCエアの処女飛行は、12月24日のバンコクとラオスのビエンチャン間のツアグループを乗せたチャーター便で、来年1月23日にはバンコクと中国の二つの都市を結ぶチャーター便の運行を開始する予定になっている。
民間航空局の規則にしたがい、定期便運行開始に先駆けて、アジア圏内のツアグループを対象にチャーター便で運行を開始し、来年6月に正規航空会社としての資格認定を受けることになる。
昨日のデモフライトでは唯一の所有機材であるエアバス310-222型機を使い、報道陣を招待した機内で4人のレディーボーイ搭乗員が他のクルーに加わりそのサービスぶりを披露した。
唯一のオーナー社長であるタイ人のピーター・チャン氏は報道陣に対して、運行開始の遅れは財務上の問題ではなく、旅行ハイシーズンの到来にタイミングを合わせたからだと説明した。
不動産会社の役員でもある同氏は、ローシーズン中の需要上の問題とその後のタイを襲った大洪水も遅れの要因ではあると述べた。
この新事業への自信の表れとして、自身がキャビンアテンダントの経験をもつ同氏は、ほとんどの航空会社はリースで機材を調達するのが普通だが、既存の航空会社からジェット旅客機を購入するにあたって10億バーツ(約28億円)のキャッシュで払う道を選んだ。
また、来年の第二4半期には定期便運行を開始し就航先も拡大する予定なので、新たにワイドボディーのA300-600型機を2機導入する計画であると述べた。
ピーター・チャン氏によると、PCエアの就航先として候補にあがっているのは、香港、中国、韓国、そして日本である。PCエアが5年以内に収支均衡になるとは思っていないが、定期便運行開始に合わせてタイ株式市場に上場することを考えているので、投資家および国内・海外のツアオペレーターとも協力関係を築きたいとのこと。
さらにPCエアはトランスセクシュアルに就職の門戸を開き、キャビンアテンダントとして引き続き採用していく方針であり、機会平等を企業理念としてかかげている、と述べた。
30人採用したキャビンアテンダントのうち4人がレディーボーイであり、また19人が女性、男性は7人、全員が資格をクリアしている。レディーボーイのひとりタニャラットさん(上の写真の右から2番目)は2007年度のミス・ティファニー・ユニバースの栄冠に輝いたこともあり、またモデルやテレビの喜劇ドラマの女優としても知られている。
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日本のメディアでもこのニュースは取り上げられたようですが、ロイター通信によるとピーター・チャン氏(オレンジ色ネクタイの男性)は“私がパイオニアになったようだが、他の航空会社も私のアイデアに興味をもつだろうと確信している”とのこと。日本のエアラインにもぜひお勧めしたいアイデアですね。エアラインだけでなく、トランスジェンダーは鉄道関係を含む幅広い分野のサービス産業にはぴったりの適性をもっていると思います。
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<注>トランスジェンダーはタイでは“カトーイ”とか“レディーボーイ”と呼ばれています。これらの記事でも”third gender” “transgender” ”transsexual”などいろいろの名称が使われています。
この写真でもわかるように彼女たちを“レディーボーイ”というのは、“ボーイ”の部分にちょっと抵抗がありますが、タイではSRS後でも性別変更が法的に認められないので我慢するしかないかもしれません。それでも、PCエアのような職場の門戸をひらく動きが、SRS先進国タイで起こったのは拍手喝采です。日本への就航を楽しみに待ちましょう。
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2011年11月20日日曜日
子供を産んだ男 (その続き)
「妊娠した男」---その続き
このニュースはすでに2008年11月の時点でアメリカでは大きな話題になっていたのは知りませんでした。その後も引き続き、「男とは」、「女とは」、「家族とは」というテーマで多くのメディアで取り上げられています。
「妊娠した男」の最初の記事とビデオ映像を見て疑問に思ったこともあり、自らMTF当事者としてまた現役の医師として世界各地のGID関係者などに接して研究されている先生に以下のように質問してみました。
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<私の質問>
FTM男性が妊娠して出産したということは、女性の胸はすでに取っていたものの、
女性の生殖器官である卵巣と膣・子宮はそのまま残してあったということですよね。
ここにドナーから提供された精子を女性である奥さんの手で注入したと言っていますので。
CNNの動画ではオレゴン州に住んでいて、出生証明書や運転免許、生命保険、結婚許可書などすべての公式文書でちゃんと男性と認められているそうです。疑問になる点は、手術でクリトリスがマイクロペニスになっているとはいえ、女性の証である卵巣と子宮を残したままでも、アメリカでは男性と認められたということになります。州によって法律は違うとはいえ、これは性別の根幹に関わることなのでWPATHなどでは話題にはならなかったのでしょうか。日本では卵巣・子宮摘出が女性から男性への条件だと理解していますが?
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<先生からの返答>
ご指摘の通りだと思います。全く鋭い指摘だと思います。
個人的には「外性器が望む性に類似していること」って超馬鹿げていると思います。
また内摘だけで戸籍の性別が変えられるのも同様に超馬鹿げています。
ジェンダーに問題が有るのですから身体の変工は個人の問題です。
ペニスがあっても女性のジェンダーで生きて行けるヒト、生きて行けないヒト、いろいろあって良いんじゃないでしょうか。
寧ろ法律で規定することが変だと思います。
アメリカではgender incongruenceが確認されればGIDと診断され、GRS後にIDが変わります。
彼の場合はオッパイがなくて、ペニスがある?けど内摘はしていない状態ですよね。
外性器が希望の性のモノに近似していることの解釈は日本でも裁判所によってかなり違うようです。
彼の場合は微妙だと思いますが、恐らく社会組織化の過程、例えば事実上の奥さんが居る、男性としての職業を持っている、など総合的に判断されたのではないでしょうか。pregnant
manというのはそう言う意味で画期的だと思います。
この辺りの日本の裁判所の事情について暫く日本で調査してみようと思っています。
しかし、性別ってこんなもんなんでしょうか・・・・。
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<私からの返信>
しかし、この外見だけでパスすることはたいへん重要な要素だと思います。これで社会生活上の種々の制約から解放され、全部とは言えませんが(子なき条項など)自由度が高まります。ほとんどのGID当事者がこの第一関門を通過するために悩み苦しんでいるからです。裸になってチェック受けることはまずないからこそ、外観だけでパスできるのは”自由度”の面で重要な意味があると思っています。
先生の場合はこの関門はすでに通過されていて、日本の融通のきかない法律だけが障害になっているわけです。それにしてもこの「妊娠した男」のアメリカの例には驚きました。ハワイ州で認められた正式の異性結婚は他の州でも認められるので、今このカップルが居住するオレゴン州でも認められるというわけらしいです。二人目の子供も生まれるので、今後法律面でのトラブルがあり得ることは覚悟しなければ、と当人もインタビューで語っていました。
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<補足>
“What is a man? What is a woman? The journey of a pregnant man” というCBSテレビの特集番組(2009年10月22日)では、トーマス・ビーティーはすでに同じドナーの第3子を身ごもっていることを打ち明け、司会のバーバラ・ウォルターズも絶句していました。この時妊娠5週目だったので、2010年8月には3番目の子供が誕生しているはずです。
性の自由を標榜する6団体の当事者グループからも賛否両論の声があり、固定観念に凝り固まった個人などからも嫌がらせの電話や郵便などが届くそうです。生まれた二人の子供にはいつ打ち明けるのかという質問には、すでに絵本などを通じてわかる範囲で、生命の誕生と多様性について教えているそうです。子供たちはトーマスを”daddy”、ナンシーを “papa” と呼び分けているそうです。
勇気付けられるのは、妻ナンシーの最初の結婚で生まれ、成人した二人の娘が全面的にこのカップルの生き方を応援していることです。今後への不安はかかえながらも、あくまで前向きに明るく生きている勇気あるカップルですね。
さらに補足ですが、アメリカではこのような「妊娠した男」で子供を産んだ例は35人から40人は知っている、と実名で登場した看護助産婦がCBSテレビで話していました。ただ、トーマス・ビーティーのように、ラリー・キング、バーバラ・ウォルターズ、オプラ・ウィンフリーのような超有名トークショー番組に出演し、雑誌に記事を書き、さらに本まで出版して堂々とカムアウトした例はこれが始めてであっただろうと推測しています。
ジェンダーという人間の根源的な存在要因を、単に生殖器という物体にとじこめるのではなく、形をもたない精神の象徴として自由に開放する社会現象として捉えると、この「妊娠した男」の性の歴史に果たす役割はいつか評価される日がくるのではと思います。
最初に引用させて頂いた当事者で医師でもある先生の言葉をくりかえしますと、
“「外性器が望む性に類似していること」って超馬鹿げていると思います。また内摘だけで戸籍の性別が変えられるのも同様に超馬鹿げています。”
これは日本のことですよね?「妊娠した男」トーマス・ビーティーはとっくにこのこのレベルを超越しているという印象を強く受けました。
ジェンダーの問題はGIDの根幹である問題ですから、今後ともこのテーマはとりあげていきたいと思っています。
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2011年11月19日土曜日
子供を産んだFTM男性
妊娠した男とその妻:"Pregnant man and wife"
アメリカのCNNテレビの看板番組「ラリーキング・ライブ」が取り上げた話題のFTM男性トーマス・ビーティとその妻ナンシーのあっと驚く実話をご紹介しましょう。
女の子として生まれたものの、いつも自分は男の子だと感じていたトーマスは、FTM男性としてナンシーとハワイで夫婦として正式に結婚。現在はオレゴン州に住むふたりは女の子を出産したばかりだが今また二度目の妊娠をしている。
二人の関係とどういう経緯で子供の両親となったか、ラリー・キングの司会で二人の話を聞いてみましょう。次のサイトからCNNの放送にアクセスできますので、ビデオ画像でも確認してください。
http://edition.cnn.com/2008/US/11/18/lkl.beatie.qanda/index.html
http://edition.cnn.com/2008/US/11/18/lkl.beatie.qanda/#cnnSTCVideo
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(CNN) -- 「妊娠した男」として知られるトーマス・ビーティはCNNのラリー・キングのインタビューに妻ナンシーと7月に生まれた長女のスーザンを伴って出演した。トーマスはすでに第二子を身ごもっている。
トーマスは「愛の陣痛:ひとりの男の世にも珍しい出産の物語」を出版したばかり。(以下のインタビューは一部編集してCNNネット版に掲載されています。)

Larry King interviews the Beatie family -- Thomas, Nancy and their daughter, Susan.
Larry King: トーマスとナンシー、よく来てくれましたね。まずおめでとうございます。調子はどうですか。
Thomas Beatie: 大丈夫です。ありがとう。
King: 世間から注目をあびてびっくりしていることでしょうが、それは予期していました?
Thomas: 正直言ってほんとに驚いています。誰にも知られないままに、私が産んで済ませられるだろうと単純に考えていました。妊娠がわかった後、大勢の医師に相談したのですが通常の妊娠ではないため、医学的な差別も受けましたし、出生証明書の問題や結婚が成立するかまで追及されそうでした。そこで”Advocate”というレズビアン誌に記事を書いたのがきっかけで、大騒ぎになったというわけです。
King: ちょっと話を整理するために初めから聞きましょうか。あなたは女性だったですよね。今は自分を男性と呼んでいますが、女性として生まれたのは間違いないですね。
Thomas: はい、間違いないです。.
King: お二人はどういう経緯で会われたのですか。
Thomas: かれこれ18年前になりますが、ハワイのジムで知り合いました。
King: 一緒に生活するようになって何年ですか。
Nancy: 11年ですが、もうすぐ12年になります。
Thomas: そうです、11年です。結婚してからはもうすぐ6年になります。
King: 見た目も明らかに男性ですよね。あなたは男性ですね。そのための手術は受けましたか。
Thomas: (男性としての)胸の再建手術を受けました。それとホルモン治療です。
King: それで自分自身にとっても男性なのですね。
Thomas: そうです。
King: 彼か彼女のどちらかが妊娠した方がよいというアイデアはどこからきました?
Nancy: 私たちはまず家族を持ちたかったのです。女である私は子宮摘出手術を受けていましたので、養子縁組やその他のいろんなオプションを考えたのですが、二人の間で子供を産むには彼より適任者はいないことに気づいたのです。
King: それで、どういう方法をとったのですか。
Nancy: ええ、そこでまずドナーを探しました。それから自宅で行いました。私が自分でやりました。
King: あなたが自分で?ドナーというのは精子提供者という意味ですね?
Nancy: そうです。精子を注文し、それは自宅に届けられました。それを針のない注射器に移しました。
King: そしてそれを注入したわけですね?
Nancy: そうです。
King: ということは、トーマス、その部分を変更するための下半身の手術は何もしていなかったということですか。
Thomas: 男性ホルモンのテストステロンが自然に行う作用だけです。
King: 常識では考えられない方法で妊娠に成功したわけですね。
Nancy: まあ、そういうことですね。
King: 彼は今また妊娠しているのですね。そのやり方はどうやって学んだのですか。
Thomas: ネットで調べる方法しか考えられませんでした。助けになる医者を探すのは骨が折れました。やっと精子銀行に出す書類に署名してくれる医師が見つかったことで、自宅で自分たちだけで行うことができるようになったのです。でも、その方法などは全部やはりネットで調べました。
King: どうして養子縁組をしなかったのですか。
Thomas: それも可能な方法なので実際に考えましたが、自分の遺伝子を残す必要を切実に感じていたので、まず試しにやってみて、結果がだめだったら代理出産を考えようというつもりでした。しかし、代理出産は自分が受精能力がある身体であることを証明してくれる内分泌科医師の介入が必要になるなど、多くの問題があるのが予想できたのであきらめました。
Nancy: 私たちの産んだ子供が欲しかったのです。
King: 出産するというのはどんなものでした、トーマス?
Thomas: イヤー、なんとも言葉では表せないような経験ですね。実際に出産を体験したことのない人には何と表現したらいいか・・・・。まちがいなく、人生の見方が変わる体験であるとは言えます。
King:今はオレゴン州に住んでいるわけですが、 法律面での問題にはぶつからなかったですか。
Thomas: 自分の出生証明書も男性に、健康保険、運転免許証、生命保険などすべて男性として記載されています。実際にこの子の出生証明書ももっています。
King: それにはどう書いてあります?
Thomas: それには私を父親、ナンシーを母親と記入して提出しましたが、役所は最終段階になって彼女を父親、私を母親と変更してしまいました。それがまた変更になり、結局われわれ二人が両親として登録されました。それはそれで一向にかまわないですが、わたしたちは同性婚ではないので同棲パートナーシップは認められません。わたしたちはあくまで法的に認められた夫と妻の関係なのです。
King: その違いは大きいですよね。
Thomas: そのとおりです。ところが、政府の一部ではわたしを男性と認定しているので、生まれた子供の出生証明書をどう説明するのか、見解の相違がでてきています。それがわたしたち家族の将来の妨げになるのではないかと本当に心配しています。
King: こんなことを言っては失礼ですが、もしあなたが死亡した場合にはどういうことになりますか。誰かが名乗り出て子供の親権を争うことになるとか?
Thomas: そういうことはじゅうぶん起こり得ます。わたしが一番恐れていることです。それで助けが必要なのです。法的な課題をちゃんと整理するために弁護士の助力が必要なのです。
King: お二人が出会ったときはどんなカップルだったのですか。
Thomas: 普通のカップルです。
King: 聞きたかったのは、おふたりはゲイ(同性愛)だと思っていましたか。
Thomas: いいえ。その時点ではわたしは女としての生活をしていました。わたしは法的には女でしたが、心の内部では依然として男でした。ほかの人たちがわたしたちを見れば、レズビアンのカップルだと思ったことでしょう。
King: 自分がゲイ(同性愛)だと感じることはありますか。
Nancy: ゲイの感じはありません。
King: ナンシー、自分は男性と結婚しているという感じはありますか。
Nancy: あります。
King: あらゆる面で、完全に?
Nancy: はい。彼が妊娠しているときでも、彼はわたしにとっては男でした。
King: どんな出産でしたか。
Thomas: 自然分娩でした。
King: 帝王切開ではなくて?
Thomas: いいえ、そんなうわさがあったようですが、違います。
King: 次の子供の誕生を心待ちにしていますか?今何ヶ月ですか。
Thomas: 10週間です。
King: 同じドナーですか。
Thomas: 同じドナーです。
King: どこでこのようなやり方を学んだのですか。インターネットと言っていましたね。しかし普通の性行為はできないと思いますが、どうですか?
Thomas: できます。
King: あれ、そうですか?
Nancy: 赤ん坊を産むための方法ではないですが。.
Thomas: ホルモン治療のせいで、わたしのクリトリスは肥大していてペニスのように見えます。妻と性行為はできるのです。
King: それは驚きですね。知りませんでした。つまり、あなたにはペニスのように見えるクリトリスがあり、それで愛を交歓する行為を営むことができるというわけですね。
Thomas: まあ、そういうことですね。.
Nancy: わたしが母親です。
Thomas: わたしが父親です。
King: 出産のサイクルはこれで終わりですか。この赤ちゃんが最後の子供になりますか。
Nancy: まだわかりません。決めてないものですから。
King: あなたたち、本当に素晴しいカップルですね。お二人がやったことはとてもとても簡単にできることではありません。しかも、それを世間に公表することはたいへんなことです。美しいかわいいお嬢さんですね。今後とも将来の幸せを祈っております。
今日はトーマス・ビーティと奥様をお招きしました。出版された本の題名は“Labor of Love, the Story of One Man's Extraordinary Pregnancy." 「愛の陣痛:ある男の世にも珍しい出産の物語」 その題名どおり、アメージングな物語です。
**********
<補足解説>
常識にとらわれず思いついたことをまず実行に移すという、アメリカ人の性格が如実に現れているお話です。
FTMでありながら子宮・卵巣は摘出しないまま、ホルモン治療と乳房切除、それに肥大したクリトリスを転換したミニペニスだけで、男性と認定されるのもアメリカならの大らかさでしょうか。
日本の現行の法律では正規の夫婦、親子関係は認められないと思います。
ビデオでは大きなお腹をかかえた彼の姿が見られます。しかも出産は帝王切開ではなく、自然分娩だったのも驚きです。
ミニペニスでの挿入性行為はむずかしいと言われていますが、愛し合うカップルの間なら愛の交歓方法はあるはずです。
しかし、やはり印象に残るのは二人の自信あふれるこの言葉です。
ナンシー: I am the mother.
トーマス: I am the father.
肉体の器官・外観はともかくとして、やはり当事者自身のジェンダー意識がどこまではっきりしているかが決め手になるのでは、というのが強く印象に残ります。
*****
アメリカのCNNテレビの看板番組「ラリーキング・ライブ」が取り上げた話題のFTM男性トーマス・ビーティとその妻ナンシーのあっと驚く実話をご紹介しましょう。
女の子として生まれたものの、いつも自分は男の子だと感じていたトーマスは、FTM男性としてナンシーとハワイで夫婦として正式に結婚。現在はオレゴン州に住むふたりは女の子を出産したばかりだが今また二度目の妊娠をしている。
二人の関係とどういう経緯で子供の両親となったか、ラリー・キングの司会で二人の話を聞いてみましょう。次のサイトからCNNの放送にアクセスできますので、ビデオ画像でも確認してください。
http://edition.cnn.com/2008/US/11/18/lkl.beatie.qanda/index.html
http://edition.cnn.com/2008/US/11/18/lkl.beatie.qanda/#cnnSTCVideo
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(CNN) -- 「妊娠した男」として知られるトーマス・ビーティはCNNのラリー・キングのインタビューに妻ナンシーと7月に生まれた長女のスーザンを伴って出演した。トーマスはすでに第二子を身ごもっている。
トーマスは「愛の陣痛:ひとりの男の世にも珍しい出産の物語」を出版したばかり。(以下のインタビューは一部編集してCNNネット版に掲載されています。)

Larry King interviews the Beatie family -- Thomas, Nancy and their daughter, Susan.
Larry King: トーマスとナンシー、よく来てくれましたね。まずおめでとうございます。調子はどうですか。
Thomas Beatie: 大丈夫です。ありがとう。
King: 世間から注目をあびてびっくりしていることでしょうが、それは予期していました?
Thomas: 正直言ってほんとに驚いています。誰にも知られないままに、私が産んで済ませられるだろうと単純に考えていました。妊娠がわかった後、大勢の医師に相談したのですが通常の妊娠ではないため、医学的な差別も受けましたし、出生証明書の問題や結婚が成立するかまで追及されそうでした。そこで”Advocate”というレズビアン誌に記事を書いたのがきっかけで、大騒ぎになったというわけです。
King: ちょっと話を整理するために初めから聞きましょうか。あなたは女性だったですよね。今は自分を男性と呼んでいますが、女性として生まれたのは間違いないですね。
Thomas: はい、間違いないです。.
King: お二人はどういう経緯で会われたのですか。
Thomas: かれこれ18年前になりますが、ハワイのジムで知り合いました。
King: 一緒に生活するようになって何年ですか。
Nancy: 11年ですが、もうすぐ12年になります。
Thomas: そうです、11年です。結婚してからはもうすぐ6年になります。
King: 見た目も明らかに男性ですよね。あなたは男性ですね。そのための手術は受けましたか。
Thomas: (男性としての)胸の再建手術を受けました。それとホルモン治療です。
King: それで自分自身にとっても男性なのですね。
Thomas: そうです。
King: 彼か彼女のどちらかが妊娠した方がよいというアイデアはどこからきました?
Nancy: 私たちはまず家族を持ちたかったのです。女である私は子宮摘出手術を受けていましたので、養子縁組やその他のいろんなオプションを考えたのですが、二人の間で子供を産むには彼より適任者はいないことに気づいたのです。
King: それで、どういう方法をとったのですか。
Nancy: ええ、そこでまずドナーを探しました。それから自宅で行いました。私が自分でやりました。
King: あなたが自分で?ドナーというのは精子提供者という意味ですね?
Nancy: そうです。精子を注文し、それは自宅に届けられました。それを針のない注射器に移しました。
King: そしてそれを注入したわけですね?
Nancy: そうです。
King: ということは、トーマス、その部分を変更するための下半身の手術は何もしていなかったということですか。
Thomas: 男性ホルモンのテストステロンが自然に行う作用だけです。
King: 常識では考えられない方法で妊娠に成功したわけですね。
Nancy: まあ、そういうことですね。
King: 彼は今また妊娠しているのですね。そのやり方はどうやって学んだのですか。
Thomas: ネットで調べる方法しか考えられませんでした。助けになる医者を探すのは骨が折れました。やっと精子銀行に出す書類に署名してくれる医師が見つかったことで、自宅で自分たちだけで行うことができるようになったのです。でも、その方法などは全部やはりネットで調べました。
King: どうして養子縁組をしなかったのですか。
Thomas: それも可能な方法なので実際に考えましたが、自分の遺伝子を残す必要を切実に感じていたので、まず試しにやってみて、結果がだめだったら代理出産を考えようというつもりでした。しかし、代理出産は自分が受精能力がある身体であることを証明してくれる内分泌科医師の介入が必要になるなど、多くの問題があるのが予想できたのであきらめました。
Nancy: 私たちの産んだ子供が欲しかったのです。
King: 出産するというのはどんなものでした、トーマス?
Thomas: イヤー、なんとも言葉では表せないような経験ですね。実際に出産を体験したことのない人には何と表現したらいいか・・・・。まちがいなく、人生の見方が変わる体験であるとは言えます。
King:今はオレゴン州に住んでいるわけですが、 法律面での問題にはぶつからなかったですか。
Thomas: 自分の出生証明書も男性に、健康保険、運転免許証、生命保険などすべて男性として記載されています。実際にこの子の出生証明書ももっています。
King: それにはどう書いてあります?
Thomas: それには私を父親、ナンシーを母親と記入して提出しましたが、役所は最終段階になって彼女を父親、私を母親と変更してしまいました。それがまた変更になり、結局われわれ二人が両親として登録されました。それはそれで一向にかまわないですが、わたしたちは同性婚ではないので同棲パートナーシップは認められません。わたしたちはあくまで法的に認められた夫と妻の関係なのです。
King: その違いは大きいですよね。
Thomas: そのとおりです。ところが、政府の一部ではわたしを男性と認定しているので、生まれた子供の出生証明書をどう説明するのか、見解の相違がでてきています。それがわたしたち家族の将来の妨げになるのではないかと本当に心配しています。
King: こんなことを言っては失礼ですが、もしあなたが死亡した場合にはどういうことになりますか。誰かが名乗り出て子供の親権を争うことになるとか?
Thomas: そういうことはじゅうぶん起こり得ます。わたしが一番恐れていることです。それで助けが必要なのです。法的な課題をちゃんと整理するために弁護士の助力が必要なのです。
King: お二人が出会ったときはどんなカップルだったのですか。
Thomas: 普通のカップルです。
King: 聞きたかったのは、おふたりはゲイ(同性愛)だと思っていましたか。
Thomas: いいえ。その時点ではわたしは女としての生活をしていました。わたしは法的には女でしたが、心の内部では依然として男でした。ほかの人たちがわたしたちを見れば、レズビアンのカップルだと思ったことでしょう。
King: 自分がゲイ(同性愛)だと感じることはありますか。
Nancy: ゲイの感じはありません。
King: ナンシー、自分は男性と結婚しているという感じはありますか。
Nancy: あります。
King: あらゆる面で、完全に?
Nancy: はい。彼が妊娠しているときでも、彼はわたしにとっては男でした。
King: どんな出産でしたか。
Thomas: 自然分娩でした。
King: 帝王切開ではなくて?
Thomas: いいえ、そんなうわさがあったようですが、違います。
King: 次の子供の誕生を心待ちにしていますか?今何ヶ月ですか。
Thomas: 10週間です。
King: 同じドナーですか。
Thomas: 同じドナーです。
King: どこでこのようなやり方を学んだのですか。インターネットと言っていましたね。しかし普通の性行為はできないと思いますが、どうですか?
Thomas: できます。
King: あれ、そうですか?
Nancy: 赤ん坊を産むための方法ではないですが。.
Thomas: ホルモン治療のせいで、わたしのクリトリスは肥大していてペニスのように見えます。妻と性行為はできるのです。
King: それは驚きですね。知りませんでした。つまり、あなたにはペニスのように見えるクリトリスがあり、それで愛を交歓する行為を営むことができるというわけですね。
Thomas: まあ、そういうことですね。.
Nancy: わたしが母親です。
Thomas: わたしが父親です。
King: 出産のサイクルはこれで終わりですか。この赤ちゃんが最後の子供になりますか。
Nancy: まだわかりません。決めてないものですから。
King: あなたたち、本当に素晴しいカップルですね。お二人がやったことはとてもとても簡単にできることではありません。しかも、それを世間に公表することはたいへんなことです。美しいかわいいお嬢さんですね。今後とも将来の幸せを祈っております。
今日はトーマス・ビーティと奥様をお招きしました。出版された本の題名は“Labor of Love, the Story of One Man's Extraordinary Pregnancy." 「愛の陣痛:ある男の世にも珍しい出産の物語」 その題名どおり、アメージングな物語です。
**********
<補足解説>
常識にとらわれず思いついたことをまず実行に移すという、アメリカ人の性格が如実に現れているお話です。
FTMでありながら子宮・卵巣は摘出しないまま、ホルモン治療と乳房切除、それに肥大したクリトリスを転換したミニペニスだけで、男性と認定されるのもアメリカならの大らかさでしょうか。
日本の現行の法律では正規の夫婦、親子関係は認められないと思います。
ビデオでは大きなお腹をかかえた彼の姿が見られます。しかも出産は帝王切開ではなく、自然分娩だったのも驚きです。
ミニペニスでの挿入性行為はむずかしいと言われていますが、愛し合うカップルの間なら愛の交歓方法はあるはずです。
しかし、やはり印象に残るのは二人の自信あふれるこの言葉です。
ナンシー: I am the mother.
トーマス: I am the father.
肉体の器官・外観はともかくとして、やはり当事者自身のジェンダー意識がどこまではっきりしているかが決め手になるのでは、というのが強く印象に残ります。
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2011年9月15日木曜日
タイのTS、法廷闘争に勝つ
一歩前進、法廷闘争に勝つ
8月31日のバンコクポスト紙によると、タイ防衛省が所属のトランスジェンダー徴集兵を“精神障害者”と公式文書で呼称しているのに反旗をひるがえして、当事者のカトーイ(トランスジェンダー)とTSサポーターたちが法廷闘争に立ち上がった。その判決が9月13日に言い渡され、14日の紙面ではみごと勝利の判決が写真入のニュースとして報じられました。
SRS大国ながら自国民に対する法的な差別は依然として残るのがタイ社会の実情なので、タイのTJ・TS関係者の将来への朗報となったこのニュースを8月31日の記事とまとめて紹介いたします。
*********
[写真] サマートさん(左から2人目)と友人たちがプラカードをかかげてトランスセクシュアルへの差別廃止を訴えた。

行政法廷への訴えは防衛省に対するもので、当人のジェンダー認識を理由に“精神障害者”として徴兵記録に記されているのがその理由。
サマートさんをリーダーとする女装のTJたちは、サマートさんや他の女装TJを2005年に制定された軍規により“恒常的精神障害者”として明記する徴兵記録の変更を求めて行政法廷に訴状を提出した。
同様の反論に対する行政官庁の従来の見解では、自らの性別に違和感をもつ当事者で性転換手術を受けていない者は“カトーイ”と呼ばれる。すでに性転換手術を済ませている者は、軍法にしたがい“精神障害者”として認定されるべきである、との認識であった。その根底にある理由は、手術によって復元不可能な身体になっているからである。
ただし、ホルモン補充療法や豊胸手術などの身体への変更は、まだ復元の余地が残されているため精神障害者には含めない、との見解であった。
「当のサマート氏はまだ性転換手術を受けていないので、恒常的精神障害者と認定したのは不当であると考える。したがって、防衛大臣は30日以内にサマート氏の徴兵記録を精神障害者からカトーイに変更すべきである」、と政府行政委員会の一員であるクリチョット氏は自らの見解を述べた。
行政法廷の審理手続きでは、複数の政府行政委員が審議したのち行政委員長が意見を集約して結論に導くための制度があり、委員長はこの案件を審議する行政法廷の代表判事がつとめる。
サマートさんは委員の意見に勇気づけられたと言いながらも、9月13日の判決まで待たなければならないこと、また防衛省内の関係規則の変更などやっかいな手続きがあること、うわさでは性に違和感を抱く者は「自らの性志向と生来の性別は相容れないこと」を表現する新しい用語を考案中らしい、などと述べた。
およそ20人のゲイグループのサポーターたちが、法廷の前で7色の傘をかかげながら応援に色をそえていた。
**********
9月13日判決日。行政法廷の防衛省に対する判決は「性転換手術を受けていないトランスセクシュアルを恒常的精神異常者と徴兵記録簿に表記してはならない」いうものだった。
[写真]原告サマートさんは勝訴の判決に笑顔のVサイン。

従来の呼称が侮蔑的であると不満を訴えていたトランスセクシュアルや人権活動家たちは喜びの声をあげた。この判決によりトランスセクシュアルを徴兵義務から免除する理由の基準を明確化する動きが加速すると思われる。
また、性転換手術を受けていないトランスセクシュアルをどう表記するか検討するよう防衛省に求めた。判決によると「徴兵制度は防衛省の重要な役割であり、人権侵害をふせぎ軍役への興味を維持するためにも法制の改定を急がなければならない」。
“恒常的精神異常”は“性同一性障害(gender identity disorder)“と変更される可能性が強いと思われる。
“Sor Dor 43”として知られる文書は就職時の申請書などに広く用いられる様式で、これに“恒常的精神異常者”と書かれてはトランスセクシュアルがまっとうな職業につくことはまず考えられない。性の多様化を推進するグループの代表も、今回の判決により政府機関だけでなく民間企業の経営者などもその趣旨をくんで改善してほしい。また、同様の悩みをかかえるグループが協力して、性的違和感は精神異常ではないことを証明する公的な文書を求めて運動を続けていきたいと述べている。
陸軍予備役司令部のチャーチャイ大佐は、陸海空軍ともこの修正作業がすでに進行中であるのでこの判決に控訴することは考えられない。また、国家評議会もこの修正提案を検討中であり、来年の徴兵時期までには実施されるのではないか、と述べた。
さらに、この修正案のもとでは、性転換を受けないトランスセクシュアルはカテゴリー2として登録され、このカテゴリーのひとたちは、その年の徴兵数が予定数に満たない場合には軍役に召集される可能性がある、と述べた。
(注)タイでは21歳から兵役義務がある。
*****
[私見]今回のタイの判決はたしかに一歩前進であり、社会的に隅っこに置かれたTSの立場にすこし明かりがともった感じはあります。しかし、根強い偏見は依然としてあります。後戻りのできない性転換手術を済ませたトランスセクシュアルがどう扱われるかはこの段階では明らかでなく、差別的境遇が続くのではないかという予感がします。それにしても“恒常的精神異常者”はひどすぎました!
*****
8月31日のバンコクポスト紙によると、タイ防衛省が所属のトランスジェンダー徴集兵を“精神障害者”と公式文書で呼称しているのに反旗をひるがえして、当事者のカトーイ(トランスジェンダー)とTSサポーターたちが法廷闘争に立ち上がった。その判決が9月13日に言い渡され、14日の紙面ではみごと勝利の判決が写真入のニュースとして報じられました。
SRS大国ながら自国民に対する法的な差別は依然として残るのがタイ社会の実情なので、タイのTJ・TS関係者の将来への朗報となったこのニュースを8月31日の記事とまとめて紹介いたします。
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[写真] サマートさん(左から2人目)と友人たちがプラカードをかかげてトランスセクシュアルへの差別廃止を訴えた。

行政法廷への訴えは防衛省に対するもので、当人のジェンダー認識を理由に“精神障害者”として徴兵記録に記されているのがその理由。
サマートさんをリーダーとする女装のTJたちは、サマートさんや他の女装TJを2005年に制定された軍規により“恒常的精神障害者”として明記する徴兵記録の変更を求めて行政法廷に訴状を提出した。
同様の反論に対する行政官庁の従来の見解では、自らの性別に違和感をもつ当事者で性転換手術を受けていない者は“カトーイ”と呼ばれる。すでに性転換手術を済ませている者は、軍法にしたがい“精神障害者”として認定されるべきである、との認識であった。その根底にある理由は、手術によって復元不可能な身体になっているからである。
ただし、ホルモン補充療法や豊胸手術などの身体への変更は、まだ復元の余地が残されているため精神障害者には含めない、との見解であった。
「当のサマート氏はまだ性転換手術を受けていないので、恒常的精神障害者と認定したのは不当であると考える。したがって、防衛大臣は30日以内にサマート氏の徴兵記録を精神障害者からカトーイに変更すべきである」、と政府行政委員会の一員であるクリチョット氏は自らの見解を述べた。
行政法廷の審理手続きでは、複数の政府行政委員が審議したのち行政委員長が意見を集約して結論に導くための制度があり、委員長はこの案件を審議する行政法廷の代表判事がつとめる。
サマートさんは委員の意見に勇気づけられたと言いながらも、9月13日の判決まで待たなければならないこと、また防衛省内の関係規則の変更などやっかいな手続きがあること、うわさでは性に違和感を抱く者は「自らの性志向と生来の性別は相容れないこと」を表現する新しい用語を考案中らしい、などと述べた。
およそ20人のゲイグループのサポーターたちが、法廷の前で7色の傘をかかげながら応援に色をそえていた。
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9月13日判決日。行政法廷の防衛省に対する判決は「性転換手術を受けていないトランスセクシュアルを恒常的精神異常者と徴兵記録簿に表記してはならない」いうものだった。
[写真]原告サマートさんは勝訴の判決に笑顔のVサイン。

従来の呼称が侮蔑的であると不満を訴えていたトランスセクシュアルや人権活動家たちは喜びの声をあげた。この判決によりトランスセクシュアルを徴兵義務から免除する理由の基準を明確化する動きが加速すると思われる。
また、性転換手術を受けていないトランスセクシュアルをどう表記するか検討するよう防衛省に求めた。判決によると「徴兵制度は防衛省の重要な役割であり、人権侵害をふせぎ軍役への興味を維持するためにも法制の改定を急がなければならない」。
“恒常的精神異常”は“性同一性障害(gender identity disorder)“と変更される可能性が強いと思われる。
“Sor Dor 43”として知られる文書は就職時の申請書などに広く用いられる様式で、これに“恒常的精神異常者”と書かれてはトランスセクシュアルがまっとうな職業につくことはまず考えられない。性の多様化を推進するグループの代表も、今回の判決により政府機関だけでなく民間企業の経営者などもその趣旨をくんで改善してほしい。また、同様の悩みをかかえるグループが協力して、性的違和感は精神異常ではないことを証明する公的な文書を求めて運動を続けていきたいと述べている。
陸軍予備役司令部のチャーチャイ大佐は、陸海空軍ともこの修正作業がすでに進行中であるのでこの判決に控訴することは考えられない。また、国家評議会もこの修正提案を検討中であり、来年の徴兵時期までには実施されるのではないか、と述べた。
さらに、この修正案のもとでは、性転換を受けないトランスセクシュアルはカテゴリー2として登録され、このカテゴリーのひとたちは、その年の徴兵数が予定数に満たない場合には軍役に召集される可能性がある、と述べた。
(注)タイでは21歳から兵役義務がある。
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[私見]今回のタイの判決はたしかに一歩前進であり、社会的に隅っこに置かれたTSの立場にすこし明かりがともった感じはあります。しかし、根強い偏見は依然としてあります。後戻りのできない性転換手術を済ませたトランスセクシュアルがどう扱われるかはこの段階では明らかでなく、差別的境遇が続くのではないかという予感がします。それにしても“恒常的精神異常者”はひどすぎました!
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