2008年5月1日木曜日

オーストラリア、100件の法律改正でゲイ差別撤廃へ

オーストラリア、100件の法律改正でゲイ差別撤廃へ

性同一性障害については世界の先進国では法的な整備が行われていて、日本でもまだ十分とは言えなくてもかなりの主張が認められて、社会的な権利や保護が受けられるようになってきました。これはやはり、他の先進国と同じように当事者たちの長年の努力と政治への働きかけが認められた結果だと思います。

ところで、同性愛についてはどうでしょうか。日本では、同性愛に関する法律がなく、人権の保護もなければ、同性愛行為への処罰もありません。同性愛は病気ではないため、1993年にWHOは「国際疾病分類」で治療の対象とはみなさないと宣言し、日本の厚生省もそれを採択しています。病気でないのは納得するとして、果たして何の人権保護も必要とされないのでしょうか。

先進国では同性愛者の権利拡大を求める運動が続いていますが、日本ではおとなしい気がします。日本の同性愛者たちは現状で満足なのでしょうか。ともあれ、オーストラリアでのごく最近の動きをご紹介いたしますので、参考になれば幸いです。
(4月30日掲載のバンコクポスト紙記事より)

**********

ゲイの同居カップルに対する差別を撤廃する連邦法改正が動き出すことになった。ただ、同性同士の結婚は除外される見通しと、4月30日付けでオーストラリア政府が発表した。

この改正では、長期のゲイの同居カップルは課税、社会保障、年金の支払いなどの面で、結婚したカップルと同様に扱われることになると、司法長官は述べている。

ゲイ同士の結婚は多くのオーストラリア人の間で物議を醸してきた問題であり、ゲイ権利推進グループや支援者たちはこの問題への政府の態度が、差別に終止符を打つ意志を試す試金石になると言っている。しかし司法長官は、婚姻法は今回の法律改正には含まれておらず、政府の見解はあくまで結婚は男と女の間でのみ成立するものだということです。

今回の改正立法の対象になる約100件の案件は、来月から議会にかけられ、すべて完了するのは2009年半ばと見られている。

改正となる法律の数例をあげると、ゲイのカップルが育てている子供は二人の大人の扶養家族とみなし、課税時や失業保険給付の際に考慮される。また、同性のカップルは年金の対象としては家族と同じ扱いを受けることになる。

ゲイ権利推進グループはこのような進展を歓迎しているものの、政府はもっと踏み込んで、ゲイ同士の結婚を認めるべきだと主張している。「オーストラリアのゲイとレズビアンは自分たちが選ぶパートナーとの結婚が認められないかぎり完全な平等とはいえない」、と活動家グループの代表がABC放送のインタビューに答えている。

今回の法律改正のほとんどは州レベルではすでに実施ずみで、それを連邦政府が追認しようとする形になっている。しかし、連邦婚姻法には結婚は男と女の間のみに許されると規定されているため、州レベルでも事実上の夫婦として一定の法的保護が認められているにすぎないのが現状である。

ヨーロッパの多くの国では、同性のカップルに一定の法的権利を認めているが、ゲイ同士の結婚を認める国は例外的な少数にすぎない。アメリカにおいても、州によっては同性カップルの生活上の権利は認められていても、ほとんどの州で同性結婚や結婚宣誓を禁じている。

Bangkok Post; 2008-04-30;Ⓒ2008 The Associated Press. All rights reserved.

***********

≪補足≫
スウェーデン、デンマーク、ノルウエー、オランダでは、同性愛カップルの事実上の結婚生活が法的に認知されている。

キリスト教国にも教義上の理由から同性愛を否定したり、警察や軍隊においては禁止する規定がある国もある。アメリカでも保守的な南部では、同性愛の現行犯逮捕を認める州もある。最近では、聖職者の同性愛が話題になるのもめずらしくなく、全体としては合法化の流れにあると言える。

イスラム文化圏では同性愛を認めない国が多く、禁固刑やイランのように再犯の場合には死刑にする国もある。アジアの穏健派のイスラム国であるマレーシアやインドネシアでは、イスラム教義の厳格な適用はせず、(一部の保守的な地域をのぞき)事実上黙認している。

タイや日本などの仏教国では伝統的に同性愛には寛大で、迫害を伴うような社会的な問題となったことは歴史上なかった。ただし、問題にならなかったことが妨げとなり、法的な人権保護という観点からはその必要性が理解されにくいというジレンマに直面しているように思われる。

*****