2007年4月10日火曜日

タイのゲイ文化



(写真は華やかなレディーボーイ中心の舞台ショーで、ゲイとは直接の関係はありません。人気グループは世界中で公演しています。美形のTSにとっては晴れ舞台です。)

よくタイにはゲイが多いというコメントを聞きます。本当でしょうか。たしかに明らかにゲイとわかる人、またはゲイらしく見える人が多く目に付くのは事実です。タイで有名な風俗業のことではありません。

サラリーマンや、ホテル、レストラン、旅行会社の窓口、店員、病院、などいたる所で見かけます。普通の男性の服装もいれば、うっすらと化粧している人もいます。しかも、本人だけでなく、同僚やお客もべつに気にしている様子はありません。これがいたる所で見かける昼間のゲイの普段着の姿です。風俗業は別格としても、日本にくらべればゲイが多いという印象は旅行者がもつ正直な感想でしょう。

これは要するにタイはゲイに対する寛容度が高いからです。偏見がないと言えばウソになるかも知れませんが、社会的に受け入れられているだけでなく、職業によっては一般人より優遇されている面もあります。たとえば、ホテルのフロント、病院などの案内・説明係、学校の職員、店員、ウェイター、などです。また普通の会社員でもべつに問題にされることはありません。

私のよく知っているサムイ島のリゾートホテルのフロントに二人のゲイがいました。マネジャーによると、まず他の女性の従業員とは男女間の問題は起こさない、ちゃんとした教育も受けている、お客さんへの接客態度がていねいで細かいことにも気が付く、普通の男性より真面目で頼りになる・・・など良いことづくめでした。

またバンコクのある専門病院でも同じような見方をしていました。そこは男性の接客スタッフは少数ですが全員がゲイで、しかも院長の方針でゲイしか採用しないという徹底ぶりです。べつに、院長がゲイというわけではなく、前述のようにゲイの方が女性以上に細やかな気配りができるので、患者へのサービス面で得策であるという理由です。たしかにこの病院は繁盛しています。

タイ人の会話の中でよくゲイの同僚の話がでますが、特別視している感じはまったくありません。それはゲイが社会的に受け入れられていて、生活にも仕事にも特別な支障なく社会参加ができているからです。そのため、「タイではゲイが多い」という印象につながっているのではないかと思います。

性同一性障害と同じように、同性愛も生まれる前から決まっていた性指向だとすると、タイに特別多いわけはなく、ほぼ同じ率で日本にもゲイが存在するはずです。歴史的にも日本にはゲイについての文献は多くありますが、違いは現在の日本社会の寛容度に差があり、社会的に表に出にくいため、目立たないだけではと思います。

宗教的な偏見から、アメリカなども一部の都会を除けば決してゲイには住みやすいところとは言えません。TSにはさらに偏見が強いようです。先日バンコクのPAIでSRSを終えたばかりのイタリア人女性と話す機会がありました。彼女の言うところでは、イタリアもカトリック教の影響がつよく決してTSにとっては住みやすい国ではない。できればタイに住みたいくらいです、と言っていました。

そのタイでもゲイにくらべれば少数派であるGIDへの理解度はまだまだ低いという印象を受けます。私のよく行くレストランのウェイトレスにTSの女性がいます。けっして美形ではない彼女ですが、ニコッと笑顔でかいがいしく働いています。華やかなナイトライフ向きでない彼女にも、このような職場はちゃんと用意されているのがタイ社会の救いです。