2011年12月22日木曜日

第三のジェンダー、やっと離陸へ


レディーボーイ搭乗機、離陸準備完了

今年の1月の投稿でとりあげたタイのPCエア航空がやっと離陸することになりました。以下は12月16日付けのバンコクポスト紙の記事です。(1月26日投稿:「第三の性」エアホステス離陸準備中)及び1月28日の「その続報」参照)
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第三のジェンダーのキャビンアテンダントを配置する世界初めてのエアラインといわれる、個人所有でタイ国籍のPCエア航空が、当初の予定より9ヶ月遅れながら離陸準備が整いました。

PCエアのフライトアテンダントとして採用された4人のレディーボーイたちは(写真参照)、昨日のデモフライトで報道関係者にそのサービスぶりを披露しました。この航空会社はまずチャーター便として営業運航を開始し、来年の6月以降から正規の航空会社として定期便運行を開始する予定です。


PCエアの処女飛行は、12月24日のバンコクとラオスのビエンチャン間のツアグループを乗せたチャーター便で、来年1月23日にはバンコクと中国の二つの都市を結ぶチャーター便の運行を開始する予定になっている。

民間航空局の規則にしたがい、定期便運行開始に先駆けて、アジア圏内のツアグループを対象にチャーター便で運行を開始し、来年6月に正規航空会社としての資格認定を受けることになる。

昨日のデモフライトでは唯一の所有機材であるエアバス310-222型機を使い、報道陣を招待した機内で4人のレディーボーイ搭乗員が他のクルーに加わりそのサービスぶりを披露した。

唯一のオーナー社長であるタイ人のピーター・チャン氏は報道陣に対して、運行開始の遅れは財務上の問題ではなく、旅行ハイシーズンの到来にタイミングを合わせたからだと説明した。

不動産会社の役員でもある同氏は、ローシーズン中の需要上の問題とその後のタイを襲った大洪水も遅れの要因ではあると述べた。

この新事業への自信の表れとして、自身がキャビンアテンダントの経験をもつ同氏は、ほとんどの航空会社はリースで機材を調達するのが普通だが、既存の航空会社からジェット旅客機を購入するにあたって10億バーツ(約28億円)のキャッシュで払う道を選んだ。

また、来年の第二4半期には定期便運行を開始し就航先も拡大する予定なので、新たにワイドボディーのA300-600型機を2機導入する計画であると述べた。

ピーター・チャン氏によると、PCエアの就航先として候補にあがっているのは、香港、中国、韓国、そして日本である。PCエアが5年以内に収支均衡になるとは思っていないが、定期便運行開始に合わせてタイ株式市場に上場することを考えているので、投資家および国内・海外のツアオペレーターとも協力関係を築きたいとのこと。

さらにPCエアはトランスセクシュアルに就職の門戸を開き、キャビンアテンダントとして引き続き採用していく方針であり、機会平等を企業理念としてかかげている、と述べた。

30人採用したキャビンアテンダントのうち4人がレディーボーイであり、また19人が女性、男性は7人、全員が資格をクリアしている。レディーボーイのひとりタニャラットさん(上の写真の右から2番目)は2007年度のミス・ティファニー・ユニバースの栄冠に輝いたこともあり、またモデルやテレビの喜劇ドラマの女優としても知られている。

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日本のメディアでもこのニュースは取り上げられたようですが、ロイター通信によるとピーター・チャン氏(オレンジ色ネクタイの男性)は“私がパイオニアになったようだが、他の航空会社も私のアイデアに興味をもつだろうと確信している”とのこと。日本のエアラインにもぜひお勧めしたいアイデアですね。エアラインだけでなく、トランスジェンダーは鉄道関係を含む幅広い分野のサービス産業にはぴったりの適性をもっていると思います。
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<注>トランスジェンダーはタイでは“カトーイ”とか“レディーボーイ”と呼ばれています。これらの記事でも”third gender” “transgender” ”transsexual”などいろいろの名称が使われています。
この写真でもわかるように彼女たちを“レディーボーイ”というのは、“ボーイ”の部分にちょっと抵抗がありますが、タイではSRS後でも性別変更が法的に認められないので我慢するしかないかもしれません。それでも、PCエアのような職場の門戸をひらく動きが、SRS先進国タイで起こったのは拍手喝采です。日本への就航を楽しみに待ちましょう。

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