2011年4月17日日曜日
“SRSを無料で提供します”
“SRSを無料で提供します”
このバンコクポスト紙の2月24日の記事は、ちょうどその時バンコクに滞在中だったのに気が付かず、やっと昨日になってBPネット版の関連記事として目に飛び込んできました。
掲載された写真も大いに参考になりますので、遅まきながら紹介させていただきます。写真のキャプションを翻訳しておきますので、この記事の主眼がおわかりになると思います。タイのトランスジェンダーの状況がたいへん身近に感じられて、私としても思わず“グッドラック”と声援を送りたい気持ちになりました。
8枚のスライド写真は以下のURLからアクセスできます:
http://www.bangkokpost.com/multimedia/photo/223339/A-Free-Sex-Change
**********
性転換手術はタイではどの医療保険制度でもカバーされていません。「シスターズハンド(姉妹の手)財団」は私的な組織で、少数のトランスジェンダーの性転換手術費用を全額提供するのを目的に設立されたものです。
《写真のキャプション》 (Photos by Somchai Poomlard)
(1)シスターズハンド財団の提供する資金援助に応募するために、タイ・トランス女性協会本部に集まったトランスジェンダーたち。(写真: ロビーで待機する応募者たち)
(2)この財団は手術費用をまかなえない対象者に、無料で性転換手術が受けられるための費用を提供します。
(3)2010年に始まったこのプロジェクトは2年目を迎えます。手術は約100,000バーツの費用がかかるため、毎年5人分の予算しかありません。今年は100人近くが応募しました。
(4)前ミス・アルカザーとして有名になり現在はタイ・トランス女性協会の会長をつとめるヨランダ・クリッコンさんによると、性転換手術が医療保険に対象になっている国もあるが、タイではそのような制度は存在しない。そのためシスターズハンド財団が設立され、自分では手術費用を負担しきれない当事者たちの希望を支える役目をになうことになった。(写真:ミス・ヨランダ)
(5)手術を受ける資格を満たす条件として、トランスジェンダーは一連のテストをクリアする必要があります。応募者はそれぞれ精神科医とホルモン専門医の承認を受けたのち、12ヶ月以上の期間を女性として生活を送っていることです。
(6)タサランガ・オンミースクさんはこの制度のもとで初めて性転換手術を受けた一人です。今回の応募集会ではこの制度のおかげで自分の人生がいかに変わったか、涙ながらに語りました。(写真:ミス・タサランガ)
(7)前回のもう一人の合格者は、選考にパスしてどんなにうれしかったかとそのときの感激を語った。自分は生まれ変わったと感じたこと、それまでは毎日苦しい日々を送っていたこと、選考に受かったときは、一切のためらいや恐れはなかった、痛みなどはちっとも怖くなかった、たとえ死ぬような結果になろうとも手術は受ける心の用意はできていた、完全な女性になれる日を待ち焦がれていたのだから、と自らの体験を語った。
(8)この応募イベントでは、アルカザー・パタヤから招かれたキャバレータレントが雰囲気をやわらげるため演技を披露した。
**********
《解説》
●手術費用の10万バーツとはいくらくらい?大卒の初任給が約1万バーツとして、10か月分の給料に相当します。日本の貨幣価値でいえば200万円前後に相当する額でしょう。タイの生活物価水準からも相当高い金額で、若者が単独で出せる額を超えています。日本人がタイで手術する場合はMTFで80万円―100万円くらいですから、日本人にとっては国内よりもやはりタイでの手術の方が安いと言えます。10万バーツは現地のタイ人特別価格で、外国人には別の料金体系が適用されます。
●「アルカザー」というのはビーチリゾートのパタヤで有名な、いわゆるニューハーフショーの劇場です。現地ではキャバレーショーと呼ばれていますが、日本のホステスのいるキャバレーとは違いショーを見せる劇場です。多くのTSがショータレントとして働いており、観光客の間で大評判です。世界各地での海外公演も好評を博しているようです。
●PAIでSRSを終えたばかりのイタリア人のTS女性と話す機会がありました。彼女の言うには、イタリアはカトリックの国なのでGID当事者にとっては宗教的偏見もあり暮らしやすい国ではない。SRSは公立の病院なら無料で手術が受けられるが、医師の技量レベルに問題があり、後悔して泣いている友人が少なからずいる。私はタイのことは予備知識もろくになかったが、結果的にバンコクに来たのは大正解だった。ここの清潔な病院やスタッフのサービス、医師の技量などすべて安心できる水準なので、帰ったら友達にもタイを勧めるつもりだ、と大満足の様子でした。
●この記事の写真からも若い女性が多いのに気づくでしょう。以前にも触れましたが、タイではゲイやトランスジェンダーに対する社会的な抵抗が低く、多くのTG、TS当事者が十代からホルモン治療などに進み、クロスドレッシング、反対の性での生活などSRSへの準備に早期から取り組んでいます。ただ、SRSは18歳を過ぎるまで許可されません。また、SRSを済ませたあとでも戸籍やIDカード、パスポートなどの性別変更が許されないなどの社会的障害は依然として解決されていません。
*****
2011年4月8日金曜日
声の女性化手術
声の女性化手術について
このテーマについては患者さんから問い合わせがあり、今年2月にバンコクに行った折にプリチャー先生に相談したばかりでした。というわけで、前回投稿した女声と男声を自在に歌い分けるタイの女性歌手のニュースは、ほんとにタイミングよく飛び込んできたわけです。
プリチャー先生に声の女性化手術でだれか推薦できる医師はいますかと聞くと、ためらいなく返事が返ってきた。
「世界中どこを探してもそんな医師はいない。手術で声帯のピッチは変えることはできても、その結果どういう声になるかは予測できない。耳障りなピッチの高い声になるかもしれないし、ヒューヒュー息が漏れるような声になるかもしれない。それを修正するのはさらに大きなリスクが伴う。のどに傷跡も残る。どんな手術でも完璧は期待すべきではないが、この手術は患者にとってリスクが大きすぎる。PAIではこの手術は行わない」、ときっぱり言う。
「タイでもこの手術を行っている医者はいるが、手術後に声が出なくなったケースもあったことも知っている。国際的な学会でもこの話題がでるたびに、その手術の効果に否定的な見解が圧倒的である。やはり、時間はかかるが女性の声をまねる訓練を行うのが一番安全な方法だと考えている。」
手術ではなく発声訓練で
2004年にバンコクで行われたSRSワークショップで講演したオランダの医師は、「一番現実的でお勧めできるのはプロの役者のように女声の発声法を時間をかけて身につけることだ。腹から声を出すのではなく、意識的に少し上にあげて胸あたりから出すように訓練すれば、声のピッチも高くなり女性的な発声になる。あせらずに時間をかけて訓練すれば、違和感のない女声の話し方ができるようになるでしょう。」と言っていました。
発声法についてはその分野の専門家もいるようですので、ネットで調べるなどして指導を受けるのもいい方法かもしれません。
数年前の日本のGID学界でもこのテーマの講演がありましたが、経験あるその医師も手術の結果どういう質の声になるかは予測できない、とこの手術の難しさを指摘されていました。
予測できるリスクの大きさと、うまくいった場合の価値とのバランスをどう判断するか。それは個々人の価値判断によりますので、いちがいに決め付けるべきことではないと思います。ただ、SRS関連の他の手術にくらべてリスクが高い手術であることは念頭に置くべきでしょう。
日本のテレビによく出る有名TSタレントでも、声の女性化手術を受けているひとはいないのではないかと思います。それぞれ自分の自然な発声法と、女性でも男性でもない中性的な感じの声で話されているのを見ても違和感はありません。女性的な身のこなしや話しぶりが身についている限り、声の質という物理的な要素はそんなに大きな意味は持たないと私自身は感じています。
TSと俳優の人生
もともとジェンダーは女性だといっても、身についた男性としての身のこなし、マナーなどは簡単には女性化できません。服装やヘアスタイルなど外見は女性化しても、周囲に与える印象は男性時代のなごりをひきずっているのが普通です。
まず周囲の女性の身のこなし、立ち振る舞い、テーブルマナー、しゃべり方、ジェスチャーなどをよく観察することです。俳優はよく観察することで、その人物になりきった自然な演技ができるようになります。“言うは易し、行うは難し”なのはよく分かりますが、シェークスピアの言ったように“人生は劇場であって、それぞれが登場人物の役割を演じている」のです。むずかしいからと言って役を降りることは許されていません。完璧にその役になりきることはできないし、またその必要はないのです。
SRSで肉体的に本来の性になるのは(完璧を求めない限り)比較的に簡単です。ただ、それで終わりではないことがやっかいなのです。TSとして社会の中で生きていくためには俳優の人生が待っていることを自覚するのが必要ではないかと、SRSの現場にたち会うたびにつくづく思います。
毎日舞台に立っている俳優のつもりで本来の自分の性の役割を演じてみてください。何事にも完璧はありません。一生続く稽古のつもりで、めげずに励んでください。ご健闘を!
*****
2011年4月5日火曜日
女声・男声を歌い分けるTS歌手
女声・男声を歌い分けるTS歌手
いまタイのみならず中国などでも、YouTubeを通してセンセーションを巻き起こしている歌手がいる。
MTFトランスセクシュアル歌手、ヌンティタ・カンピラノン(愛称ベル)さんである。
Britain’s Got Talent というイギリスのタレント発掘番組で世界にセンセーションを巻き起こした、スーザン・ボイルなみの騒がれようである。このタイ版であるThailand’s Got Talentがバンコク・ポスト紙(4月2日版)に紹介されているので、その記事を翻訳してご紹介しましょう。
ヌンティタさんのなんとも愛くるしい顔立ちと、素直でやさしい見事な女声は観客の男女を問わず魅了してしまった。しかも、低い男声でも歌えるのがこのひとの才能なのです。


YouTubeで3月13日に放送されたコンテストの動画のタイトルは:
"Thailand's Got Talent: Boy or Girl?" (すでに327万以上のアクセスあり!ぜひトライしてみてください)
もう今頃には100万人以上の人たちがこのThailand’s Got Talentのシーンを見たに違いない。美しいの一言に尽きるトランスジェンダー歌手、ヌンティタ・カンピラノン(愛称ベル)さんが、女の声で歌い始め後半は男の低い声で歌い終えるという類まれなタレントを披露し、三人の審査員を煙に巻きながら、一方では観客を歓喜させたのです。
*** ***
(以下はインタビュー内容)
バンコク東北部のナコン・ラチャシマ県出身のヌンティタさんの言うには、「自分の覚えている限りでは、子供のころから自分は男の身体にとじこめられた女だと気づいていました。」
「軍隊に所属する父親の一人息子だったので、男の子である自分が女性的な態度や感情を表に出すのは父親とのもめごとのもとになりました。」
「学校では男の子たちは私をからかい、しょっちゅういじめられました。家では父に死ぬほど殴られたこともあります。父は私が“普通の子”であって欲しかったのです。」
いじめをどうやって乗り越えたのかの問いには、ヌンティタは歌を唄いたいという情熱がだんだん大きくなったのが救いになったという。
「小さいころから歌うのは大好きでした。お父さんはカラオケが大好きでした。おばあさんも昔は歌手だったのです。というわけで、歌への情熱は家系の血の中にあったのでしょね。」
「十代の頃、歌唱クラブに入りました。私の夢を実現するためにできることのひとつだったし、同時に他の男の子たちから距離を置くには好都合だったのです。」
「もっと大事なのは、歌唱コンテストで学校代表として認められるのは、学校でただのゲイボーイと呼ばれてからかわれるよりははるかに意味があったのです。」
職業学校での教育期間が終わると、ヌンティタはバンコクに出てもっと勉強したかったものの、家庭の経済事情がそれを許さずあきらめざるをえなかった。
「学校を卒業すると地元のラジオ局でDJの仕事が見つかり、さらにクラブで歌い始めることができました。」
ある晩、面白い発想がヌンティタの頭に浮かびました。それは、仲間の歌手たちを喜ばてやろうと男声と女声の両方で歌って見ようと決めたのです。
「男声で歌うと、観客は私がトランスセクシュアルだと気がついたらしいのです。皆さん大変喜んでくれました。その時以来、聴衆を前にするとこのトリックで歌っています。」
バンド演奏で歌っているうちに彼女の才能が発揮されただけでなく、ボーイフレンドもできたのです。
「ボーイフレンドもバンド仲間でした。8年間も一緒にいたのですが、私がバンコクのショーに加わる決心をしてからは関係が悪くなり、終わりになってしまいました。」
チャンスのドアが開けると、ヌンティタは迷わず飛び込み、心の声に従ったのです。Thailand’s Got Talentについてヌンティタがとくに感謝していることは、このショーはジェンダーが何であれ、皆それぞれに平等のチャンスを与えてくれることです。
「このショーに出ようと決めた理由は、すべてのジェンダーに開かれているからでした。私にとって最高の舞台であり、自分の才能と私が何者であるか、観客の面前で堂々と見せられる機会だったのが主な理由です。」
三人の審査員が全員一致で合格の票を入れたあと、ビデオの終わり部分でヌンティタはカメラに向かい、父親への短いメッセージを送りました。「お父さん、私はやっとやり遂げました。愛してるよ、お父さん」
このイベントの後で父親と話す機会があったかと聞くと、ヌンティタは「はい、父は今では私のことを誇りに思っている。そして、お前がどんな人間であろうとも、善良な心をもつ人になりなさい」との父親の言葉を教えてくれた。
**********
ヌンティタは女声、男声、とも両方使いこなせるということは、彼女は声の女性化手術など受けていない証拠です。歌うことで時間をかけて声の女性化に見事成功した、模範的な例ではないかと思います。
では、自宅のカラオケ装置を使って練習するというのも、簡単で実行可能な方法ではないでしょうか。
MTFの声の女性化手術については最近プリチャー先生とも話し合ったばかりですので、次回のテーマとして取り上げることにします。
*****
2011年1月31日月曜日
スワナプーム国際空港と市内を結ぶエアポートリンク
スワナプーム国際空港とバンコク市内を結ぶエアポートリンク
バンコク中心地とスワナプーム国際空港を15分で結ぶ快速鉄道「エアポートリンク」が昨年8月に開通した。その便利さが大いに期待されたが、現地新聞の読者コメント欄では利用者の反応はかんばしくない。私自身も昨年11月に始めて利用してみたが、正直なところ便利さに関しては期待はずれだった。しかし、利用の仕方では安くて便利な場合もあるでしょうから、ここでエアポートリンクの概略を紹介しておきます。
**********
列車には2種類あり、エクスプレスラインは空港と市内中心に近い「マカサン駅」をノンストップで結ぶ高速線で、これが「エアポートリンク」と呼ばれている。最高時速160キロの高速で、所要時間は15分。
空港から各駅停車して終点の「パヤタイ駅」まで8駅を結ぶサービスが「シティ・ライン」と呼ばれている。この線は通勤客や学生の利用が中心。終点までの所要時間は27分。
両路線とも始発の午前6時から深夜0時までの運行。運行間隔は15分。
路線の全長は28.6キロで、エアポートリンクは最高時速160キロで走行。
空港からマカサン駅までのエアポートリンク料金は150バーツ。パヤタイ駅までのシティ・ラインの料金は距離により、15バーツから45バーツまでとなっている。
エアポートリンクはタイ国有鉄道(SRT)の所有と運行になるもので、タイでは最高速の鉄道となります。
2011年1月4日より、バンコク中心街に近いマカサン駅に航空手荷物のチェックイン用カウンターが営業開始した。ただし、当面の間は利用できるのはタイ航空とバンコク・エアウェイズの2社便だけとなる。チェックイン時間は飛行機の出発時間の3時間前から13時間前までの間。
車両と運行システムはドイツのシーメンス社製で、手荷物のチェックイン設備とシステムは国有鉄道とタイ空港公社(AOT)との共同開発になるものです。
*****
(無料で試運転期間中の光景)

マカサン駅の手荷物チェックインが便利かどうかは、私見ながらかなり疑問です。当面の間はタイ航空とバンコク・エアウェイズだけという点は別としても、東京のシティ・エアーターミナルでやっていたような出国検査までできるのなら大いにメリットがあるが、空港での出国検査の長蛇の列を考えるとメリットは半減する。マカサン駅までタクシーで来るなら、一気に空港までタクシーで行ったほうが楽ではないか。また、料金も一人利用なら得かもしれないが、鉄道料金は2人以上だと不経済になり、タクシーの方が安くなる。
空港から市内までの利用では、空港駅で荷物を列車に積み込み、マカサン駅ではガラガラと引っ張ってタクシー乗り場でまた積み込んでホテルに向かうことになる。私が利用した夕方の時間にはタクシーは1台しかいなかった。
エアポートリンクの乗り心地は悪くない。ドイツのシーメンス社製の車両は快適で、荷物置くスペースもあり、走行音も静か。マカサン駅までわずか15分で到着するので、ゆっくり景色を味わうひまもないくらい。私の利用した夕方5時ごろの時間帯では、2両編成の車内は5人くらいしか乗っていなかった(空港から市内まで)。まだ周知されていないからでもあるでしょう。
もうひとつ気がついたこと。マカサン駅からタクシーでホテルに向かうとき、駅は3階レベルにあるので、タクシーは駐車場ビルのような急斜面のらせん状の狭い出口をぐるぐる回りながら降りていく。地上レベルに着くと市内中心部とは反対方向に向かう車線に出る。すこし走ってからUターンして中心部に向かうことになる。
要するに設計の段階で利用者の利便を考えていない証拠。これは空港ターミナルでも同じで、やっと地下駅まで降りても、チケット窓口からホームに降りるエスカレータまでの導線がスムーズでない。チケットを買ってから5メートルほど引き返して下りエスカレータに乗るという、大きい荷物を持つ場合などにはイライラさせる設計になっている。
また、エアポートリンクのチケット売り場はシティ・ライン用窓口の反対側に設置され、通常の導線で近づいても見えない位置に設置されている。案内標識が親切でない。
欲を言えばいろいろ欠点はあるものの、エアポートリンクは一人で身軽に旅行する場合や、空港に人を迎えに行くような場合には便利な乗り物だとは思います。ものは試しに、一度は乗って見てください。

*****
2011年1月28日金曜日
「第三の性」エアホステス-続報
「第三の性」エアホステス - 続報
トランスセクシュアル乗務員については投稿したばかりですが、このニュースの続報が今朝のザ・ネーション紙に載りましたので早速お伝えします。
**********
PCエアのトランスセクシュアル乗務員、まず日本、韓国、中国へのチャーター便でデビュー
「当社はすべての性別の乗務員を雇用する最初の航空会社になりました。これはプラスのイメージで社会に受け入れられたと理解しています」。会見に臨んだこの新しい航空会社のスポークスウーマンのチュタティップさんは笑顔で答えていました。
このタイの新規設立の航空会社は3月からスワナプーム国際空港を拠点に運行を開始する予定で、まず日本の成田と関空、さらに韓国に乗り入れを実現し、その後中国の主要都市に路線を拡大する計画だそうです。
PCエアは2年間の事業化検討期間を経て、昨年7月に会社設立された航空会社。会社のオーナーはピーター・チャン氏と元官僚のチャトウィワット・クルムコモン氏で、当面は運行コストを抑え他の経費も現実に合わせて運営できるように、チャーター便に特化する方針でいくとのこと。
PCエアは便利な時間帯に飛ぶ定期チャーター便として、日本は東京と大阪路線で開設する。ビジネスクラス18席、エコノミー210席の機材を使い、機種はエアバスA310-222型でミャンマーのエア・バガンからリースで調達する。
マーケティング、地上サービス要員、パイロットなど総計100人の社員を雇用し、その内30人が客室乗務員となる。
「この路線にはすでに競争相手がいるのは承知していますが、名前は私が言うまでもないでしょう」。とチュタティップさんは笑顔で言う。
今週始めに3人のトランスセクシュアル客室乗務員の採用が発表された時には社会の耳目をあつめたが、第三の性の乗務員の雇用についてはすでに民間航空局より認可がおりているそうです。
*****
日本の国土交通省が乗務員の性別にイチャモンをつける筋合いはないので、また成田空港も羽田の国際化に対抗する必要から、PCエアの成田と関空就航がスムーズに実現することを願っております。みなさん、応援してあげてください!次回のバンコク行きはPCエアで!
*****
2011年1月26日水曜日
「第三の性」エア・ホステスが離陸準備中
「第三の性」エア・ホステスが離陸準備中
1月25日付のタイのThe Nation紙をはじめインターネット3紙に、トランスセクシュアル女性3人が新規航空会社のエア・ホステスに採用されるという明るいニュースが掲載されています。「ザ・ネーション」を中心にして3誌の内容をとりまとめてお伝えします。ちなみに、日経新聞の26日夕刊の社会面にも簡単な紹介記事がありました。
**********
3月1日から運行を始めるタイの新しい航空会社「P.C. エア」が、トランスセクシュアルの就職志望者をエアホステスとして採用したというニュースが就労の悩みをもつ人たちを喜ばせている。採用された求職者の中には2007年のミス・ティファニー美人コンテストで優勝したタニャラートさんがいることも注目の的となっている。
P.C.エアの経営者ピーター・シャン氏は、この航空会社を立ち上げるに当たりトランスセクシュアルがエアホステスの仕事に適性を有しており、その可能性を以前から認識していたと述べている。
初期の職場教育期間を経た後は、トランスセクシュアルたちは他の女性エアホステスたちに交じって実地訓練を受けることになる。ただ他のエアホステスと違うのは、“第三の性”と記された金色の名札をユニホームにつけて乗務することで、これは空港の出入国管理を通過する際の混乱や乗客の誤解を避けるのが目的であるとシャン氏は説明している。
P.C.航空のスポークスウーマンによると、今回のトランスセクシュアルの採用枠は3人だけであるが、将来的には資格や適性を考慮して採用枠を増やしていきたいと述べている。今回の採用第一陣は17人の女性、10人の男性、そして3人のトランスセクシュアルとなっている。
2007年度のミス・ティファニーのタニャラートさん(23)は、最初は、以前に他の会社でもあったように就職申し込みは受け付けるが、最終的には採用しないというパターンかと思ったのに、あこがれていたこの仕事のチャンスが与えられて最高にうれしいと満面の笑顔。
採用されたもう一人のトランスセクシュアル、パンタカンさん(24)の話では、他の航空会社で以前エアホステスの採用申し込みをしたものの採用されなかった。後でその会社で働く友人から聞いた話では採用されなかったのは彼女がトランスセクシュアルであったからだと聞き、その差別意識にショックを受けた経験があると述べている。
パンタカンさんはカセサート大学卒でホスピタリティーとツーリズムの学位をもち、今度こそはこの仕事で成功したい、またタイの社会がトランスセクシュアルにより広い機会を与えるようになったのを心強く思うと述べている。
(注)タイではSRS後のトランスセクシュアルでも戸籍上の性別変更は認められず、身分証明書やパスポートなども元の性別のまま。SRS先進国ながら法的な整備がされていないのが問題視されている。トランスセクシュアルはタイ語では“カトーイ”と呼ばれる。

*****

この航空会社の機体にも書かれている“わたしはマイウェイで行きたい“という会社のモットーに従い、3人のトランスセクシュアルを採用した。
P.C.エアはバンコクのスワナプーム新国際空港を拠点とするハイクオリティーなサービスを目指す航空会社で、本年3月1日より運行開始する予定。日本の大阪や東京にも路線を拡大する計画があり、近い将来に“カトーイ”のエアホステスのサービスを受けるのも可能になりそうです。乞うご期待。
*****
私見ながら、“エア・ホステス”という呼称について。古くはステュワーデスに始まり、エア・ホステス、キャビン・アテンダント(客室乗務員)、フライト・アテンダント、などと呼ばれています。エア・ホステスは比較的古い呼称で、今ではあまり使われていないようです。“ホステス”と呼ばれるのがプライドを傷つけるのでしょうか。それとも、ホステスにふさわしいサービスはもう提供していないから、でしょうか。
今回の記事でもザ・ネーション紙は“エア・ホステス”を使っていますが、他のソースでは“フライト・アテンダント”または“キャビン・アテンダント(CA)”と呼んでいます。後者のキャビン・アテンダントやフライト・アテンダントは客室乗務員という職能を重視した呼称で、それはそれで結構ですが、ホステスの方がお客様を温かくもてなす人という元々の意味があり、人間的な温かみを感じます。
バーやナイトクラブのホステスではないですが、パーティを主催し来客をもてなす女主人はホステスとという尊称で呼ばれます。男性ならホストです。この方が人間的な温かみがあり、とくに笑顔で応対するであろう美形のTSエアホステスからは本来のサービスが期待できそうで、この呼称が一番ふさわしいと私は勝手に思い込んでいます。
ついでながら、看護婦さんは今では看護士などという無機質な呼称になっていますね。私も入院した経験がありますが、彼女たちは看護士などという無機質な存在ではなく、まさに天使ともいうべき温かい存在であり、個人的には今でも看護婦さんと呼んでいます。それでなにか問題があるのか、と開き直りたくなりますが・・・・・
*****
2010年9月20日月曜日
ミニペニス(=マイクロペニス)形成
■FTMへの近道―ミニペニス
男性から女性への性別適合手術は比較的に簡単で、手術は一回で済みます。熟練した医師チームなら3時間前後ですべて完了し、2週間後には帰国できます。
一方、女性から男性への手術で、本格的なサイズのペニスを望む場合には通常数ヶ月間隔で行われる4段階の手術工程をへて、一年以上もの時間を要します。ペニス形成のための筋肉・皮膚組織を移植するドナーサイト(腕、太もも、腹部など)には、大きな傷跡が残るという問題もさけて通れません。また、手術にかかる費用と時間は、当事者には大変な負担になります。
それでも、GID症状に深刻に悩む当事者にとっては、簡単にあきらめるわけにはいきません。一時的な悩みならともかく、幼少時代にはじまり、悩みが深刻になる青春期、さらに社会人として今後の人生を考え、真剣に解決方法を模索している当事者は大勢いるはずです。PAIのプリチャー医師も、日本人にはとくにFTM患者が多いという印象を語っています。
■SRS発祥の地、ヨーロッパ
近年では従来からある本格的陰茎形成法のほかにミニペニス(=マイクロペニス)というFTM手術が注目を集めています。これは最近開発された手術法というわけではなく、ヨーロッパでは20年ほど前から実施されていて、手術法も洗練され、医師、患者双方の満足度も向上し、すでにFTM手術の有効なオプションとして定着しています。その先端を行くのが中央ヨーロッパ、セルビア共和国の首都ベオグラードのFTM手術で名高いペロヴィック医師です。
ペロヴィック医師の実績は2003年の英国泌尿器学会や2008年のアメリカ泌尿器学会のジャーナルでも特集され、解剖学的にも手術技法の面でもレベルの高さが注目を集めました。ペロヴィック医師とPAIのプリチャー医師とは長年の親交があり、2004年にバンコクで行われたプリチャー医師主催のSRSワークショップには特別講師として招待されました。このワークショップには日本からは埼玉医科大学の原科教授(当時)及び高松助教授(同)も特別ゲストとして招待されていました。
PAIのプリチャー医師とその医師チームも毎年のようにベオグラードに出向き、ペロヴィック医師と技術交流を行いながら、ミニペニスの手術技法の向上に努めています。まずミニペニスとは何か、その手術の主眼は何か、という基本を理解する必要があります。
■ミニペニス(マイクロペニス)とは
女性に備わっているクリトリスは発生学的には男性のペニスと同じものです。どれも性的刺激を受けると勃起し、大きさを増し、そして性感覚が鋭敏になり、快感が絶頂になるとオーガズムに達します。クリトリスは個人により形やサイズはまちまちですが、ペニスに似た亀頭部分があるのが普通です。
大きな違いはペニスにはその中心部に尿道が通っているのに、クリトリスには尿道がないことです。女性の尿道口はクリトリスの下方、膣入り口のすぐ上にあり、外に向かって出っ張っていないため、立ったままでの排尿はできません。FTM当事者が術後になによりも感激するのが、男性として立ったままで排尿できるようになったことだ、とよく聞きます。
包皮に包まれたクリトリスの根元から亀頭の先端までは、約2センチ-2.5センチ前後の長さがあります。手術を考えているFTMトランスセクシュアルは、ホルモン療法を受けているのが普通ですが、男性ホルモンの影響でクリトリスはさらに増大する可能性があります。このクリトリスを覆っている包皮から開放し、ペニスのように立てて、包皮などで周囲を包んで補強します。さらにこの筒の内部に延長した尿道を通して、ペニスの先端から排尿できるようにしたのがミニペニスです。
男性には睾丸が備わっていますが、これも丸いシリコンボールを大陰唇の袋の中に挿入して、小さいながらも男性の性器に類似した性器官ができるのです。
■ミニペニスの有意性
●名前の変更には精神科医のGID診断書があれば問題ないようですが、戸籍上の性別変更は外科的な方法により反対の性別に近似した外観の性器を有している場合には、家庭裁判所もとくに問題視せずスムーズに性別変更ができます。
●晴れて男性として社会生活が送れるようになれば、長年の悩み、苦しみから解放されて、前向きな人生設計が可能になります。
●ミニペニスは短すぎるため、挿入セックスはできないと思ってください。しかし、元のクリトリス性感は維持されるのでいろいろ工夫はできるでしょう。
●性別変更もできるということは、正式に異性と結婚もできるということです。残念ながら、ふたりの間で子供を産むことはできません。
●本格的な陰茎形成とはちがい、ミニペニスでは身体の他の部分からの皮膚移植はありません。そのため目に付く傷跡が一切残らないことは、精神的な負担もやわらげてくれます。
●本格的な陰茎形成法を望む場合には、このミニペニスは無駄にはなりません。クリトリスを含むミニペニスを土台として、さらに尿道を延長して、腹部などからの筋肉皮弁移植により、本格サイズのペニス形成が可能です。
●ミニペニスは本格的陰茎形成のための必要条件ではありません。ミニペニスのままでも、本来の目的だった男性として社会生活を送りたいという望みはかないます。これで精神的な余裕ができて、種々の条件や態勢がととのった段階で、あらためて本格的なペニス形成を目指すというオプションがあるのも大きなメリットでしょう。
●ミニペニスは一回の工程、3時間ほどで終わります。バンコク滞在期間は2週間。したがって、時間と経費の大きな節約になり、望んでいた自分本来の性別で早期に社会に参画することが可能になります。
<包皮から開放されたクリトリス=ミニペニス>

■技術上の問題
尿道形成
女性の尿道はおよそ4cmの長さ、男性の尿道は20cm近くあります。これが肉体的には反対の性を目指すSRSをむずかしくする大きな要因です。SRSを手がける医師のほとんどが、尿道形成が一番やっかいだと認めるでしょう。尿道自体がやわらかい海綿体でできていて、接合がむずかしい。術後の尿漏れや、尿道狭窄という後遺症も起こり得ます。ただ、経験をつんだSRS医師は技術の向上によりこのような問題は最小限におさえていて、再手術を要するようなケースはまれにしかないといえます。
提供される材料に左右される
内視鏡手術やロボット手術など、近年の医学界では技術革新は日常的な話題になっていますが、SRSの世界はすべて医師の手先の技術と経験により磨かれた職人芸のようなものです。CG合成によるシームレスな変身とは無縁の世界です。患者さんから提供された材料を使ってしか手術はできません。したがって、仕上がりも材料の質、大きさ、形体に左右されることは理解しなければなりません。その意味で、過大な、空想的な変身願望は現実的ではないと思います。ベオグラードのペロヴィック医師も「仕上がりは医師の技術よりも、提供される材料に左右される」と述べています。
クリトリスの大きさ
ミニペニスにはクリトリスのサイズが大事な要件になります。というのも、ミニペニスの仕上がりは、提供されたクリトリスという材料に大きく左右されるからです。クリトリスは一年以上の男性ホルモン治療により増大するのが普通ですが、当然ながら個人差があります。2年以上の期間をかけるか、それでも十分でない場合にはとるべき方法はあるようですので、検討してみてください。(*注参照のこと)
同じく、挿入する睾丸インプラントや陰嚢の大きさも、その袋として転用される大陰唇のサイズにより左右されます。小さすぎる袋に大きいインプラントを入れると裂けてしまいます。これは、手術への準備として、大陰唇を指先で引っ張って、皮膚面積を伸張するストレッチ作業を根気よく続けると効果があるでしょう。
手術に完璧はない
夢に描いていたSRSも、終わってみれば結果は現実的です。自分にとってSRSの大事な目的は何か、順番をつけてリストアップしてみてください。目的意識がはっきりするでしょう。
いかなる手術にも完璧はありません。目的意識がはっきりしていれば、そしてその大事な目的が達成されていれば、過大な期待や、失望感からの呪縛から開放され、前向きな人生に向けて前進できるのではないかと思います。いかなる手術にも完璧はありません。これは、全世界の医師からの真摯なメッセージだと思ってください。
*****
*《注》 クリトリスをさらに大きくしたい方には、ヨーロッパ/アメリカなどから入手できる男性ホルモン・ジェル(クリーム)があります。ジヒドロテストステロン(dihydrotestesteron=DHT)配合ホルモン剤で、ペロヴィック医師もこれをクリトリスに塗ると1ヶ月ほどで効果があるとして推薦しています。すでに投与中の男性ホルモンとの関連もあるため、かかりつけの専門医と相談してみてください。
なお、値段の安いバキューム式の吸引器具もあるようですが、これは国内のアダルト系のサイトで探してみてください。
*****
登録:
投稿 (Atom)