2007年1月21日日曜日

MTF手術工程

■MTF手術工程
男性から女性への性転換手術は、陰茎皮膚翻転法による新膣形成手術として以下の通りに行われます。
1. 尿道、前立腺、膀胱、直腸の間に膣のスペースをつくります。
2. 両側の睾丸を切開・切除。
3. 陰茎のディグロービング切開。
4. 尿道を陰茎から分離。
5. 2つの背面神経と脈管をもつ陰茎亀頭を分離する。
6. 陰茎の皮膚を反転し、膣空道の内壁として貼り付けます。(陰嚢の皮を使用する場合もあります。)
7. 有感覚クリトリス成形術
8.尿道形成術
9. 大小陰唇成形術
10.ペニス先端の亀頭部分を神経と脈管を保ったままクリトリスに整形します。この方法により外観はもちろんのこと、感覚の働きも女性のクリトリス同様に機能します。
11.尿道付近の余分な勃起性の組織は取り除きます。そうしなければ、性交渉の際に組織が充血を起こしてしまい、膣の入り口を狭くしてしまうことになります。
12.15センチ以上の深さの膣を必要とする患者の場合は、S字結腸移植の方法をとることがあります。プリチャー医師は、2002年までに数百例を超えるS字結腸移植によるSRS手術を行い、医師・患者双方に満足すべき結果を得ています。

麻酔方法
全身麻酔、又は硬膜外/ら旋状麻酔から選ぶことができますが、通常は全身麻酔です。

手術技法
プリチャー医師は最近のSRSの常識となった陰茎皮膚翻転法、クリトリス感覚再生、陰唇形成、新膣形成、これらすべてをワンステージで、3時間以内で完成するという卓越した手術技法とチームワークを誇っています。手術方法も以下の3種類を患者の身体的条件に合わせて採用しています。
1. 長いペニスの場合(15センチ以上): 陰茎皮膚翻転法(PSI)
2. 普通のペニスの場合(5-15センチ):陰茎皮膚翻転法(PSI)と陰嚢皮膚移植(SSG)の併用
3. 短いペニスの場合(5センチ以下):陰茎皮膚翻転法(PSI)とS字結腸移植(SCG)の併用    
(SSGとSCGを行う場合には、平均して5日以上の入院を要します。)

手術結果
男性から女性への性転換手術はワンステージで行われ、以下のような結果が得られます。 1.有感覚のクリトリス  2.新尿道  3.膣壁  4.大小陰唇  5.12~15センチの新膣(自然膣は11.5センチ)

手術所要時間
2時間半~3時間。
手術がワンステージで、しかも時間が短いことは患者の負担が少なく、血栓症などを併発しないためにも大事な要素です。熟練した医師とサポートチームの連携があってはじめて, 3時間という世界に誇る手術時間が可能になります。手術の翌日にはもうベッドから降りて歩くことができます。

合併症と可能なリスク
1.感染: 一般的には小さい傷口感染だけがみられます。肺機能及び組織感染はありません。
2.傷口の破裂: V字形になっている新膣の会陰先端部が筋肉の緊張のため裂けることがある。傷口の治療だけで十分で、1ヶ月程度で自然治癒する。
3.短い膣: 普通は12~15センチの深さが得られます。術後6ヶ月後までには傷が癒え、弾性により膣が徐々に深くなってゆきます。(もし膣が短すぎる場合は、6ヶ月後にS状結腸を用いて再手術を行うことができます。)
4.直腸膣瘻孔: 膣と直腸の間に穴があくケース。1,000余の手術例の内、3例の発生ケースがありましたが、大事には至らず完治しています。 上記以外の合併症として考えられるのは、尿道膣瘻孔、肺血栓塞栓症、多量出血、重度な感染等が挙げられますが、当PAIではこのような事例は発生しておりません。

後遺症
1.排尿が困難: 尿カテーテルをとりはずした後に時々みられます。短くなった尿道の出口が肥大化しているためで、尿カテーテルの着用をあと数日間延長すると、普通に排尿が出来るようになります。
2.出血: 術後初日に、ガーゼに血がにじみ出ていることがあるかも知れません。これは尿道口の切り口からの出血のせいで、縫合又はリパッキングする必要があります。

回復時間
帰国されるまで最低10~14日間はバンコクに滞在し、術後の回復経過を観察する必要があります。お仕事に復帰するまでには、4~6週間の自宅休養を要します。新膣は通常6週間で機能するようになります。

入院期間
入院治療受諾書に署名して頂き、5日間病院に入院し、術後の回復の様子をみます。その後、ホテルに移るか、または引き続き病院内のホテル階の個室で回復期を過ごすか選ぶことができます。
お支払いの手術費には5日間の個室の入院費と、治療費、術後のケア、薬代などが含まれています。

手術前の準備
1) 手術を受ける14日前から継続的なホルモン治療を中止していること。ホルモン投与を停止することで、血栓症のリスクを減らすことができます。経口錠剤は手術前2週間、注射の場合は4週間前に中止することが必要です。経口抗アンドロゲンは、手術3日前には止めて下さい(注射の場合は、4週間前に)。
2) SRS手術を行う3ヶ月以内に、手術前の健康診断を必ず受けること。医師の診断を受け重度の疾患を罹っていない証明、および以下の血液検査を行ってください。 ・全血球算定(CBC)、エイズ検査、空腹時血糖(FBS)、クレアチニン、検尿 ・アルカリ フォスファターゼ、胸部レントゲン ・SGOT、LDH、心電図
3) 禁煙すること、そしてアスピリン、イブプロフェン、ビタミンEの服用を止めてください。
4) 性転換手術希望日: Eメールや電話などでPAIの日本人カウンセラーに連絡し詳細を相談してください。手術希望日の1ヶ月前には必ず予約をいれ、旅行日程も相談して決めてください。
5) エイズ検査が陽性の方でも手術は可能ですが、使い捨ての医療器具を使用しますので、30%余分に費用がかかります。
6)性器周辺(ペニスの裏側下方部分)の脱毛を行ってください。肛門の上からスタートして陰嚢の中心部に沿って(幅約5cm)、上方のペニスの根本まで電気脱毛法できれいにしてください。(詳細は日本人カウンセラーと相談してください。)

膣拡張作業(ダイレーション)について
BNH病院から退院されましたら、連絡が可能なホテルにて術後の回復をして頂きます。ホテルでの回復期間中には以下の事に注意して下さい。
1) 膣の拡張は、手術が本当に成功するか否かを左右する大事なことです。もし、拡張がしっかり反応しない場合、手術で確保した膣空間の拘縮がおき、深さが浅くなり、幅が狭まる結果になります。
2) 適切な方法で膣拡張ができないと、結果としては重傷を負うのと同じことになります。膣パッキングをとりはずした後、ダイレーターをゆっくりと真っ直ぐに挿入して拡張する方法を習いますので、よく理解して毎日2回実行してください。
3) 術後一週間ほどは、膣拡張にはにぶい痛みが伴うのが普通で、つらい作業になります。しかし、新しい膣が十分な深さを保ち、数週間後に期待通りに機能するためには絶対避けては通れない課程ですので、膣拡張は患者自身の責任として真剣に取り組んでください。

術後の患部のケア 傷口はシャワーと一緒に抗菌石鹸でやさしく丁寧に洗い落とし、その後トイレの便座に座りながら以下の灌注法/圧注法を行って下さい。
1.膣洗浄液=水1リットルに対しベタダイン溶液30cc (または容器がいっぱいになるまで)
2.膣洗浄シリンジ注入器をしっかり保持しながら奥まで入れ、溶液を絞り出して内部を洗浄します。
3.外部の傷口を乾燥した状態に保ち、コットンボールで患部にベタダイン消毒液を塗布してください。 4.コットン・アプリケーターで抗生物質(軟膏)を患部に塗ってください。もし出血がありましたら、乾いたコットンボールを患部にあて15分程押しつけてください。術後1週間ほどの回復期間中は、膣から出血があるのが普通ですので、1日何回か生理用ナプキン(タンポン)を取り替えてください。

性転換手術から1ヶ月後には、新しい膣にプレマリン・クリーム(卵胞ホルモン)をあてがい始めます。1日2回のプレマリンの使用で、新膣の内壁が徐々にやわらかくなります。この作業は6ヶ月ほど続けるようにしてください。

手術から2ヶ月経過すると、手術前に使っていた女性ホルモンの使用を再開します。その際には、内分泌医師の診察を受け、投薬量の調整の指導を受けます。ホルモン投薬量をいきなり変えますと、情緒不安定を起こす場合もあります。

アフターケア
退院して宿泊先のホテルへお戻りの際、当クリニックの看護師から膣のケアの仕方や薬の服用の説明があります。手術から7日目に一回目の抜糸、12日目には2回目の抜糸が可能で、その後はご自由に帰国することができます。

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