2010年3月1日月曜日
SRSのすべてを語るプリチャー医師
そこが知りたいあなたに、SRSのすべてを語るプリチャー医師
(2月24日付けCNN Asiaの記事より翻訳。記者:リチャード・アーリック)
**********
バンコクの性別適合手術(SRS)で著名な医師が、この複雑な手術の実際を赤裸々に解説してくれた。
サンフランシスコから来た手術希望者モニカ・ワイスさん(29歳)は、PAI(Preecha Aesthetic Institute)のカウンセリングルームで二種類の膣を見比べていた。そこ(ペニス)をくるんでいる皮膚を切り取り裏返して、膣の内側に移植するのです。陰茎皮膚反転法と呼ばれています。ここタイでは約8,000ドルでできます。もうひとつ別の方法があり、大腸の一部を切り離し膣の空洞として利用するものです。この方法は、20,000ドルかかります、とワイスさんが教えてくれる。
「わたしは恐らく大腸膣形成法を選ぶと思います。理由は仕上がりの質がすぐれているからです。合併症も少なくてすみ、長期間の安定した状態が期待できます。また感覚がもっと本物の膣に近いと聞いています。」
ワイスさんはバンコクに来て、Preecha Aesthetic Institute (PAI)のプリチャー・テュートラノン医師の手に、自らの性意識と体の再統合をゆだねることに決めた。プリチャー医師は性転換の手術においてはタイでは最も有名な存在なのです。ワイスさんはラッキーなひとりと言っていいでしょう。性転換という複雑な分野では、男性を女性の体に変えるのは(通常はペニスの皮膚を使い膣壁とする)、比較的に簡単です。一方、女性を男性に変えるのははるかに複雑で困難がともないます。
しかし、プリチャー医師の手にかかると、男性から女性への手術は一日で終わる仕事です。「この30年間で3,500件以上の手術をこなしてきた」と、バンコクの今一番トレンディーな街トンローに新しく完成した(昨年12月)、モダーンなビルの1-3階を占めるPAIクリニックの中で語ってくれた。
ワイスさんがその手術を受ける決心をするとなると、その結果は過去の実績から言ってもまず成功裏に終わるはずである。プリチャー医師の指導下の15人の医師チームの一人が、男性器をメスで削り取り、もう一人が胸にインプラントを挿入する。手術後に生まれ変わった新しい女性は、たいていの場合、男性と性的関係をもつことになり、クライマックスを味わうことができる。手術を受けた患者の約80%が男性と性的関係をもつようになり、残りはいわゆるレズビアンになる。およそ80%の患者がオーガズムを経験することができる。性的クライマックスは年齢やホルモンの使用暦にも左右されることもあるが、とプリチャー医師は付け加えた。
ワイスさんは、性的クライマックスを味わう能力を失うのが心配になることは正直認めている。しかし、すでにその手術を受けた何千人もの人たちと同じように、本来あるべき体を取り戻したいという抑えようのない渇望が、このような心配に打ち勝ち決心する場合が多いのだ。その結果として、プリチャー医師とPAIも十分な利益をあげていることも事実なのである。
コストフレンドリーなタイでの性別適合手術
タイでの手術費用は他の国と比較してコストが安く、それが性転換手術のために多くの外国人がバンコクを選ぶ理由となっている。男性が女性になるためのコストは、術式により9,000ドルから約20,000ドルであるが、男性から女性(MTF)がプリチャー医師の患者の圧倒的な割合を占めている。
女性から男性の患者(FTM)には12,000ドルで出来る、約2.5cmの小さなペニスをつくる方法がある。これには乳房のふくらみを取り、子宮と卵巣の除去も含まれている。もっと長いペニスを希望する場合には、コストが約20,000ドルにまで高くなる。
PAIのビジネスは十分な収益力がある。これは、プリチャー医師のクリニックはほかにも鼻や目の整形、その他脂肪吸引などの多くの美容整形手術を手がけているからである。今年後半にはベトナムのハノイに分院をオープンする計画があり、中東のドバイにも進出することも検討している。
ワイスさんは今年の1月に、男性から女性に変わるための前段階の部分となる手術をプリチャー医師のクリニックで受けた。バンコクで術後の静養をしている彼女は、アメリカで同じ手術をした場合の三分の一の経費、10,000ドルで済んだと言う。これがトランスジェンダー、つまり女、となることが私にとって正しいことかどうか判断するための、最初の後戻りできない行動だったと思います。女性ホルモン治療はもう11年間続けているし、サンフランシスコの友人たちは私をまだ男として付き合っているので、今回の手術により自分がもっと前進し、ほとんどの人が私を女性として認めるようになるのを願って、その日を楽しみにしています。
プリチャー医師チームの外科医がワイスさんの胸にインプラントを挿入し、鼻の整形とその他顔の女性化の手術を行った。本格的に性別適合手術に進み、ペニスを取り去り膣に造りかえるかどうかの決心は、現時点ではお金の問題と、それが私の将来にいい結果をもたらすかどうかの判断にかかっている、とワイスさんは言う。
そう簡単ではない女性から男性へ
パソコンの画面で正視に堪えないような生々しい手術写真を見せながら、プリチャー医師はなぜ女性を男性に変える方がもっとむずかしいか説明してくれた。この手術にありがちな医学的、美容的な問題のために、多くの女性が小さいペニス形成法を選ぶ傾向が強くなっていると言う。
「長いペニスを造るにはとても大がかりな手術が必要となり、また体のあちこちに傷跡を残すことになります。これは、わき腹、腕や太ももからの皮膚移植、皮弁跡です。最近では、小さなペニス、いわゆる「マイクロペニス」を選ぶ患者さんが多くなってきました。通常のやり方はクリトリスを長く伸ばし、2.5cmほどの長さのペニスを造ります。これで患者さんはトイレで立ち位置で小便ができるようになります。また、マスタベーションで自らを性的に刺激することもでき、性的感覚を味わうことは可能なのです。」
「残念ながら2.5cmのペニスでは、挿入による性交は不可能です。短すぎるので挿入は無理ですが、さわったり、こすりあったりすることで、性的快感を楽しむことは可能になります。」
「このマイクロペニスのもうひとつの利点は、体に傷跡が一切残らないことです。本格的なペニス形成の場合と違って、体の他の部分からの皮膚移植が必要ないからです。」
「長いペニスの場合は、皮膚がたくさん必要になります。平均的なサイズ?6インチ(15cm)、8インチ(20cm)も可能ですが、平均としては4インチ(10cm)くらいです。患者さんの希望により決まります。」
ペニスを1インチより長くする場合には、円筒形になるだけの皮膚を移植することが必要になります。これが本物のペニスの役割をするわけですが、感覚はどうしてもにぶいものになります。
「このように再建したペニスには感覚がありません。立って小便することはできます。またペニスをこすり刺激することにより、女性のパートナーを興奮させることができます。シリコン・インプラントを挿入することでペニスに硬さを持たせられるので、挿入性交も可能になります。」
FTM-なぜ外科医のメスの性転換に時間がかかるのか
「もしあなたが女性で男性になりたいなら、何段階にも分かれた手術を経なければなりません。男性から女性の場合のようにワンストップ・ショッピングはないのです。男性から女性なら、2週間の滞在ですべてが終わり、帰国してさらに2週間ほど休養すれば、もうあなたは立派な女性になれるのです」とプリチャー医師は言う。
しかし、女性から男性になるには患者にとってもリスクが増大します。とくに挿入セックスが可能な長いペニスを希望する場合です。「挿入したシリコンがずれて飛び出すこともあり得ます。帰国してからこのような事態になれば、また医師のもとで修復するための旅費など余分な経費がかかります」とプリチャー医師は言う。
タイ政府は最近になり性転換手術に関する法律を改定した。それによると、タイ人の患者は実際に手術を受けるまでに最低1年間は待たなければならない。18歳になる前の性転換手術は完全な違法とみなされ、さらに18歳から20歳までの患者は親の同意を必要とする。
この新しい法律に対応するため、プリチャー医師はタイ人患者の場合は二人の精神科医の診断を求め、資格に適合するか判定してもらう方法をとっている。実際には、女性になりたくてプリチャー医師を頼ってくる患者の大部分は外国人で、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ諸国、中国、日本、韓国、中東、などが占めている。(注2)
**********
(注1)レポーターのリチャード・アーリック氏はサンフランシスコ出身のアメリカ人で、1978年以来外国メディアのためにアジアで取材活動をしており、現在はバンコクを拠点としている。
(注2)外国人の場合は、精神科医のGID診断書、20歳以上、1年以上のホルモン治療、6ヶ月以上の望む性での生活体験、などの要件を満たせばとくに問題はない。
(注3)PAIとSRSに関してもっと詳しく知りたい方は、下記のメールアドレスまでご連絡ください。個々の状況に合わせてできるだけのサポートをいたします。
Email: masa.shimamura@gmail.com
**********
2010年2月27日土曜日
GIDの中1女子に男子制服OK
性同一性障害の中1女子に男子制服認める
2010.2.27 11:15
「教育動向」ニュース(MSN産経ニュースより転載させていただきました)
心と体の性が一致しない性同一性障害と診断された鹿児島県内の公立中学1年の女子生徒(13)について、学校側が4月から男子制服で通学するのを認めたことが分かった。名簿上の性別の扱いや、体育の授業をどうするかなどは今後、生徒や両親の希望を聞きながら対応を検討する。
学校と教委によると、生徒は「セーラー服を着ると頭が痛くなる」と女子の制服を嫌がり、昨年7月に両親が「男子の制服で登校できないか」と相談。学校側は当初認めず、生徒は9月から体操服で通学していたが、今月20日に医療機関で性同一性障害と診断され、学校側が男子の制服着用を認めた。
性同一性障害をめぐっては、兵庫県の小学校が入学当初から男児を女児として受け入れたり、埼玉県の小学校が在学中の2年男児に女児としての通学を認めた例がある。
**********
このような小さな展開が徐々に全国的に広まって、GIDの学童が精神の安定を得て成長していくのを応援したいですね。以前にも言及しましたが、登校拒否児童の中には少なからずGID児童がいるのではと思われます。
2010.2.27 11:15
「教育動向」ニュース(MSN産経ニュースより転載させていただきました)
心と体の性が一致しない性同一性障害と診断された鹿児島県内の公立中学1年の女子生徒(13)について、学校側が4月から男子制服で通学するのを認めたことが分かった。名簿上の性別の扱いや、体育の授業をどうするかなどは今後、生徒や両親の希望を聞きながら対応を検討する。
学校と教委によると、生徒は「セーラー服を着ると頭が痛くなる」と女子の制服を嫌がり、昨年7月に両親が「男子の制服で登校できないか」と相談。学校側は当初認めず、生徒は9月から体操服で通学していたが、今月20日に医療機関で性同一性障害と診断され、学校側が男子の制服着用を認めた。
性同一性障害をめぐっては、兵庫県の小学校が入学当初から男児を女児として受け入れたり、埼玉県の小学校が在学中の2年男児に女児としての通学を認めた例がある。
**********
このような小さな展開が徐々に全国的に広まって、GIDの学童が精神の安定を得て成長していくのを応援したいですね。以前にも言及しましたが、登校拒否児童の中には少なからずGID児童がいるのではと思われます。
2010年2月12日金曜日
GID - 公立小2の男児が女児と認めめらる
小学2年生男子が晴れて女子に--堂々のカムアウト
今日の新聞ネット版ニュースには大変驚きました。と同時に、GIDの重いドアが開かれ、将来への明るい展望が開かれる大きな一歩になる出来事だという気持ちで勇気づけられました。
カムアウトに至るまでのご両親の勇気、医学関係者、学校側の理解と配慮もあり、民主党政権の閣僚なども前向きな取り組みを表明しているので、法的な整備も含めてGIDの諸問題への取り組みが大きな波となって全国的に波及する可能性があるのではという予感がします。まずは、単純に今回の明るいニュースを喜びたいと思います。
以下のサイトに関連記事が載っていますので、まだ読まれていない方のご参考までにリストアップしておきます。
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100212/edc1002121815002-n1.htm
http://mainichi.jp/select/science/news/20100212dde041100029000c.html
http://mainichi.jp/select/science/news/20100212k0000m040102000c.html
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100212k0000m040101000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100212-OYT1T00819.htm
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100114k0000m040045000c.html
http://mainichi.jp/life/health/news/20100212k0000e040026000c.html
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100113k0000m040125000c.html
********** **********
2009年12月22日火曜日
MTF学生は卒業式にスカートはだめよ
「MTF学生は卒業式にスカートはだめよ」
(Bangkok Post 12/22記事より)
**********
タイの大学学長協議会の会合が昨日月曜日に開かれたが、学位が授与される大学の卒業式には男性から女性へのトランスジェンダー自認の学生は、女性の服装で出席することは認めないという決定がなされた。
協議会の議長を務めたチュラロンコーン大学学長のピロム氏によれば、全国23の国立大学(現在は日本と同じ独立行政法人)の学長は、卒業生は普通の制服で出席すべきであり、従来からの規則を変更はしないことに同意した。これは、トランスジェンダー団体から大学当局に対して、性転換症を自認する卒業生には女性の服装での出席を認めるよう要望が出されていたからである。
ピロム氏によれば、教室での授業には服装の自由は認めているが、卒業式で学位を受領するには式典にふさわしい服装をして、社会の秩序に敬意を払うべきであるというのが見解である。
「私個人としては、他の学長たちは彼らなりの見解を表明する権利がある、と認識している。チュラロンコーン大学では、大学の品位をそこなわない限りは教室での服装にはあれこれと干渉はしていない。それは、大学も学生たちの権利を尊重しているからです。」
**********
タイの田舎の高校で、トランスジェンダーを自認する生徒のために「男」「女」とは別のトイレを用意したニュースを以前の投稿で紹介しましたが(2008/07/09)、チュラロンコーン大学のような有名大学の方が遅れているのは驚きでした。
このニュースには読者の投稿がかなりありましたが、ご参考までに三人の意見だけ紹介しておきます。
● 現在のタイ社会ではジェンダー問題の理解が混乱してきている。この学長の発言にある、「個人の見解の尊重」という言葉にしても、学長にしては幼稚な発言で、多くのタイの若者の間にジェンダー意識の混乱が起こっているのはなぜなのかという問いには問題意識をもっていない。タイではホルモン治療は簡単に受けられるし、若者がまだ自分を理解してない段階で性転換手術を受けてしまう。性転換手術がどういうことなのか、そのもたらす結果を理解できる前に一生を左右する決断をしている現状がある。悲惨ともいえる結末を迎えるケースが数多くあることにもっと焦点をあてるべきだ。
● このような無知な学長たちが教育者であり、思想界のリーダーであることは、タイの将来に希望がないことであり、暗澹たる気分になる。他の国の高等教育機関は、科学分野や社会現象の理解を深めるために、社会を啓蒙する役割を果たしている。タイではその反対である。「他の学長たちは彼らなりの見解を表明する権利がある」というのが、その典型である。トランスジェンダーにとっては、科学的研究と発表されたその成果は、至るところで知ることができる。かれらにとっては、ジェンダー意識の自認や表現は単なる「個人的な見解」なのではないのだ。これら学長がこのような簡単な事実さえ知らずにいるとすれば、由々しき問題である。
● 悲しい現実だが、学長たちはMTFのトランスジェンダーに男の服装をせよというのは、普通の女性に男の服装をせよ、というのと同じことだと理解できていないことだ。タイでは憲法改正の機会があったときに、第三の性を追加しておくべきだった。明らかに、世間にはTSを理解できない人たちがいるが、TS自身は自分の状況は理解しているはずだ。人間の権利として自分の望む服装をする自由があってしかるべきだ。これはまた大学当局による卒業する学生たちの人間性への侮辱でもある。なぜなら、卒業証書を授与されるときに撮られた一枚の写真はその後何年も何年も心のきずとして残るだろうから。
*****
私見ながら、タイの大学と例と同じく日本でもTG/TSが広く理解されているとは思えません。ゲイ、クロスドレサー、ニューハーフ、オカマ、などの言葉がTSとごっちゃまぜで使用されていて、ますます世間一般の理解が混乱してきている感じがします。日本のテレビや雑誌をはじめとするマスコミや、インターネットでもいいかげんな用語が乱用されているのは問題だと思います。
*****
(Bangkok Post 12/22記事より)
**********
タイの大学学長協議会の会合が昨日月曜日に開かれたが、学位が授与される大学の卒業式には男性から女性へのトランスジェンダー自認の学生は、女性の服装で出席することは認めないという決定がなされた。
協議会の議長を務めたチュラロンコーン大学学長のピロム氏によれば、全国23の国立大学(現在は日本と同じ独立行政法人)の学長は、卒業生は普通の制服で出席すべきであり、従来からの規則を変更はしないことに同意した。これは、トランスジェンダー団体から大学当局に対して、性転換症を自認する卒業生には女性の服装での出席を認めるよう要望が出されていたからである。
ピロム氏によれば、教室での授業には服装の自由は認めているが、卒業式で学位を受領するには式典にふさわしい服装をして、社会の秩序に敬意を払うべきであるというのが見解である。
「私個人としては、他の学長たちは彼らなりの見解を表明する権利がある、と認識している。チュラロンコーン大学では、大学の品位をそこなわない限りは教室での服装にはあれこれと干渉はしていない。それは、大学も学生たちの権利を尊重しているからです。」
**********
タイの田舎の高校で、トランスジェンダーを自認する生徒のために「男」「女」とは別のトイレを用意したニュースを以前の投稿で紹介しましたが(2008/07/09)、チュラロンコーン大学のような有名大学の方が遅れているのは驚きでした。
このニュースには読者の投稿がかなりありましたが、ご参考までに三人の意見だけ紹介しておきます。
● 現在のタイ社会ではジェンダー問題の理解が混乱してきている。この学長の発言にある、「個人の見解の尊重」という言葉にしても、学長にしては幼稚な発言で、多くのタイの若者の間にジェンダー意識の混乱が起こっているのはなぜなのかという問いには問題意識をもっていない。タイではホルモン治療は簡単に受けられるし、若者がまだ自分を理解してない段階で性転換手術を受けてしまう。性転換手術がどういうことなのか、そのもたらす結果を理解できる前に一生を左右する決断をしている現状がある。悲惨ともいえる結末を迎えるケースが数多くあることにもっと焦点をあてるべきだ。
● このような無知な学長たちが教育者であり、思想界のリーダーであることは、タイの将来に希望がないことであり、暗澹たる気分になる。他の国の高等教育機関は、科学分野や社会現象の理解を深めるために、社会を啓蒙する役割を果たしている。タイではその反対である。「他の学長たちは彼らなりの見解を表明する権利がある」というのが、その典型である。トランスジェンダーにとっては、科学的研究と発表されたその成果は、至るところで知ることができる。かれらにとっては、ジェンダー意識の自認や表現は単なる「個人的な見解」なのではないのだ。これら学長がこのような簡単な事実さえ知らずにいるとすれば、由々しき問題である。
● 悲しい現実だが、学長たちはMTFのトランスジェンダーに男の服装をせよというのは、普通の女性に男の服装をせよ、というのと同じことだと理解できていないことだ。タイでは憲法改正の機会があったときに、第三の性を追加しておくべきだった。明らかに、世間にはTSを理解できない人たちがいるが、TS自身は自分の状況は理解しているはずだ。人間の権利として自分の望む服装をする自由があってしかるべきだ。これはまた大学当局による卒業する学生たちの人間性への侮辱でもある。なぜなら、卒業証書を授与されるときに撮られた一枚の写真はその後何年も何年も心のきずとして残るだろうから。
*****
私見ながら、タイの大学と例と同じく日本でもTG/TSが広く理解されているとは思えません。ゲイ、クロスドレサー、ニューハーフ、オカマ、などの言葉がTSとごっちゃまぜで使用されていて、ますます世間一般の理解が混乱してきている感じがします。日本のテレビや雑誌をはじめとするマスコミや、インターネットでもいいかげんな用語が乱用されているのは問題だと思います。
*****
2009年9月13日日曜日
タイの性転換の年齢規制
タイの性転換の年齢規制よりきびしく
9月11日のタイの英字紙THE NATIONの記事をご紹介します。
**********
性転換規制11月29日より強化される
タイ医療協議会の理事長ドクター・サンパンが9月11日発表した内容の趣旨は、トランスジェンダーの人が性転換手術を受けるには18歳以上でなければならない、という規則を厳密に適用することにするというものです。
トランスジェンダーで18歳から20歳までの当事者は親の同意が必要であるが、20歳以上なら当事者個人の判断で決めることができる。しかし前提事項として精神科医の診断書、ホルモン治療を受けていること、一年以上女性として生活していることが性転換手術の必要条件になる。
また、性転換手術を行う医師はタイ医療協議会に登録すると同時に、術後の合併症などの治療まで責任をもって行うことが要求される。
このような規制は性転換手術の水準を高めるためであり、規則を破る医師には警告だけにとどまらず、医師免許剥奪などの処置をとることもありうる。
タイトランスジェンダー女性の代表であるヨランダ・スワンヨットさんは、この新しい規制には賛成であるが、内務省、外務省、法務省などの他の関係省庁も関連する法律を改正して、性別を男性から女性に変更できるように法改正を行うべきであると主張している。
「性転換手術を受けたあと書類上の性別がMr.からMissに変更されるようになれば、もっと尊厳をもって女性として生きていくことができる。IDやパスポートを見せるたびに自分が“レディーボーイ”であることを説明しなくてもよくなるのです。普通のひとたちと同じように尊厳をもって生きたいのです」とヨランダさんは言う。

(男性記載のままのIDカードを見せるTS女性たち)
法務局の調査官サームキアット氏は、トランスジェンダーのグループが結束して独立機関である国家人権委員会に、民法、刑法、戸籍、相続法など関連する法律改正にむけて助力を要請するのが早道ではないかと提案している。
サンパン医師も同じ意見で、関係する省庁が“第三の性”の市民のための特別法を制定するように希望していると述べている。
**********
タイでは12歳ごろからホルモン治療を始めるTJも多いため、18歳前にSRSをこっそり済ませてしまうケースがあっても不思議ではないです。今回の年齢規制強化の背景にはそのようなタイの“すべては自己責任で”という、おおらかな社会背景があるように思えます。
07年10月7日の投稿でも取り上げたように、タイでは“レディーボーイ”や“カトーイ”として社会的な認知度は高く、都会、田舎を問わずその存在は一般的に知られていて、とくに差別意識が国民の間にあるようには思えない。しかし、法的な面での整備はまったく行われていないのが実情で、2年前の状況から何も変わっていないようです。性転換手術では世界でも指折りの先進国であり、海外からの手術希望者も多いという反面、タイ国民への人権保護がほとんどされていないというちぐはぐさは、これまたタイ人のおおらかさでしょうか。
とはいうものの、日本でも「性同一性障害者性別取扱特例法」にいたるまでには政治家を巻き込んだ気の長い運動があってやっと特例法ができたことを思うと、タイではまだまだ時間がかかりそうですね。
*****
2009年8月8日土曜日
GID関連の書籍
性同一性障害に関する出版物リスト
性同一性障害については当事者自身が理解を深めることはもちろん大事です。同時に家族や友人、同僚などから理解されることが将来の展開に大きく影響します。だれも一人では生きていけないからです。
手術だけで成功というなら比較的に簡単な話ですが、新しい性の役割でどう社会に適応していくか、など生涯追求していかなければならない大事なテーマもあります。慎重な行動と計画がないと、あとになって周囲の理解不足のため、新たな悩みをかかえることになりかねません。
「性同一性障害」というテーマはよりオープンになり、GID関連の出版物は増えてきています。そこでアマゾンで自動的に追加補充される出版物リストを紹介させて頂く以下の方法を追加しましたので、ときどきチェックして参考にして頂ければ幸いです。
**********
2009年8月3日月曜日
≪できそこないの男たち≫
≪できそこないの男たち≫
以下引用の文は、福岡伸一著「できそこないの男たち」(光文社新書2008年10月刊)、という本のそでにある、ブラーブをそっくりそのまま引用したものです。この本の一読をお薦めしたかったのと、これ以上のブラーブは書けそうもなかったので・・・・
**********
地球が誕生したのが46億年前。そこから最初の生命が発生するまでにおよそ10億年が経過した。そして生命が現れてからさらに10億年、この間、生命の性は単一で、すべてがメスだった。(本文より)
<生命の基本仕様>――それは女である。本来、すべての生物はまずメスとして発生する。メスは太くて強い縦糸であり、オスは、そのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす“使い走り”に過ぎない――。
分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら,≪女と男≫の本当の関係に迫る、あざやかな考察。
**********
この本は性同一性障害とは直接の関連はないですが、メスが生命の基本仕様であるという科学的な実証や、今日の人間の起源がオンナ、オトコともにアフリカの地であったということ。さらになぜ、XX型女性、XY型男性という基本仕様に、性転換症やインターセックスなどの例外が発生するのかなど、この問題に興味をもつ私たちにはたいへん面白い読み物です。世界中の学者がしのぎをけずる遺伝子学的な実証はあとほんの数歩というところまできているようです。分子生物学という分野の学者による、スリルに満ちた面白い読み物です。まだお読みでない方はぜひどうぞ。¥860の価値はあります。
*****
*****
登録:
投稿 (Atom)