2013年12月31日火曜日
アンチ・ゲイ運動推進のミュージカル、学校を巡演する
LGBT関連ニュース (マレーシア)
アンチ・ゲイ運動推進のミュージカル、学校を巡演する
(英国The Guardian紙より、2013年3月28日刊)
アジアでLGBTが法律で有罪扱いを受けている国はシンガポール、マレーシア、インドネシア(一部の州のみ)があります。シンガポール、マレーシアはイギリスの元植民地だった関係でインドの刑法377条に匹敵する法律が独立後56年を経た今も置き土産として厳然として残っています。その結果LGBTコミュニティがどのような扱いをされているか、英国ガーディアン紙の記事によりマレーシアの現状を知ることが出来ます。
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(アンチ・ゲイ推進のミュージカル「異常なる欲望」の一場面)
<記事訳文>
マレーシア政府が後援するミュージカル劇の目的は、若者に対してこのイスラム教国においてレズビアンやゲイ、バイセクシュアル、トランスセクシュアル(LGBT)になることの危険性を警告することにあったのであるが、国をスポンサーとする偏見についての論争が火花を散らす結果を招いており、人種・宗教を異にする国民の間にさらに憎悪感をかきたてる恐れがある。
この「異常な欲望」というミュージカルは3人のLGBT友人同士の行動を追い、騒々しいパーティから麻薬服用のシーンへ、さらにゆきずりのセックスにふける様を見せ、それらの行為が信心ぶかい隣人たちの怒りをかい、イスラムの教義をあらためて教え込まれることになる。罪を悔いる者は許され、悔い改めない者は雷雨に打たれ死ぬことになるというストーリー設定。
このミュージカルの作者で演出も手がけたラーマン・アダム氏(73歳)は、彼のねらいは「若者と親をLGBTの悪い点について教育すること」にあると言う。
「今日のマレーシアでは新聞やその他の情報媒体の記事でLGBTについてあらゆることを読むことができる。LGBTの情報は学校にまで浸透しており子供たちに影響を与えている」と彼は言う。「子供たちは男は女のためにあり、女は男のためにあることをしっかり認識する必要がある。LGBTの集団はおおっぴらにホモセクシュアルの、またはレズビアンのセックスを行っている。今のマレーシアではそんなに深刻ではないが、われわれは行動しなくてはならない、何かしなくてはならない、何か言わなくてはならない。これはいけない事だ、この風潮に従ってはいけないと言わなくてはならない。」
このミュージカルにはマレーシアでも有名なテレビ俳優たちが出演しており、3月の首都クアラルンプールの国立劇場をかわきりに各地の学校や大学、教員養成大学などで巡演公開され参観はすべて無料で提供された。
マレーシアではLGBT反対の公式見解表明はこれが初めてではない。2011年には政府は男子学童の女性化の風潮を是正するためのキャンプを主催したし、昨年には若者のゲイとレズビアンの“症状”を見分けるためのハウツーガイドの作成を承認したのです。
今年になりLGBTの行動を抑制するためのワークショップを開催し、主催者である副教育相のモハメッド・プアド・ザルカシはLGBTを「社会悪」と呼び、「麻薬と同じように危険性の認識不足がLGBTの拡散につながる。」と警告したのです。
作者のアダム氏はミュージカルへのマスコミ報道の反応の多くは好意的であったと言うが、作品の意図する反LGBTメッセージが一部の観客や人権団体の怒りを買い、LGBT者の権利がまだろくに認められていないマレーシアにおいては憎悪感を呼び起こす効果しか生まないのではないかと見られている。
マレーシアでLGBTの権利向上を推進する年一回のフェスティバル「性指向の権利」を主催するS.ティルガ氏は言う、「あのような傷つけるメッセージや誤解を生む内容がLGBTコミュニティへの暴力行為を助長することを非常に恐れている。今までもいろいろな形の暴力行為にさらされており、国家権力による迫害も受けているのです。」
オンライン・アートのポータルサイトの評論のなかでアリア・アリ氏は、このLGBT問題を一方的な狭い見方でしか表現できていないことからも政府がいかに偏狭な偏見でしか理解していないかがよく分かると言う。「政府の言い分に耳を傾けて欲しいなら、政府自身もLGBTコミュニティの言い分を聞く必要がある」と彼女は言う。「LGBTコミュニティには政府がこのミュージカル公演に使ったような豊富な予算はなく、LGBTサイドの主張をのべる機会は限られているのです。」
アダム氏のミュージカルはマレーシア政治のタイミングに合わせて上演された印象がある。総選挙が今年6月までに行われるという政治日程があり、過去60年近くもその地位を守ってきた与党バリサン・ナショナルは、今回はその権力の座を追われる可能性があった。野党党首のアンウォー・イブラヒムは過去15年の間に2回も同性愛者同士の性行為をしたという嫌疑に問われ裁判にかけられていた。イブラヒム氏は政治的な陰謀であると主張して政治生命はなんとかつなぎ留めてきたという背景がある。
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(訳者注)
5月5日の総選挙の結果は、野党は与党の腐敗体質をつき善戦して投票総数の過半数を獲得したものの、州単位の当選者数では与党が過半数を確保し、からくも与党はその地位を守った。日本でもよくあるように、複数の野党が結束して一団となれなかったのが結果的には敗因になった。
なお、マレーシアでは男性同士の性行為は20年の懲役刑。イスラム教のシャリア法が適用される州においては、いかなる同性間の親密な行為にも3年間の懲役が科せられる。
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2013年12月29日日曜日
インドのゲイ・レズビアンはまたもやクロゼットに逆戻り
LGBT関連ニュース(インド)
インドのゲイ・レズビアンはまたもやクロゼットに逆戻り
Bangkok Post – Business News (16 December 2013)
記者: Sanjay Austa
このニュースのちょうど一週間前の台湾での明るいニュースを取り上げた直後に、今度はインドでは時代に逆行する司法判断が最高裁より出されました。LGBTに関する台湾とインドのこの両極端ともいえる司法の扱いが、今後のアジア諸国の社会にどう影響するかも注目して見守りたいと思います。
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<写真> 「僕を逮捕してくれ。誇りをもって犯罪者になろう」ニューデリーでのゲイ活動家たちの植民地時代に逆行する判決に抗議するデモ。
<記事訳文>
インドにおけるゲイの姿を想像しようとした人たちはおそらく撚りあげた髪の毛、肌にイレズミを入れ、ピンクのシャツを着て唄を歌うように媚びた話し方をする、はでな身振り手振りのタイプを想像したにちがいない。
かれらのアイドルといえば、ゲイであることを派手に誇示するロヒート・バル、デヴィッド・エイブラハム、マニシュ・アローラのようなファッションデザイナーと思ったにちがいない。ファッション業界での彼らのカリスマは絶大で、駆け出しのデザイナーにとってはゲイであることは有利であると思われていた。
しかし、ファッションの世界の妖艶さや華やかさとは遠い世界に数百万人のゲイやレズビアンが沈黙のうちに絶望感にうちのめされていたのです。髪の毛を染めることもなく、身体に刺青を入れることもなく、映画の都ボリウッドの典型のようなこれみよがしの気取りなどみじんも見せない人たちの集団のことです。
この人たちは近所にいるごく普通の人たちで、普通の格好をし、普通の仕事をし、どこにもいる中流階級の未来への希望をもっている人たちです。その多くが小さな町や村に住み、自らの正体は明らかにすることなく生活していました。そのような時代の2009年にデリー高等裁判所が刑法377条への判断をくだして同性愛を無罪とする判決を宣告し、このようなサイレントマジョリティの人たちは自分たちの声を取り戻すことになったのです。
ゲイであることはもはや犯罪行為ではなくなったのです。かれらの肩の重荷がスーッと消え去ったのです。刑法377条は英国のマコ―レイ卿が1861年に起草した植民地施行法令で、同性愛を自然の法則に反する不純な性行為とみなして処罰の対象としたのです。
しかし、今年2013年の12月11日、最高裁判所は何百万人というゲイの男性と女性をクロゼットに押し戻す判決を下しました。デリー高等裁判所の判断をくつがえしてホモセクシュアルの行為を再び犯罪行為と裁定したのです。
5000万人以上といわれるインドの同性愛者たちはふたたび犯罪者として断罪されるのです。この裁定は多くの人々にショックを与え、自発的な抗議の声がオンラインとオフラインを問わず国中に湧き上がりました。
抗議の声はなぜこの世界最大の民主主義国において、合意する大人同士がプライベートな空間で何をしていいのかも自分で決められないのか、という一点です。インドは乳母の世話にならなければやっていけない国になろうとするのか?
インドのイメージそのものが時代に逆行するこのような判決により傷ついている。「今日という日は偏見と人権無視の記念日である」、と著名な作家で自身もゲイであるヴィクラム・セスは言う。
しかし、薄暗いクロゼットからやっと出られて社会の中間層で目立たなく生きていたゲイの男女にとっては、今回の判決の与える影響は計り知れない。
「判決を聞いた時には声をあげて泣きたかった」と29歳の映画制作者のシュレ・二クは言う。「私の場合は母親に同性愛とはどういうものか納得してもらうのに本当に苦労しただけに、家族もやっと私の悩みを理解しはじめた時に今回の判決が出されたのは衝撃でした。とつぜん私は犯罪者の仲間です。この判決は時代が200年も逆戻りしたも同然です。」
調査研究学徒である29歳のワリッドの場合はもっと運が悪かった。彼の家族は彼の考え方を理解しようとする態度を一度も示したことがなかった。父親はもしふたたび彼が同性愛の話をもちだしたら、刺し殺してやるとさえ面と向かって言う始末。今回の最高裁の判断は家族の立場をいっそう強固なものにし、「だから言っただろう!」という態度をこれみよがしに示すようになっている。
「私の父親は私が同性愛者であるよりは死んだ方がよい。われ等の宗教は同性愛を認めていないし、それだけ言えば十分だろう」と父親からはっきり言われたとワリッドは言う。
今回の最高裁の判断は警察にもLGBTコミュニティに対して脅しやゆすりの口実を与える絶好の機会を提供するだけだとワリッドは思っている。「ゲイ仲間同士が集まることやパーティを開くことは、警官に捕まるリスクの覚悟なしにはもうできなくなる。いったん捕まればどんな言い訳をしようとも賄賂の要求から逃れられないだろう」とワリッドは言う。
30歳のビジネスマンであるアンシュ・タクールも同じ意見である。彼も友人から警察がかぎつけて捕まえに来ないように今のうちからゲイのウェブサイトから名前を消した方がよいとアドバイスされたという。「今では自分の安全が脅かされていると感じる。もし自分がパートナーと一緒にいて手をにぎっていれば刑法377条により罪に問われかねない。デリー高等裁判所の判決のあと我々が抱いていた明るい希望はすべて死んでしまった。」と彼は言う。
アンシュもまた自分の同性愛について家族を説得するには苦労した経験がある。「うれしいことに家族は私のことを愛してくれており、今では自由にさしてくれている。同性愛についてはもう話題にしなくなった。心の奥では私がいつかストレートになって女性と結婚し、私のために用意してくれていた生活を送ってほしいと願っているのではないかと思う。今回の最高裁判決は家族を前にして再び私の身の置き所がなくなった気がしてしょうがありません。」とアンシュは言う。
デリーの学生のサンバーヴ・カアリアはボーイフレンドと一緒にスペインに移住したいと数年前に両親に打ち明けたことがある。その時は両親は彼がインドに留まることを望んだが、今度の判決を聞いた後では二人のスペインへの移住には同意すると言っている。
「この判決のニュースを聞いてすぐ私の頭をよぎった想像は、大勢の若いLGBTの人たちが毎日のように自殺するイメージです。それは大都会だけでなく、このような法律の格好の餌食になっていた小さな地方の町に生きる若いひとたちです」とサンバーヴは言う。
28歳のスミロンは女性のスポーツ心理学者で、もう長年にわたって自身の結婚のことについてはのらりくらりと結論をひきのばしにしてきたが、母親は結婚すれば彼女の「症状が治る」のではないかと期待しているようだ。今回の判決が出てからは結婚の問題はもうこれ以上先延ばしにはできないと感じているとスミロンは打ち明ける。
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<訳者コメント>
台湾の明るいニュースの直後だったので、このインドのニュースは衝撃的です。もう20年ほど前のことですが、2年にわたり4回ほどインド各地を旅行した経験があるので、あの悠久の大地のはかり知れない磁石のような力がそう簡単には人間を開放してくれないのか、と思いたくなります。
その偏見の根幹はやはりヒンズー教、イスラム教などの宗教です。自由の国アメリカでさえ同性婚を認める州の数はじょじょに増えてはいるものの、州単位の地方分権という政治形態に救われているだけで、カトリックを先頭とするキリスト教の教義をかたくなに守ろうとする団体や個人は少なくありません。アメリカですらLGBTは未だに偏見と誤解と無理解に翻弄されているのです。
日本は特定の宗教にこだわりを持たない世界でもユニークな国です。あらゆる宗教をのみ込むおおらかさがあり、宗教的偏見が個人の自由や人権を侵すというケースは狂信的な小さな教団をのぞいてはごくまれです。
LGBTは先天的にそなわった性指向によるもので、時代背景や社会的な影響とは関係なく個人のなかに顕在化してくるものです。社会的、法的差別の対象になるいわれはないのです。該当する個々人の人権を尊重し社会的に不利益な扱いをなくすという目的を明確にした政治的な判断と政治家の参画があれば、関連する法律を改定してLGBT者がもっと自由に生きられる環境が実現する日が必ずくるだろうという気がしてなりません。
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2013年12月26日木曜日
台湾で手術なしでも法的性別変更が可能になる
TG/TS関連ニュース(台湾)
台湾で手術なしでも法的性別変更が可能になる
(GAY STAR NEWS, by Derek Yiu; 2013年12月9日記事より翻訳)
TSやIS当事者には選択の自由が大きく広がる画期的判断
台湾の衛生福利部(省に相当)は手術等による肉体的性別変更過程を経なくても
法的性別の変更が可能とする判断をくだした。
12月9日に3時間におよぶ白熱した議論の末、衛生福利部は法的性別を
変更したいと意図する個人は、精神科医の診断を含むいかなる医学的
処置を経なくてもそれが可能とするべきであるという結論に達した。
トランスジェンダーとインターセックス当事者のコミュニティーはこの決定を両者
の要求を共に満たすものとして歓迎の意を表明した。
現行の医学的評価過程では医師は患者の両親に面接しなくてはならず、両親に与えられている拒否権が多くの成人した子供の当事者にとっては悪夢となっていたという一面が想起される。
今までもうひとつの障害となって立ちはだかっていた内務省は、さらなる検証と議論を経たのちに、この新しい判断を実施に移すための関連規則やその詳細を煮詰める作業に入ることになる。
内政部(内務省)の管轄する戸籍登記制度は国民のあらゆる法的文書とリンクしており、出生時に登記された性別を変更するためには他の法的文書も変更しなくてはならない、とインターセックス者の権利活動家のハイカー・チュウ氏は本紙に語った。
内政部の現行の規則では、該当する個人は二人の精神科医の承認を経て性別変更に進むことができる。さらに新しい性を獲得するためには当該性別に関連するすべての肉体器官を外科的処置により切除することが要求されている。
(性別変更のために行われる)強制的な手術は多くの当事者にとっては拷問以外の何ものでもない、というのが今日の議論でも明らかにされた論点であった。
「ジェンダー認識はつねに一個の個人の問題に帰着するものです。これは内政部がまた新たに一から学ばなければならない問題です」、とチュウ氏は言う。
ある女性が出生時に間違って男子として登録されたため36年間も差別に苦しめられたが、きびしい法規則が存在したため何もできなかったという女性のことをチュウ氏は語ってくれた。
性転換後に自殺した二件の例をあげて精神科医による診断評価が大事だと主張する医師がいる一方で、性転換後の社会への適応困難という問題はむしろ社会問題として捉えるべきではないかと活動家は討論の中でその見解を述べている。
精神科医の診断評価と性転換手術という二つの要求項目のためと、それに関わる金銭上および肉体的な制約があるために、トランス当事者が望む法的なジェンダーを獲得する妨げになっているのが問題ではないか、と活動家は言う。
昨年のことながらアルゼンチンが世界で始めて、成人ならなんらの手術や医師の承認なしに法的に自分のジェンダーを変更できる国となったことは特筆に値するでしょう。
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GAYSTARNEWS読者のコメント:
台湾よ、よくやった!法的なジェンダーの承認を人質にとって必要もない、また望まない精神科医に送り込むのは重大な人権侵害です。これを終わらせた台湾によくやったと言いたい。(Holly)
台湾よ、おめでとう!愛を込めて。(Garry Forester)
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訳者・投稿者のコメント:
アジア諸国では始めての画期的な政治的判断です。衛生福利部と内政部との法制化の整備が今後順調に進むことを祈ります。
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