2011年6月1日水曜日

イスラム教国マレーシアのTSの現状

マレーシアのトランスセクシュアルの話題

今マレーシアに滞在しています。イスラムを国教とする国ですが、中近東などと違い包容力のある政策で他宗教にも寛大で、キリスト教、ヒンズー教、仏教なども認められています。現時点の国民の構成は、マレー系59%、中国系32%、インド系9%という構成になっている。
ただマレー系の人々はまず全員がイスラム教徒であることが原則で、イスラムの戒律を守ることが要求されている。

イスラムでは豚肉はご法度なので、ホテルなどではソーセージやハムもチキンか牛肉で、ぱさぱさしておいしくない。ほとんどのフードコート(食堂街)でもさまざまな料理が注文できるが豚肉だけは出てこない。中華料理のレストランなら豚肉も問題なく食べられる。そこにはイスラム教徒は近寄らないからである。

イスラム教徒も男性は普段着では区別がつかないが、女性はまず全員がヘッドスカーフをかぶっているので遠くからでも識別できる。暑い気候なのに長袖とジーンズやくるぶしの隠れる長いワンピース姿が普通。スカーフは色やデザインはとりどりで、衣服のファッションのコーディネートを楽しんでいるのは見ていても心が華やいでくる。

マレーシアではイスラム系の女性の社会進出は活発で、サウジアラビアのように女性の運転は禁止などという戒律はなく、街の風景もカラフルで、女性のファッションが目を楽しませてくれる。

人種や文化が違っても世界中のどこの国にもトランスセクシュアルは存在する。イスラム諸国では表立っては認められていないが、TSや同性愛などイスラムの認めない性指向をもつ人たちの存在は否定のしようがない。ただ社会的には表立って話題になることが少ないのは隣国タイなどとの違いである。それだけに当事者にとっては理解してくれる味方が少なく、孤立した環境におかれているのは大いに同情に値する。

今回クアラルンプールへに着いた日の英字新聞に、珍しくトランスセクシュアルの記事があったので以下にご紹介しておきます。

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Helping transsexuals blend into society (New Straits Times, 28th May 2011)
トランスセクシュアルが社会に溶け込むために


マレーシアの東海岸パハン州のクアンタン市は南シナ海に面するリゾート地として有名なところです。ここのリゾートホテルのセミナー会場に集まってくるデザイナーバッグを携えて颯爽としたみなりの女性たち、立ち止まった人たちの目が追いかけます。

ただこの女性たちは見世物的なイベントやひんしゅくを買うような目的のために集まったのではありません。30歳から40歳台の30人のこのグループが集まった目的は、ここでの4日間のセミナーでこれからの人生の目標とモチベーション向上を図り、自らの暮らしと人生の充実を目指す手がかりをつかむことです。

”プリティウーマン”と言われてもおかしくないような人は美容師やドレスの縫製などの仕事で生計を立てているものの、家族から疎外され社会からは横目でみられる人たちの行き着く場所は夜の世界しかないのが現実です。

このセミナーではいろいろなキャリア向上プログラムや人生を新たに始めたい人のためのプログラムに加えて、健康管理や道徳問題にも時間をさいている。

午前中いっぱい真剣な課題に取り組んだあとは、参加者たちはファッショナブルなアクセサリーや衣服からスポーツ着に着替えて、チームで行動する野外プログラムに参加する。その中には3時間のジャングルトレッキングもある。

参加者の一人ララ(仮名)はジョホールバル市出身で、彼女の言いうにはこのセミナーは眼からうろこが取れる新鮮なもので、TSコミュニティーの他の人たちにもぜひ広めてもらいたい、とこのセミナーの意義を高く評価している。

「私たちはいつも差別されていると感じています。自分の家族は現実を受け入れる心の用意ができていても、周辺の人々はやはり受け入れを拒む態度なので、私たちは透明人間のように感じながら生きています。このようなプログラムの助けがあればもっといい将来を期待することができます。」

ララは現在はドレスの縫製で生計を立てているが、地域社会の偏見のため彼女と同じ立場の人たちが職場を見つけるのは容易ではないと言う。

「私たちの中には大学卒もいるが、悲しいことに社会が拒むため仕事を見つけるのはむずかしく、そのうちに夜の世界に吹き寄せられてそこしか居場所がない人が多いのです。」

アンパン出身でフリーランスの美容師をしているジム(仮名)は言う。「このようなプログラムがもっとあれば、国内のトランスセクシュアルたちが日ごろから抱いている社会に出る恐怖憾に打ち勝つ助けになると思います。また、このようなプログラムは同じような境遇にいるトランスセクシュアルと知り合い助け合ういい機会になります。」

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(注1)この新聞記事では、インタビューされたLara(女性名)は、文面ではheと男性として扱われている。もう一人のJimは男性名なので違和感はない。イスラム教国家であるマレーシアでも性的マイノリティが存在することは知られているが、公には認知されていないため、たとえSRSを済ませても性別変更はできない。

(注2)イスラム教国家ではSRSを行う病院は存在しないので、手術をする場合は隣国のタイかシンガポールということになる。手術費と滞在費用を考えると、SRSまで踏み込めるTSは多くないと推測される。このセミナーの参加者の中にはまだSRSを済ませていないTSがかなりの割合で混じっているのではないかと思われます。

(注3)このセミナーは政府機関であるイスラム開発局やマレーシア・エイズ協議会など4団体の主催で行われたものです。

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