2009年12月22日火曜日

MTF学生は卒業式にスカートはだめよ

「MTF学生は卒業式にスカートはだめよ」
     (Bangkok Post 12/22記事より)

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タイの大学学長協議会の会合が昨日月曜日に開かれたが、学位が授与される大学の卒業式には男性から女性へのトランスジェンダー自認の学生は、女性の服装で出席することは認めないという決定がなされた。

協議会の議長を務めたチュラロンコーン大学学長のピロム氏によれば、全国23の国立大学(現在は日本と同じ独立行政法人)の学長は、卒業生は普通の制服で出席すべきであり、従来からの規則を変更はしないことに同意した。これは、トランスジェンダー団体から大学当局に対して、性転換症を自認する卒業生には女性の服装での出席を認めるよう要望が出されていたからである。

ピロム氏によれば、教室での授業には服装の自由は認めているが、卒業式で学位を受領するには式典にふさわしい服装をして、社会の秩序に敬意を払うべきであるというのが見解である。

「私個人としては、他の学長たちは彼らなりの見解を表明する権利がある、と認識している。チュラロンコーン大学では、大学の品位をそこなわない限りは教室での服装にはあれこれと干渉はしていない。それは、大学も学生たちの権利を尊重しているからです。」

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タイの田舎の高校で、トランスジェンダーを自認する生徒のために「男」「女」とは別のトイレを用意したニュースを以前の投稿で紹介しましたが(2008/07/09)、チュラロンコーン大学のような有名大学の方が遅れているのは驚きでした。

このニュースには読者の投稿がかなりありましたが、ご参考までに三人の意見だけ紹介しておきます。

● 現在のタイ社会ではジェンダー問題の理解が混乱してきている。この学長の発言にある、「個人の見解の尊重」という言葉にしても、学長にしては幼稚な発言で、多くのタイの若者の間にジェンダー意識の混乱が起こっているのはなぜなのかという問いには問題意識をもっていない。タイではホルモン治療は簡単に受けられるし、若者がまだ自分を理解してない段階で性転換手術を受けてしまう。性転換手術がどういうことなのか、そのもたらす結果を理解できる前に一生を左右する決断をしている現状がある。悲惨ともいえる結末を迎えるケースが数多くあることにもっと焦点をあてるべきだ。

● このような無知な学長たちが教育者であり、思想界のリーダーであることは、タイの将来に希望がないことであり、暗澹たる気分になる。他の国の高等教育機関は、科学分野や社会現象の理解を深めるために、社会を啓蒙する役割を果たしている。タイではその反対である。「他の学長たちは彼らなりの見解を表明する権利がある」というのが、その典型である。トランスジェンダーにとっては、科学的研究と発表されたその成果は、至るところで知ることができる。かれらにとっては、ジェンダー意識の自認や表現は単なる「個人的な見解」なのではないのだ。これら学長がこのような簡単な事実さえ知らずにいるとすれば、由々しき問題である。

● 悲しい現実だが、学長たちはMTFのトランスジェンダーに男の服装をせよというのは、普通の女性に男の服装をせよ、というのと同じことだと理解できていないことだ。タイでは憲法改正の機会があったときに、第三の性を追加しておくべきだった。明らかに、世間にはTSを理解できない人たちがいるが、TS自身は自分の状況は理解しているはずだ。人間の権利として自分の望む服装をする自由があってしかるべきだ。これはまた大学当局による卒業する学生たちの人間性への侮辱でもある。なぜなら、卒業証書を授与されるときに撮られた一枚の写真はその後何年も何年も心のきずとして残るだろうから。

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私見ながら、タイの大学と例と同じく日本でもTG/TSが広く理解されているとは思えません。ゲイ、クロスドレサー、ニューハーフ、オカマ、などの言葉がTSとごっちゃまぜで使用されていて、ますます世間一般の理解が混乱してきている感じがします。日本のテレビや雑誌をはじめとするマスコミや、インターネットでもいいかげんな用語が乱用されているのは問題だと思います。

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