2009年7月20日月曜日
アメリカのGIDニュース (その3)
<PEOPLE誌の記事・性転換の途上にあるチャスティティ・ボノ>
FTMが詳細に取り上げられる機会は少ないので、有名な芸能誌「ピープル」の記事もご紹介します。
(2009年6月11日。Chastity Bono Undergoing Sex Change)
エンターテイナーのシェールと故ソニー・ボノとの間にできた一人っ子であり、政治的・社会的アクティビストとして知られるチャスティティ・ボノ(通称チャズ)は今年になり40歳を迎えて間もなく、性転換を進めていることを発表した。
友人が「ピープル」誌に語ったところでは、母親のシェールは「本人が長い間望んでいたことは知っていた。長期間に及ぶプロセスなので積極的にサポートしてあげたい」と言っている。
ボノの代理人であるハワード・ブラグマンも、「チャズのことは本当です。チャズも長年悩み考えた結果として、自分の本当の性自認に正直に生きていきたいと勇気をだして決心したのです。」
「彼は自分の決心に誇りを感じており、また彼の愛する周囲の人たちから示されたサポートと尊敬の意に感謝したいと言っています。20年前に最初にカムアウト(レズビアンとして)した時と同じように、今回のトランジションがこのような問題に関する社会一般のひとびとの受容度と寛大さを呼び起こすきっかけになれば、と願っています。」
1998年の「ピープル」誌の記事によると、チャスティティ・ボノは、自分のケースも含め、若者のゲイたちの生活の実像を集めた“Family Outing”という本を出版したばかりであった。その本ではカムアウトしてゲイの性行動をオープンに語ることで得るものと、思わぬ落とし穴についての実例が報告されていた。1987年ニューヨーク大学1年のときに、両親に自分がゲイ(この場合はレズビアンのことを指す)であることを打ち明けたが、父親のソニーは冷静に受け止めたものの、母のシェールは全く逆であった。
<1998年。母のシェールと一緒に>
「私は動転して頭が真っ白になった。それまでは、彼女が結婚して子供を産み、家族を育てるようになることを夢見ていたからです。」とシェールはピープル誌に語っている。シェール自身も1983年の映画「Silkwood」で同性愛の女性の役を演じて評判になっていて、熱烈なファンには同性愛の女性が多かっただけに、余計に動揺したシェールは娘をニューヨークのアパートから追い出してしまった。チャスティティもロックシンガーとして活動するために大学を中退し、同性愛の女性であることは秘密にすることに決めていた。
ところが、事はうまくは運ばなかった。1990年に自分のロックバンドとともに歌手として売り出す直前に、週刊タブロイド紙が彼女がレズビアンであることをすっぱ抜いてしまったのだ。レポーターに囲まれた彼女は、ゲイコミュニティーの仲間がタブロイド紙にたれこんだのを知り愕然とする。
「それまでの人生でもっとも傷ついた出来事でした」と1998年になって述懐している。「どこに向かうかも知らず大海をただよう小舟のよう、自宅にこもりブラインドを降ろし、生きている実感を失ってしまったのです。」
1992年になると、20歳も年上のジョーンという女性と親密な関係になったが、これも悲劇的な結末を迎えることになる。ジョーンが悪性リンパ腫という難病にかかり、闘病の果てに1994年に死去したのだ。翌1995年になると、失意のボノは意を決してゲイ活動に身を投じ、ゲイ雑誌「The Advocate」の表紙の写真を飾ると同時にカムアウト宣言した。そして、ゲイ・レズビアン権利保護同盟(GLAAD)の中心的な地位につくことになった。
ボノの同性愛者としての公然活動は両親との関係修復にもなり、母のシェールは娘の活動に誇りを感じるようになり、「初めて私の全人格を見てくれるようになりました」とボノも認めている。ところが、母とは離婚していた父親のソニーの方は共和党の政治家になっており、同性愛者の結婚などを認めない共和党の政策に同調せざるを得ない立場にあった。「個人的には私を受け入れてくれましたが、政策的にはノーでした。父には直接には言いませんでしたが、私は心では怒りを感じていました。」(この後ソニー・ボノはスキー中の事故で1998年に死亡してしまう。)
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他にもゲイ運動関係者からのコメントがありますので、以下にその一部をご紹介します。
「トランスジェンダーとしてカムアウトするのは極めて個人的な決心であり、決して軽い気持ちでできるものではない。近いうちにチャズの口から彼自身の言葉を聞くことが出来るよう期待しています。」
とGLAADの会長のニール・ジウリアーノが言う。
「性行動の方向性を転換するトランジションは、通常はホルモン治療から始め、時には外科的方法で性転換する場合もある。人によっては医学的なトランジションである場合もあり、単に社会的なトランスである場合もあるが、多くの当事者にとっては両方とも必要になることが多い。」と言うのはLGBTコミュニティーセンターのキャリー・デイビスである。
いろいろなメディアで未確認の情報が飛びかっているようですが、チャズは昨年6月ごろからトランジションを初めており、来年には終える予定だ、という記事もあった。ということは、SRS手術によるトランジションを完成するのが目的のように思えます。あとは成功を祈るばかりです。グッドラック!
<トランス途上のチャズ・ボノの近影>
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〔注〕チャスティティ・ボノに関しては、CNNの続報がありました。トランジションに成功したFTMの先輩からのアドバイスの投稿ですが、これも参考になる内容を含んでいるので次回の投稿でご紹介します。
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