2007年2月2日金曜日

性同一性障害(GID)用語集

一般的に使われている性同一性障害(GID)に関連する用語を集めたものです。もっと深く掘り下げる必要のある項目は、別の形で取り上げていきたいと思っております。

性同一性障害(GID)/Gender Identity Disorder
身体の性別(sex)と感性の性別(gender)の間に違和感があり、その違和感に堪えきれないほど悩むという障害をいう。精神病でもなく、いわゆる病気の範疇には入らないが、近い将来健康保険適用になることも視野に入れて、精神医学分野の疾患と認定されるようになった。幼児期から違和感をもつケースが多いが、人により成人してから本格的に悩む人もいる。  

性別適合手術/Sex Reassingment Surgery(SRS)
一般的には「性転換手術」と呼ばれているが、趣味や好みで人為的な手術で性別を転換するイメージがあり適切とは言い難いが、「性転換手術」はもう通称となってしまっているので通りやすい名称ではある。また「性別再判定手術」という訳語を使う人もあるが、「判定」という訳語がどうもしっくりこない。
英語の名称からは「性別再指定手術」が一番原語の意義に近い。また頭の感性とは違う形で備わっている性器官を外科的手術により本来の姿に戻し再指定するという意味であり、一番ふさわしいと名称と思われる。しかし、法的な用語としてすでに「性別適合手術」が用いられている現状では、性別適合手術に統一することにした方がよいのではと思います。また参考までに、性自認に身体を合わせる手術という意味で、Gender Reassignment Surgery(GRS)を好む医師もおります。

HBIGDA(Harry Benjamin International Gender Dysphoria Association)
「ハリー・ベンジャミン国際性違和協会」の略語。アメリカの性科学者ハリー・ベンジャミン博士が1966年に作成・出版した「性転換手術の適用のための指標と基準 (Standards of Care)」が、世界中の性転換手術のバイブル的な指針になっている。現在はその第6版まで出版されており、HBIGDA世界総会が毎年どこかの国で開催されている。

MTF (Male to Female)
身体は男性だが感性は女性であるというGIDのケース。正確な統計はないものの、GID患者のおよそ3分の2がMTFであるといわれている。

FTM (Female to Male)
身体は女性だが感性は男性であるというGIDのケース。GID患者のおよそ3分の1がFTMといわれている。

性指向
恋愛や性欲の対象となる相手の性別を指す言葉。相手が異性なら異性愛者(ヘテロセクシュアル)、同性なら同性愛者(ホモセクシュアル、またはゲイ)、男女両方に向けられる場合には両性愛者(バイセクシュアル)と呼ばれる。性同一性障害者の性指向も個人により様々であり、いろいろなケースがあり得ることを理解する必要がある。

性自認
自分が男性である、または女性である、と自分の性別をはっきり認識していること。好きになる相手が異性か同性かは性指向の問題であり、自分の身体と性自認に食い違いがあるのが性同一性障害(GID)である。

セックス/Sex
肉体的な性別のことを指し、性腺の区別や内性器・外性器などを総合して男性と女性に区別される。男性・女性と明確に区別できない場合もあり、性別判定が困難なケースは間性・半陰陽(インターセックス)と呼ばれる。俗っぽく言えば「セックスとは両股の間にあるもの、ジェンダーとは両耳の間にあるもの」。

ジェンダー/Gender
自分の頭や感性で感じている性別のことを指し、狭義には性自認と同じ意味。ただ肉体的な性別よりは社会的、文化的な広がりをもつ言葉として使われることが多い。

同性愛者/Homosexual
同性愛者は身体の性と性自認が一致しており、男性が男性を好きになり、女性が女性を好む、という性指向の状態を指すので、身体と精神の間の違和感や悩みはない。ここが性同一性障害との大きな違いである。一方、身体の性と性自認の違和感に悩む性同一性障害者の場合で、身体の性が「男」でありながら自分を「女」と自認する人が、女性を恋愛の対象にする場合もあり、これも「同性愛」ということになる。

ホルモン療法
身体と精神の違和感をやわらげ、精神的苦痛を軽減するために用いるホルモン療法で、女性化を求める人は女性ホルモン、男性化を求める人は男性ホルモンを使用する療法。SRSに進む前に1年間は続けていなければならない。

リアルライフ・テスト/Real Life Test (RLT)
とくに制度化されたものではないが、自分の求める性において実際に生活して、周囲に違和感を与えず、また自分でもその性になって生活していけるという自信を養うための実生活体験過程をいう。SRSを済ませた後で社会的に受け入れられないと、職場においても私生活においても困難な状況に追い込まれる危険性があるため、この体験過程を軽視してはならない。

カムアウト/Coming Out
同性愛者が自分の性指向を周囲の人に正直に告白して、それまで閉じこもっていた押入から外に出る(coming out of the closet)ことを指す言葉として使われ始め、それがGIDの場合にも同様の意味で使われるようになっている。

パス/Pass/Passing
自分の望む性で生活して、周囲に違和感を与えず社会的に通用することを指す。MTFの場合なら、元の男性ではなく女性と見られ、MTFの男性だとは思われないこと。つまり、FTMなら男性として、またはMTFなら女性として社会的に通用するという意味で使われる。

トランスセクシュアル/Transsexual (TS)
性同一性障害者で、外科的な手術を経て別の性として生きたいと強く望む人を指す。手術前の人の場合は「pre-opTS」,手術後の場合を「post-opTS」と呼ぶ。

トランスジェンダー/Transgender (TG)
性的違和感をもって生きている人で、反対の性での生活を望みながらも、外科手術にまで進むことは希望しない人のことを指す。広い意味では、「トランスセクシュアル」、「トランスヴェスタイト」も含む総称として使われる。

トランスヴェスタイト/Transvestite (TV)
女装者と男装者を含む異性装者のことをいう。精神医学的には、異性装者には身体と感性の性別違和感がなく趣味で異性装を楽しむケースもあり、この人たちはGIDとは区別される。反面、異性装をすることにより性別違和感の解消を図っている性同一性障害者や、リアルライフ・テストの過程で異性装する性同一性障害者もいるので、この両者は混同されやすい。

クロスドレサー/Cross Dresser (CD)
男と女の区別を乗り越えた異性装者のことで、トランスヴェスタイトと同じ意味で使われている言葉。

インターセックス(IS)
「間性」「半陰陽」と呼ばれる、性腺・外性器などの身体の性別が明確に判定できない人々を総称する言葉。インターセックス児が生まれた場合にどちらかの性に判定し、養育上の性に合わせて内・外性器を切除・形成する方法が取られてきた。しかし近年になり、成長するにつれ養育上の性と本人の性自認が一致しないケースが報告されるようになり、世界的に治療方針の見直しがせまられている。

ゲイ/レズビアン (Gay/Lesbian)
通常ゲイは男性の同性愛者、レズビアンは女性の同性愛者を指すが、英語文化圏では「ゲイ」という言葉は両者をひっくるめて言う場合が多い。(例: She is gay.)

クィア/Queer
もともと「変態」の意味をもつ「ゲイ」に対する蔑称であるが、性の多様性を認める社会的風潮が広まった現在では、権利主張の道具として堂々と使用されるようになっている。

シーメイル/Shemale
女性の象徴である発達した乳房と、男性の象徴である大人のペニスの両方を備え持つ人のことを指す。普通は風俗産業で、その特徴を誇示するケースが多い。

ニューハーフ
和製の英語で日本でしか通用しない言葉。タイなどでは「レディーボーイ」、タイ語では「カトーイ」と呼ばれている。男性から女性に性転換した人で、芸能産業や風俗産業に従事する人が多い。中には職業上の必要性のため単に女装しただけの男性もいることがある。

オカマ/オナベ
「オカマ」は女装した男性や、女性的な振る舞いをする男性に対する俗称だが、男性同性愛者のことを指すことが多い。蔑称としてのニュアンスが強いので、当事者にとっては「ゲイ」の方がもっと響きの良い言葉と思われる。「オナベ」は男装した女性や、女らしくない女性に対して用いられる俗称。

ストレート/ノンケ
「ストレート」は異性愛者を指す英語から来た俗称。日本では同性愛者から見て「その気(け)のない人」という意味で「ノンケ」とも呼ばれる。

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