2009年5月21日木曜日

クリスティーン・ジョーゲンセン--50年前の肉声 (II)


<クリスティーン・ジョーゲンセン赤裸々に語る>(Part I)


全米にセンセーションを巻き起こした帰国直後のクリスティーン

Q.ミス・ジョーゲンセン、クリスティーンとお呼びしてもよろしいでしょうか。最初にお聞きしたいのは、あなたは女性ですか、男性ですか。

「人間には男と女しかないと思いがちですが、科学的に見れば実際にそれぞれに程度の差はあるものの、両方のセックスの特徴がそなわっています。ここで深く議論してもしょうがないので、私は男よりも女に近いとだけ答えておきましょう。」

Q.医学的、生物学的に言って女性の性器官をもっていますか?

「このように答えましょう。いろいろな検査を行い診察した医師たちの見解では、私の身体のどこかに女性の性器官、または相似する部分が存在しているそうです。生化学的な検査では特定できる組織はないとのことでしたので、ならば検証するための手術をしてみてはという医学関係者もいたようですが、マスコミの好奇心を満足させるためにそのような手術をするのは悪趣味で論外である、という私の担当医の一言で落ち着きました。医学の倫理的な見地からもこのような検証目的の手術は考えられません

Q.マリリン・モンローのような魅惑的な曲線をもつ女性を見たときに、もとの男性にもどりたいと思うことはないですか。

「いいえ、それは全然ありません。私は対象が男であれ女であれ何であれ、普通の人たちと同じように美という対象には何でも惹かれます。」

Q.ヨーロッパでの従軍経験のあと、海外滞在中に性転換の手術を受けたと世間では思われていますが。

「それは事実と違います。私の軍隊経験については尾ひれのついた話しが広まっているようですが、軍隊に籍を置いていたのは第二次大戦が終わったあとの14ヶ月間だけでした。ヨーロッパでの従軍経験などは一切なく、大砲や銃を撃ったり、泥の中や危険な地雷原を歩いたりして戦闘に参加した「元GI」と思われるのは、正直なところ少し抵抗を感じます。

「実際の私は1945年8月からニュージャージー州のフォート・ディックスで除隊事務処理担当として勤務していました。1946年12月に除隊になり、1950年にヨーロッパに渡り医学的検査を受けるまで少なくとも4年間が経過しています。除隊後の私はアメリカの大学に通い、また写真学校でも勉強していました。」
       
1951年手術前のジョージ・ウィリアム・ジョーゲンセン

Q.要するに、女性に性的に惹かれることはなかったということですか。男として軍隊にいた時期も、他の兵士と同じように愛情または支配の対象として女性への性的興味は持たなかったですか。

「男同士で女が話題になるときはちょっと気恥ずかしい思いをした記憶はありますが、そういう話題には全然興味がなかったのでできるだけ避けるようにしていました。」

Q.軍隊生活では裸姿の男達と一緒の身体検査などもあったと思いますが、女性的な貴方は抵抗感があったのでは。

「ちょっと気恥ずかしい思いをしたことはあるとは思いますが、ニューヨークの閑静な自宅ではバスルームのドアにカギをかける必要のない環境で生活していたので、とくに気になることはなかったです。(笑い)」

Q.「ヘマフロディート(両性具有の人=ふたなり)」について医師から聞いたことがありますか。

「これについては以前に医師に聞いたことがあります。人間はみな程度の差はあれ両性の特徴を備え持っており、“ヘマフロディート”はひとりの人に両性の特徴的な性器管が同時に存在することですが、遺伝子やホルモンや精神状態には関係ないそうです。これは別名“インターセックス”とも呼ばれていますが、インターセックスは一方の性の特徴が他方の性の特徴より顕著に見られる場合に使われているようで、その意味では人間みんな程度の差はあれ基本的にはインターセックスですね。」

{注}hermaphroditeは今日では死語となり、通常はintersexが使われています。

Q.あなたの手術、つまり性転換はもう完成していると思ってよいですか。今後の経過の見通しなどもついていますか。

「肉体的な面ではもうすべて終わっています。もちろん子供を産むことはできませんが、普通の性行為をするのは問題ありません。まあ、言ってみれば子宮摘出した女性のようなものですね、ハハハ。」

Q.女性用のトイレに入るときには、他の女性たちはあなたを女性として受け入れてくれますか。

「まったく問題ありません。自然におしゃべりしたりすることがよくありますが、トイレの中ではセックスに関する話しにはあまり興味はないですね。(笑い)」

Q.ホルモン剤の身体に及ぼす影響についてですが、あなたはホルモン剤は摂取していますか。

「ホルモン剤は飲んでいますが、あまり規則的にではありません。本当は毎日飲む方がよいのですが、ホルモン摂取は資格のある医師の指導のもとでのみするべきです。」

Q.ホルモン剤は身体の特定の部分の女性化に変化をもたらしますね。

「男性ホルモンであれ女性ホルモンであれ、それぞれの肉体的な特徴や外形を強調する作用があります。私の場合はとくにすべての部分が小さいですからなおさら必要です。」

Q.舞台や映画にでる女性は身体の曲線を際立たせるためにパディングすると聞きますが、あなたの場合はどうですか。

「笑い)私も舞台に上がるときにはパディングします。それに加えて25から30ポンド(約13kg)の重さの衣装を身につけるのは身体にたいへんな負担がかかります。それに、最近の時代の傾向として統計的にも現れていますが、一般の女性でバストのサイズを意識する女性が多く、コンプレックスをもつ女性が手術を受けるケースが増えているのが気になります。美容のための豊胸手術はたいへん危険な手術だと私は聞いています。」

Q.あなた自身はなにか美容整形手術はしましたか。

「美容整形は一カ所だけ。それは胸ではなく、耳です。私の耳は“ドアを開けて走るタクシー”とからかわれるほど大きく出っ張っていて、子供の頃からコンプレックスをもっていました。デンマークに行ったときとても親切な形成外科医と知り合いになり、簡単な手術で直せるからと勧められ外来で整形手術を受けました。実際に信じられないほど簡単に問題が解決してとてもうれしかったです。」

Q.あなたは名声とともに悪名もふくめて世界的にセンセーションを巻き起こした存在になったわけですが、ご自分としてはどのように受け止めていますか。

「1952年12月5日に最初のニュース種になった直後は、私も大変なショックで驚きもしました。しかし、その後の世間の反響は意外にも好意的で、私の人生にどういうことが起こったのか興味をもつひとが多かったのです。時間の経過とともに、私がヨーロッパで受けたような手術が受けられるかどうかは別としても、同じような悩みをもつ多くのひとたちにとっては、私のケースが重要な意味をもつステップだと理解されはじめたのです。」

Q.新聞の見出しに「ブロンド美人の元GI」という表現が使われていますが、これはどう受け止めますか。

「そう言われてうれしく思う面もありますが、ただ元GIという言い方にはちょっと抵抗を感じます。それは“元GI”という表現には、なにか悪いニュアンスが込められていると感じられるからです。」

Q.今までに人を愛した経験はありますか。それは男として、それとも女性としてですか。

「愛にはいろいろな意味合いがありますが、今までの人生で2回だけ真剣な愛を経験したことがあります。いずれの場合も結婚には至りませんでしたが。男性としては完全な身体でなかったことも事実で、男としてというよりは、男性の服装をした人間としての愛です。愛にはたいへんパワフルな意味があります。ヨーロッパに渡って手術を受けたのも、中途半端な人生ではなく、フルに人生を生きたいという思いがあったからです。」

Q.手術する以前から演劇に興味をもっていましたか。

「そうです。写真と映画にはずっと興味があって、ヨーロッパで手術を受ける前までの仕事も、雑誌のカバー写真や映画関係などの仕事が中心でした。その当時は自分が公衆の面前に出ることは考えられなかったので、その裏側の仕事に興味をもっていたのではないかと思っています。大学を出てからも写真専門学校で学びました。今後も写真は趣味として続けて行きたいし、舞台の仕事にも興味があります。

Q.あなたが舞台に出るときはホモセクシュアルの観客が多いですか。またホモの友人も多いですか。

「いいえ、観客の中にはそういう人も交じっているかもしれませんが、主にごく普通の中年の夫婦連れが多いように思います。芸能界にはたしかにホモセクシュアルが多いのは事実ですが、その理由は同性愛者は自らが社会的な差別意識の中で生きているので、感受性がするどく、洞察力があり、すぐれた演技者であることが多いからだと思います。」

Q.同性愛の問題についてあなた自身はどう考えていますか。

「個人的には同性愛が社会にとって問題だとはぜんぜん思っていません。性的異常者や幼児に対する性的犯罪に同性愛者が係わっていることが多いという誤解が世間にはあるようですが、見識のある精神科医に聞いてみればこんな誤解は一笑されるはずです。もちろん、例外はあるでしょうが、現実的に同性愛者が社会的に害を及ぼすことは全然ありません。ただ一つ問題になるのは、みんなが同性愛者になってしまうと、次の世代をになう子供が生まれなくなってしまうことですね。(笑い)」

Q.少し前までは、ワシントンの政界では秘密保持に係わる職務にはホモを雇用してはならないという規則があったようですね。つまり、ホモを理由に脅迫されたりして政府の機密を漏らす危険性があるという理由だと思いますが。どう思われますか。

「同性愛自体が問題なのではなく、社会が同性愛者をどう見ているかが問題にされるべきだと私は思います。同性愛には男性も女性もいますが、同性愛者はたえず社会から疎外され、精神的な迫害にさらされています。その弱みを利用されるからだと思います。」

Q.酔っぱらって女装したりする男もいますが、あなたの場合は女装するとどういう気分になるのですか。

「たいへん快適に感じますね。衣服は単なる習慣だとも言えなくはないですが、自然な自分にもどったという感じになります。」

Q.世の中には自分が女であるという妄想癖にとりつかれている人たちがいると聞きますが。

「人間は一人ひとり異なった存在ですから、一人の個人は他の個人と同じではないのです。世間ではグループとして一緒くたに扱っていますが、医学的な教養のある人なら個々の患者はそれぞれ違った性癖をもった存在だと知っているはずです。」

Q.世間にはいろいろな人がいるので、ナイトクラブのステージで観客からいやがらせとか、街頭で罵声を浴びるというような扱いを受けたことはありませんか。

「お酒を飲むナイトクラブでは男性より女性の酔っぱらいが扱いづらいものですが、実際には侮辱的な思いをさせられた経験はまずありません。それどころか、面と向かってはいろんな人たちから好意的なコメントを頂くことが多いです。ただ一回だけ南アメリカを旅行したときに、街頭の人混みの中でわたしの身体に触ろうとした人がいましたが、周囲にいた人たちが中に入って防いでくれたので何事もなかったです。」

Q.男性からデートしたいと言い寄られたりすることがあると思いますが。

「たいていの女性も経験があるように、声をかけてくる男性はいます。しかし、ほとんどの場合やさしい配慮ある態度で、いやな思いをしたことはありません。彼らは抱いている好奇心や自分なりの疑問を解くためにわたしに近寄ってくるのではないかと思いますが、わたしはべつに気にしていません。座って一緒におしゃべりすることもあります。」

以下(Part 2)に続く。

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クリスティーン・ジョーゲンセン--50年前の肉声

近代的SRSに道を拓いた先駆者<クリスティーン・ジョーゲンセン>



彼女は本当に女性?
    彼女の性生活は?
    母親になれるのか?
    世界中にセンセーションを巻き起こしたセレブが、
    その私生活を赤裸々に語る


性同一性障害(GID)に興味のある方は、まずクリスティーン・ジョーゲンセンという名前は聞いたことがあるでしょう。簡単に略歴を紹介しますと、1926年にジョージ・ウィリアム・ジョーゲンセン・ジュニアとしてニューヨークのブロンクス区で男児として生まれ、7歳から自分の性に違和感を覚え、1952年から1954年(26歳から28歳)にかけてデンマークで性別適合手術(SRS)を受け、帰国するや否やブロンドの美女として一躍マスコミの脚光を浴びる身になりました。美貌と恵まれた才能を生かして舞台やラスベガスのナイトクラブ、ラジオ出演や講演などで世界的に活躍しますが、同時にGIDや同性愛などの性的マイノリティーへの理解を促進することに多大な時間と労力をさきました。

彼女を最初から精神的に支え導いてきた精神科医ハリー・ベンジャミン博士ともに、GID治療に精神科医の関わり、ホルモン治療を経て、さらに別の性での生活体験を経た後にSRSに進むという、今日のGID治療基準への道筋をつけた、患者の立場からの偉大な貢献者として記憶されるべき人物だと思います。婚約歴はあるものの生涯結婚はせず、1989年に62歳で肺がんのためカリフォルニア州で死去し、波乱に満ちた生涯を終えました。

50年前の録音インタビュー

インターネットの迷路をさまよう内に偶然たどり着いたサイトで、半世紀も前の1958年に録音されていたクリスティーン・ジョーゲンセンの肉声を聞いて感嘆しました。1954年に「性転換手術のスター」として世界的に有名になった彼女の肉声にまず感動すると同時に、彼女の話した内容が現代の医学的な見地からもなんら遜色なく、性転換者として世界のマスコミの脚光をあびた自分に誇りと自信を持っている彼女の話しぶりに、当事者でない私も驚きと感動を覚えたのです。

クリスティーンの話す洗練された英語にまず驚きました。デンマーク系のアメリカ人としてニューヨークで生まれ育ったため英語を話すのは当たり前ですが、彼女の端正な発音と的確な話しぶりはそこらあたりのアメリカ人とは明らかに違います。また、全くと言っていいほど無駄のない、理路整然とした話しぶりからは彼女の教養の高さがうかがえます。

「元GIがブロンドの美女に!」というセンセーショナルな当時のマスコミの扱いから想像する、「兵隊上がり」というイメージは全く感じられず、逆にインタビューした方がたじたじとしていたことに一種の快感を覚えたほどでした。

この録音インタビューにはオチがあります。このレコーディングは《クリスティーン・ジョーゲンセン赤裸々に語る》という俗受けするタイトルで、30cmLPレコードとして販売するためにプロモーターが企画したものでした。「赤裸々に語る」という思わせぶりなタイトルに彼女は抗議したそうです。ところがクリスティーンの話す内容は正統的で、俗受けしそうな露骨な質問は冷静にかわして答え、性同一性障害とはどういうものか自らのSRSにいたる経緯を話しながらも、世に大勢いるGID当事者への配慮を忘れることなく、無知で無理解な世間を啓蒙しようとするすぐれた解説だったのです。

結局のところ、俗受けをねらっていたプロモーターはこれでは売り物にならないという判断となり企画はボツ、50年前のこの貴重な歴史的録音インタビューは日の目を見ることはなかったのです。クリスティーン本人には1ドルの出演料も印税も払われなかったと、その後に出版された彼女の自伝に書いています。(上の写真はその幻のレコードのジャケットです)

この歴史的なインタビューが行われた時は、彼女はニューヨークに隣接するロングアイランドに母親と姉と姪二人と同居していました。その約50分に及ぶ録音インタビューの概要を以下にご紹介いたします。

興味のある方は、以下のサイトで実際の録音インタビューを聞くことができます。録音の聞き書きによる翻訳は少々長くなりますので、項を改め2回に分割して掲載します。

http://www.queermusicheritage.us/aug2000a.html

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2008年11月26日水曜日

お知らせ。バンコクのPAIオフィスが移転

バンコクのPAIオフィスが移転

先般プリチャー先生が来日した際にPAIオフィスが移転したことを聞きましたので、以下簡単にご案内させて頂きます。

PAIのオフィスはBNH病院から、BTSスクムウィット線のエカマイ駅に直結した「バンコク・メディカル・コンプレックス(Bangkok Medical Complex)」に移転しました。駅の改札口から連結ブリッジを渡るだけで建物に入れるので、交通の便は以前にも増してよくなりました。カウンセリングや美容整形関連の手術はここで行います。




全身麻酔の必要なSRSなどの手術は数年前からPAI分院として使用していた「ピヤウェート病院」内の手術室で行います。ピヤウェート病院(Piyavate Hospital)は26階建ての本格的な総合病院として、最新の設備を有する私立病院です。入院する場合の病室はすべて個室で、長期滞在する場合にも使えるホテル客室も完備しています。

ピヤウェート病院の場所は若者のナイトライフ街として人気のRCA(ロイヤルシティー・アベニュー)の裏手になり、ニュー・ペッブリロードから入ります。バンコクのスワナプーム新国際空港からも15分ともっとも近い病院です。






退院後にホテルを利用されたい方には、PAIが特別契約しているホテルがスクムウィット地域にありますので、お問い合わせください。

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私の個人的なことですが、この夏に眼の手術を受けて視力が回復するのを待っていたため、しばらくお休みさせて頂きました。またそろそろ動き出そうとしているところです。よろしくお願いします。

2008年7月9日水曜日

「レディーボーイ」の入るトイレの話

「レディーボーイ」の入るトイレの話(タイの話題)

タイはGID当事者への対応においては一歩先を進んでいる先進国です。法律的な面では日本の方がより整備されているものの、GID当事者の社会進出や人々の寛容度においてはタイ社会はおおらかです。7月7日付けの米タイム誌(CNNネット版)に興味深い記事がありましたのでご紹介いたします。

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Where the Ladyboys Are – by Hannah Beech, July 7, 2008

トランスジェンダーの人たちにとって人生はいろいろやっかいな面が多いですが、どっちのトイレに入るか、「男」か「女か」、に迷うことだけはしたくないものです。ここタイ北部の田舎町にあるカンパン高校の学生にとってうれしいニュースは、もうひとつの選択肢が用意されたことです。今年5月からトイレのドアに使われるようになった新しいシンボルマークです。それは人間の身体が縦に2色に色分けされ、ブルーの側はズボン、そして赤い半分はスカートにデザインされたものです。カンポン高校の校長の説明では、2,500人の生徒の意見調査をしたところ、約10%近い生徒が自分はトランスジェンダーであると表明したからだそうです。

仏教徒が大多数をしめるタイでは、トランスジェンダーには世界でもっとも寛容な態度を示していて、タイの言葉で「カトーイ」と呼び、英語では「レディーボーイ」として広く通用しています。このタイ語の呼び名は正確な英語の翻訳はないものの、男として生まれながら、女の心をもつ人たちのことを指して使われています。「カトーイ」はクロスドレッサーから性転換手術を終えている人も含めて、広い意味で使われます。

カトーイはある種の社会的な制約や官僚的なハードルに直面することはあります。例えば、すでに性転換手術を済ませていても、タイ国民が社会生活上いつも携帯しなければいけないIDカードには、依然として「男」としか記載されません。記者の利用するバンコクの旅行代理店にはカトーイが何人か働いているし、近くの食品店のレジ係は日ごとに女性らしい姿に変身しつつあるのが見て取れます。官庁である移民局のビザ更新係にはのど仏があり、目立つマスカラを付けていました。カトーイはテレビのラブコメディーの常連であり、ファッションショーのモデルとして人気があり、全員がカトーイのポップミュージシャングループが電波をにぎわしている。スポーツ分野での活躍ぶりもめざましく、キックボクシングで倒した相手に「ゴメンね」とキスをするチャンピオンや、1990年代半ばにはバレーボールのカトーイチームが全国制覇のチャンピオンとなり「アイアン(鉄)レディーズ」と喝采をあびた。

カトーイの生徒に配慮したのはカンパン高校が最初というわけではなく、数年前に北部の都市チェンマイの工科大学が「ピンク・ロータス」と名付けたトイレを導入したのが最初らしい。今ではタイの教育省が、国内の大学レベルでも同様のトイレ設備や、学生寮を導入すべく検討しているとか。ただ、多くの大学キャンパス内ではレディーボーイ達は男性の服装をしなければならない規則があるものの、ヘアスタイルやアクセサリー、ネイルポリッシュ、メーキャップは自由とされている。

カトーイの中には特別配慮したトイレなどいらないから、それよりもカトーイが才能を発揮できるのは美形がもてはやされるエンターテイメントの世界、広い意味でのセックス産業、であるという社会通念を変えるための活動にもっと資金を使ってほしい、という意見も多い。たしかに職業選択についての偏見はあり、教育大学などではカトーイの学生の入学は認めていない。

しかし、タイはアメリカなどに比べるとはるかに開かれた社会になっている。その寛容さはリベラルな雰囲気のある都市部だけに見られる現象ではなく、カトーイの美人コンテストなどは田舎でも盛んに行われている。今回紹介したカンポン高校は、タイでも最も貧しいとされている地方の学校なのです。タイの山岳民族の創造伝説には、天地の始めには、女と男と、そして両者がからみ合った三つの性があったと言い伝えられているそうです。カンポン高校のトイレのシンボルに似ていませんか?

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ビーチ記者のレポートにあるように、タイのTGやTSはあらゆる場所で見かけます。だれも特別の眼で見ていない感じです。ただ美形のTSらしき人が歩いていると、とくに女性たちがうらやましそうな目つきで姿を追っているのが印象に残りました。バンコクの医師の話では、12歳くらいからホルモン治療を始めるGID当事者も多く、20歳前後でSRSを受けた場合には美形の女性になれる可能性も高いとのことでした。

「カトーイ」はあくまでMTFを指しています。タイにもFTMの当事者がいるのは当然ですが、話題にのぼらないのが不思議です。私自身もタイでFTMの人に会ったことはありません。社会的にまだクロゼットから出にくい雰囲気があるのかもしれません。タイのFTMについては私もうっかりして注意を向けていなかったので、今後調べてわかったことはまた報告しましょう。

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2008年5月31日土曜日

ホルモンによる性転換(2)

ホルモンによる性転換(2)


《FTMの場合》
女性から男性へのトランスセクシュアルのホルモン治療の目的は、男性化を促すことです。男性型の体毛と男性的体型の促進、そして月経の停止です。ホルモン治療の中心はテストステロン投与です。従来は2週間ごとの筋肉注射が一般的であったが、最近は経皮テストステロン・ジェルが使用可能になってきている。時たま月経時の出血が止まらないことがあるが、黄体ホルモン薬の追加投与が必要になる。経皮テストステロン製剤を使用する場合には、必ずと言っていいほど黄体ホルモン薬の追加が必要となると考えてよいでしょう。

ホルモン治療の効果
FTMの場合には次のような効果が期待できます。

●体毛
体毛についてはほぼ思春期の男性と似通ったパターンの発育が見られます。口ひげ、あごひげ、頬ひげ、などです。多毛症の傾向については、同じ家族の男性の多毛のパターンとその程度からだいたい予測できます。男性ホルモン性の脱毛症についても同じことが言えます。

●声の変化
アンドロゲン投与開始から6週間から10週間後に低音音域が増してきて、もう元には戻りません。アンドロゲン投与は皮下脂肪の減少を招きますが、腹部脂肪は増大してきます。除脂肪体重の増加は平均4キロですが、体重そのものの増加はもっと大きくなります。

●にきび
にきびは40%のケースで起こり、とくに背中に目立つことが多い。これは、通常の思春期を過ぎた年齢で性腺機能低下のためアンドロゲン治療を始めた男性のケースに類似している。

●陰核の増大
クリトリスの増大はすべてのケースで見られるが、その程度には差がある。およそ5-8%のケースでは、膣性交が可能になる大きさになる。

●性欲
ほとんどの対象者が性欲亢進を体感している。

その他
●アンドロゲン投与により乳腺活動は減少するが、乳房のサイズの縮小には影響しない。

●卵巣摘出手術の後も男性化の維持と骨粗鬆症の予防のため、アンドロゲン投与は続ける必要がある。

●血清LH(黄体形成ホルモン)濃度を基準値内に抑えることにより、アンドロゲン投与が適切に行われているかどうかの目安になる。


■ホルモン治療の合併症

●静脈血栓症
手術中の長時間の肉体的活動束縛が血栓症のリスク要因であるので(エコノミー症候群のように)、性転換手術を受ける場合には2,3週間前にエストロゲン投与を中止した方がよい。手術後に行動の自由が回復するとエストロゲン投与を再び続けることができる。

●アテローム性動脈硬化症
心臓血管系の疾患については男女の間に相当の差があると期待されるのも無理ないが、実際のリスクについてはまだ実証されていないのが現状です。MTFへのエストロゲンとFTMへのアンドロゲン投与の効果について生化学的なリスクマーカーが研究されたが、アンドロゲンよりもエストロゲン投与の方がよりネガティブな結果がでたと報告されている。

●乳ガン、前立腺ガン、卵巣ガン(FTM)、などが合併症として起こりうると言われているが、医学的な根拠が確立されているわけではない。しかし、これらの可能性には注意を払う必要がある。

●禁忌
ホルモン治療には上に述べたような合併症の可能性があるので、エストロゲン投与の禁忌とされるのは、家族に乳ガンの症例のある場合。アンドロゲン投与の禁忌は心臓血管系の合併症を伴う脂質障害のある場合。高濃度の性ステロイド剤の使用上の禁忌は、心血管系の障害、脳血管系の疾患、血栓塞栓性疾患、顕著な肥満、コントロール出来ていない糖尿病、そして活動性肝炎などです。

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ホルモンによる性転換(1)

ホルモンによる性転換(1)

GID患者が性別適合手術(SRS)を目指すに当たって、その第一歩となるのがホルモン治療です。アメリカでは7歳の少年時代から治療を始めるという動きがあることを先回の投稿でとりあげたので、そのホルモン治療についてあらためて勉強せざるを得なくなりました。

以下にまとめたのは、2004年にバンコクで開催された「オリエンタル美容整形国際学会」後の性転換手術に関するポストコングレス・ワークショップでの講義からのものです。講師はオランダの内分泌専門家、ルイス・グーレン博士です。
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ホルモン治療には二つの目的があります。
〔その1〕まずホルモン分泌による元の性の二次性徴をできるだけ減少させることです。ただ、元の性の特徴を完全に解消するのはまず期待できません・・・たとえば、背丈、手のサイズや形、あごの形、ヒップの形状、などはホルモン治療によっても生来のホルモン分泌の影響を消し去ることはできません。

〔その2〕新しい性の二次性徴を強化することです。

《MTFの場合》
●体毛の除去、乳房の発達、女性的な脂肪分布の促進が基本ポイントになる。これらを達成するには、生来の男性ホルモンであるアンドロゲンを完全といえる程度に除去することです。女性ホルモンであるエストロゲン投与だけでも、男性の性腺刺激ホルモンの生成、つまりアンドロゲンの産出を抑制できるが、アンドロゲン抑制成分の投与と平行して同時にエストロゲン産出を促す療法を行う方がもっと効果が高い。

●アンドロゲンについて
アンドロゲンの産出や作用を抑制する薬は国や地域により入手できるものが違うので、医師または薬局に相談することです。

●エストロゲンについて
これも多くの種類があり、経口タイプか注射タイプに大別されます。薬によっては静脈血栓症を起こす危険もあるため、とくに40歳以上の人は医師の指導に従うなど注意した方がよいでしょう。

■ホルモン治療の効果
MTFの場合には次のような効果が期待できます。

●体毛について。
大人の顔のひげはホルモン治療に抵抗力が強く効果が少ないことが多い。とくに白人男性の場合には永久脱毛法などの追加処置が必要になります。他の部分の体毛はもっと効果的に反応します。

●乳房の発達
エストロゲン投与を開始するとすぐに乳腺の発達が始まり、大きくなったり一時止まったりのサイクルをくりかえします。アンドロゲンは乳腺の生育を抑制する働きをするので、エストロゲンはアンドロゲンの作用の及ばない環境でもっともその効果を発揮します。男性の胸部のサイズや背丈を考えると、エストロゲン治療により得られるサイズでは釣り合いがとれない場合が多く、さらに整形手術による豊胸術を希望する患者が多いようです。また年齢が高い患者の場合には乳腺の発達が限定されます。

●皮膚について
アンドロゲンの喪失により皮脂腺の活動が低下するため、ドライスキンやつめが割れやすくなることがあります。

●体型への影響
アンドロゲン喪失により皮下脂肪の増大と筋肉の減少が起こります。通常は体重も増えます。

●精巣の変化
性腺への刺激がなくなるために、精巣(睾丸)が萎縮して鼠径管に引っ込んでしまうことがあり、これを不快に感じることもある。

●前立腺
前立腺の萎縮によって排尿後に尿漏れを起こすこともあるが、大抵は一時的な症状です。

●音声への影響
エストロゲンも抗アンドロゲンの投与も声の調子に変化を及ぼすことはありません。言語療法の専門家から指導を受けるのがよいでしょう。男性的な声というのはピッチの高低ではなく、胸部の共振と声量により決まるものです。俳優になったつもりで女性の発声法を練習するのは一番現実的な方法です。咽頭部切開による声帯手術は声のピッチを変えることはできますが、声量は減少し、術後どういう声になるかは予測できません。

●長期ホルモン治療
性転換手術後もホルモン治療は続けなければなりません。精巣摘出だけの場合も同様です。男性特有の体毛が生え続ける患者の場合には、量を減らした抗アンドロゲンの投与が有効なことがあります。エストロゲン投与を継続するのは非常に重要なことで、ホルモン欠乏の諸症状を防ぐためだけでなく、骨粗鬆症を予防するという重要な役割があるからです。MTFの場合には、エストロゲン投与だけでも十分な骨量の維持が可能であることが医学的に証明されています。
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(続きはその2へ)


2008年5月23日金曜日

7歳の子供から性転換への道を!

7歳の子供から性転換への道を!

これはアメリカの話しです。5月21日のCNNネット版で見ましたが、キャスターはちょっとこのニュースに疑問をはさみ、医学関係者はその意義を強調していました。気になったのでCNN上で検索してみると、もう賛否両論が世界を飛びかっているようなので、以下にかいつまんで紹介させて頂きます。

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「ボストン小児科病院」の小児科専門医ノーマン・スパック医師が性転換症の子供への治療を手がけていたのは以前から知られていたが、その治療対象を7歳まで広げると発表したことが新たな波紋の発端です。

治療の第一ステップは、カウンセリング及び薬物治療によって二次性徴の発現時期を3,4年遅らせることにより、その間自分が本当に反対の性を望んでいるのか決定する時間を与えること。(この段階ではまだ後戻りは可能と解釈できます)

治療の第二ステップは、16歳くらいから反対の性に変わる準備を始めて、ホルモン治療により見分けがつかないほど自然な成熟した女性又は男性になることができる。この段階ではもちろん男女ともに不妊となるので、後戻りは許されない。

スパック医師は、「男性であれ女性であれ環境に自由に適応していけるので、これはまったく驚くほどです」、と述べているのは余程の自信があるからでしょうか。

ところで、ここまでのニュースでは「患者」(つまり子供)のことばかりで、保護者である親の話が取り上げられていないのは気になります。SRSのこともCNNだけでなく、参考にしたブロッグにも話題にされていません。SRSは必ずしも必要ではないとしても、それにぜんぜんふれないで性転換症治療を語るのもおかしな話しです。

以下はこのニュースに寄せられた賛否両論の一部です。
●ジョンズ・ホプキンス大学精神科のマクヒュー博士は、「思春期の到来を遅らせたり性意識を変えさせる試みなどは自然の法則への反逆である」。「子供に対する性転換は、教会の合唱隊の少年たちがハイピッチ領域の声を維持するために行われた去勢と同じような、暗黒時代の野蛮な行為だ」

●法律専門家は、たとえ病院と両親の間で同意書を取り交わしたとしても、ホルモン治療の結果として子供が不妊になれば訴訟沙汰になる事態は避けられないだろうと見ている。「最新医学の成果だからといって、それを直ちに実行に移してもかまわない、ということにはならないだろう」

●あるブログへの書き込みには、「これはデザイナー・チルドレン流行のはしりで、利益を得るのは子供ではなく、本当は男の子でなく女の子(またはその逆)が欲しかった親の欲求を満たすためのものだ」

●大人が性転換症のカウンセリングを受けるのは理解できるが、7歳の子供が同じようなカウンセリングを受け、それから得るものがあるとは想像しにくい。もし親の動機からそうなるなら、病院と医師の利益とも合致するわけだけから細かいことは見過ごすことになるだろう」

●性転換症の本当の原因はまだ判明していない。7歳の男の子で自分が女の子だと思っている子供のうち何人が20歳になってもそう思っているのか、まだ知られていないのだ。

●ホルモン治療は子供の体に強い医学的作用を及ぼす。長期の体と精神に与える影響はまだだれも知らないのだ。健康上の治療の理由もない場合には濫用としか言いようがない。20年後にガンにならない保証はどこにもない。感情と精神への影響は?性転換症にも悪影響はないのか?新しすぎてなにも答えはないのだ。

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・・・など、疑問視する意見も多いのは無理ないと思います。反対を恐れず、思ったことを実行してみるのもアメリカらしいところです。私見ながら、また非当事者の立場ながら、自分が本当のGIDかどうかは本人自身が一番よく知っているのではないか、たとえ7歳の子供であろうとも・・・と思います。

7歳で治療を始めるとしても、小学生の本人がこれから社会にどう適応していくか、興味ある試みであることは間違いないでしょう。何事にもリスクを恐れるニッポンでは考えられないことだけに、ボストン小児科病院での性転換症治療プログラム、どういう展開になるか今後の進展に興味が持たれます。

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